ラダ「三巨頭、戻りましてございます。ハーデス様。」

冥王「ご苦労、して綻びはいかが相成った。」

ミー「はっ、魔物の流出は多少ございましたが、無事に修復できましてございます。」

冥王「そうか、大儀であった。」

アイコ「ハーデス様、先触れを出しましたが、葵の様子がおかしいのです。」

冥王「聞いておる。…余も小宇宙を感じたが、あれは明らかに葵の物とは異なる。しかし、あの場にはそなたらだけ…。神話の時代、神の姿から巨大な空間に姿を変えたタルタロスの小宇宙とも異なる。」

ラダ「あのような光、この冥界にあるとは思えませぬ。あの光をもてば、嘆きの壁も崩れましょう。」

冥王「そうだな。元は闇の世界である冥界に、あのような光はありえぬ。」


そこへパンドラが現れた。


パン「ハーデス様、葵を連れてきました。」

冥王「何？　まだ、休息を幾分も取っていないではないか。」

「パンドラを怒らないでくれ、ハーデス。先ほどの事、私も気になっていたんだ。」

冥王「葵、体の様子は。」

「大事無い、と思う。三巨頭には迷惑をかけて本当に申し訳なかった。」

アイコ「迷惑なんて、そんな事無いぞ！」

ミー「そうです、むしろこちらが謝罪せねば…。」

ラダ「危険な目に合わせ、あの光無くばお前は今頃…。すまぬ。」

「いいんだ、気にするな。ハーデス、貴方でもあの光の正体はわからないというのか。」

冥王「あぁ。」

「そうか…。」

冥王「冥界に来て、体調を崩したか？　葵。」

「いや、少し前から地上でも少々おかしかった。」

パン「そんな身でタルタロスへ行ったのか！？　何故、もっと自愛せぬ！」

「すまない、パンドラ。」

冥王「もうよい。とりあえず、何事も無かったのだ。タルタロスに何らかの原因で引き戻されたとしか言えぬが、後々調査しておこう。冥界滞在期間中は、あまり無茶をするでないぞ。」

「あぁ。今回のような失態を犯すわけにはいかないし、今回は大人しく静養しながら滞在させていただくよ。」


こうして、数日の滞在中は大人しく過ごした葵は、冥界での任務を終えて聖域へ帰っていった。

その後姿を何人もの冥界の住人たちが心配そうに見送っていた―――。


～続く～