冥界へ到着すると、ハーデスと三巨頭がナイスタイミングでその場に現れた。

しかし、その表情は彼ららしからぬ焦りを見せている。

いつもなら貫頭衣や私服で冥界にいる彼らが、冥衣を纏っていたのだ。


「ハーデス、どうされた。」

冥王「タルタロスに異変が起きた。綻びが複数生じておってな。」

「タルタロスに？　それってヤバイんじゃないか。」

ミー「えぇ、非常によろしくない兆候です。あそこは太古の魔物を封じている場所でもあるのです。」

ラダ「部下たちの偵察でも、何体か魔物の封印が解けかかっている事がわかった。今から、綻びの修復に向かう。」

アイコ「葵はジュデッカのパンドラ様の所で待っててくれよ。もしかしたら、魔物の封印が解けるかもしれないから危険だ。俺たちも終わり次第、戻るから。」

「冗談ぬかすな、アイアコス。ハーデス、頭数は多い方が良いだろう？　私も手伝うよ。」

冥王「危険だぞ。」

「誰に言っておられる？　少なくとも、手助けできる力を持っているつもりだが。」

冥王「わかった、無理はせぬように。余はジュデッカにて吉報を待とう。」

「御意。」


あまり体調は良くないが、葵はそれを隠して三巨頭についていく。


（もってくれよ、この騒動が一段楽するまでは！）


葵は己に活を入れていた。

タルタロスに到着すると、空間に蜘蛛の巣のようにひび割れた箇所がたくさんあった。


「大きくは無いけど、小さい綻びだらけだな。」

ラダ「１つ１つ修復せねばならん。時間はかかるが、それが一番の方法なのだ。」

「綻びの上から小宇宙を注げばいいのか。」

ミー「ええ。小宇宙が満ちれば、自然と綻びは消えます。」

「じゃあ、あっちから始めていこうか。」


葵が三巨頭たちと綻びの修復を始めようとした時―――。


オオオオオオオオオッ―――！！！！！


身の毛もよだつ叫び声がタルタロスに響いた。