やがて沙織の声が途切れ、シオンは皆を率いて回廊の奥へ歩を進めた。

歩を進めていくと、葵の記憶が所々で映し出される。

日々の鍛錬、三界合同慰安旅行の時。

様々な記憶が映し出されるうち、５人の内で葵を必ず元に戻すという決意が溢れてきた。

そして、葵が初めて聖域へ来た時の記憶に辿り着くと、沙織の声が再び届いた。


沙織「これより先、時間短縮の為に前世の記憶まで皆さんを移動させます。」

シオン「前世の記憶まで…。では、私と童虎が葵の遺体を見つけるまでの記憶も。」

沙織「恐らく、見る事になるでしょう。冥界双子神との戦いも見るかもしれません。辛い事を見るでしょうが、耐えてください。」

シオン「アテナの仰せのままに。」


一行の周囲をアテナの小宇宙が包み、どこかへ転移させた。


ムウ「ここ、は……。」


気がつくと、先ほどの回廊より更に深部へ居ることがわかった。

回廊の彩りが古ぼけているのだ。


カノン「アテナのお話では、前世の記憶というが…。」

シュラ「前世のどの辺なのかという話だな。」


すると、先ほどまでより些か古ぼけたスクリーンが現れた。


デス「ここから、葵の前世の記憶が見れるって事か。」

カノン「スクリーンも古ぼけている。間違いないだろう。」

シオン「前世の最後の記憶か…。余や童虎には、あまりに悲しい物となるだろうな。」

ムウ「そうですね。葵の最後は双子神と相打ちに持ち込んだというものでしょうから。」


すると、スクリーンに映像が浮かび上がってきた。


シュラ「これが、前世の葵……。」

デス「外見は今と一緒だな。」


浮かび上がってきたのは、山羊座の黄金聖衣を身に纏い、戦いに明け暮れる葵だった。

仮面は既に砕け、素顔がさらけ出されていた。

ハーデス復活の兆しが見え始めてきて、ハーデスの配下が次々と復活し、その制圧で日々世界を駆けずり回っていたのだとシオンは言う。

そして、この場面は……。


シオン「心して見よ、皆の者。先代黄金最強、山羊座の葵。その最後の戦いを。」

シュラ「では、この記憶は！」

シオン「間違いなかろう。余と童虎と別れた直後の記憶じゃ。この後、タナトスとヒュプノスを相手にし、相打ちにしたのだ。戦いの内容は余も知らぬが、相当苛烈なものであろう……。」