部屋に戻り、ベッドに腰掛けて葵は考え込んだ。

実は、シオンにも報告していない事があった。

いや、実際は個人的な事なので報告する事は無いと判断した事。

冥界の者たちにも話さなかった事が。


（私は一体どうしたと言うんだ？　何故、初めて行った筈のタルタロスに到着して、懐かしいと思ったんだ。風景も、漂う小宇宙も。）


葵はそのままベッドに背中から倒れる。


（それに、あの頭痛で意識を失い倒れた時、声が聞こえた。）


あの声は、あの場に居合わせた三巨頭の誰の物でもなかった。


『…を思い出して。』


誰かが直接自分の脳の中で話しているような感じだった。

誰かが自分に、「思い出して。」と言っていた。

何を思い出せとその人物は言ったのだろう。

随分と考えた葵だが、その答えは出なかった。

すぐに、彼女を眠りというものが包み込んだから。