第５話「驚愕の事実。」



シオンたちが葵の前聖戦時の記憶を見ている頃、外部では沙織、ハーデス、ポセイドンが葵に小宇宙を送り、彼女や彼女の中に入っていった聖闘士たちを必死でカバーしていた。

また、他の黄金聖闘士たちもその手助けになればと自らの小宇宙を送ってくれていた。


沙織「お姉さま、頑張ってください！」


祈りを捧げつつも、沙織は必死で頑張っていた。

もちろん、ハーデスやポセイドンも。

しかし、相変わらず葵は一定量の小宇宙を自らの体から発散し続けていた。

一進一退の状況が続いていたが、突如それが急変した。


冥王「アテナ、これは！！」

海皇「恐れていた事が…！」

沙織「お姉さま！！」


今まで三神の小宇宙を受け入れていた葵だが、少しずつそれを拒絶し始めた。

そして、シオンたちからの報告も途絶え、事態は望ましくない物になっていた。


冥王「最後の報告では、前世の記憶まで辿り着けたようだが…。」

海皇「そこまでは順調だったのに、なぜ急にこのような。」

沙織「しかし、考えれば考えるほど妙です。」

海皇「どういう事だ。」

沙織「考えてみてください。普通、人間が死して転生する時は前世の記憶をレテの水を飲ませる事で完全に消してから、転生するものでしょう。」

冥王「左様。」

沙織「なのに、お姉さまの前世の記憶へはおかしいくらいスンナリと入り込めました。」

海皇「ふむ。」

沙織「前世の記憶の最深部は、お姉さまが誕生なされた時のもの。そうですわよね。」

冥王「あぁ。だが、余が感じたのは…。」

海皇「まだ、続きがあった感じがするな。」

沙織「つまり、お姉さまは前世のそのまた前世。何代か前の記憶も持っていらっしゃるという事。思い出しているのは前世までのものですが、掘り起こそうと思えば、何代も昔のものまで出てくるという事ですわ。」

冥王「ありえぬ。稀有な事ではあるが、前世の記憶を持ったまま転生する者も極たまに居る。しかし、それも１代前までのもの。何代も遡れるなど、有り得ぬ話だ。」

海皇「葵の精神は、その何代も前の前世の記憶の最奥に居るという事なのか。」


考えれば考えるほど、葵の謎は深まっていくばかり。

沙織たちは頭を抱え、思案していた。