「ホラッ、次だ！　かかってこないか！！」


１２宮傍にあるコロッセオ。

そこではもはや聖域の日常と化した光景。

見れば華奢な女性が、自分より大きな男たちを相手に大立ち回りをしている。

いいや、彼女が男たちを扱いているのだ。

彼女は普通の人間ではない。

彼女こそは、前山羊座の黄金聖闘士の転生にして、聖域では知らぬ者がおらぬほどの有名人、『最強の姫君』の異名を持つ御剣葵である。

その実力は前聖戦を戦った聖闘士中最強にして、現聖闘士では誰も傷一つ付けられないほどのツワモノでもある。


シオン「相変わらず、すさまじいのぅ。」

童虎「シオン、何をのんびりと高みの見物をしておるのじゃ。そなたも暇人であろう、一緒に鍛練せぬか？」

シオン「余は教皇。暇人であるものか。」

童虎「ならば、何故ここにおるのじゃ？」

シオン「何、たまには息抜きも必要じゃろう？」


とか言いつつも、既にシオンがコロッセオの最前列でその扱きを見物して数時間。

今日もまた、この特訓の後に双子座の兄が目にクマを作るほどの残務が待ち構えている事だろう。

童虎はその男、サガに向かって非常に同情的な視線を投げかけた。