「カノンっ！」

カノン「葵？　どうかしたのか。」

「サガ、カノンを借りる。いや、お前たちにも関係があるな、一緒に聞いてくれるか。」

サガ「あ、あぁ。」


手合いを一時中断させて、葵は先ほど沙織の口から聞いた事をそのまま皆に伝えた。

話し終えた時の其々の表情は微妙だ。

考え込む者、頷く者、納得できぬ者。

当事者となるカノンの表情は、とても辛そうだった。

それはそうだろう、己の罪が埋もれている場所へ行く事をアテナから促されているのだから。

前非の清算は、海界にいるかつての仲間たちから許されない事には完全に清算できないのだから。

しかも、それが成されない事には聖域と海界は正常に和平が成立する事はない。


「カノン、言いたい事があれば言え。」

カノン「…俺は出来るなら、海界へは二度と足を踏み入れたくはない。」

サガ「カノン…。」


サガの表情も沈痛だ。

カノンが悪の心に染まっていたとはいえ、自分がスニオン岬に幽閉しなければ、ポセイドンを利用しようなどしなかったものを。

カノンが引き起こした悲劇には、自分にも責任がある。

サガはナンダカンダと言っても、カノンの事を心配しているのだ。


サガ「葵、私では駄目なのだろうか。」

「何を聞いていた？　アテナはカノンを指名されたのだ。理由も理にかなっている。何を躊躇う？」

サガ「だが、カノンが海界に行けば…命の保証はできん。」

ムウ「そうですね…。海闘士たちの復讐に合う事も充分考慮できます。アテナに御再考願いましょう。」

「…仮にカノンでない者を連れて行ったところで、そこに和平が成立すると思うか。それこそポセイドンの怒りと謗りを喰らうわ。アテナの聖闘士とはそのような勇気も持たぬ腑抜けにも勤まるのかとな。」

サガ「だから、事の元凶でもある私が…。私の命で全てのケリがつくのなら！」

「この馬鹿者が！！！」


葵はサガにエクスカリバー（ちょっぴり本気バージョン）を喰らわした。

例によって周辺に居た他の黄金聖闘士たちも漏れなく巻き添えを喰らう。