★親善訪問：海界編①★


葵が冥界から帰ってきて数日後。

今度は海界へ赴く事になった。


沙織「今回はカノンを同行させますわ、お姉様。」

「カノンを？」


詳しい経緯は以前、シオンから聞いている。

だが、カノンが行ったら火に油を注ぐような気もするのだがと沙織に進言する。


沙織「確かに、前非を悔いているとはいえ、あちらではカノンは歓迎される立場ではないのでしょうね。ですが、何の蟠りもなく三界の和平を築く為には、カノンが海界に受けいれられる事も肝要ですわ。未来を築く事も大切ですが、過去の清算もカノンの重要な役割なのです。」


確かに、カノンの事を棚にあげっ放しでは海界とは蟠りが消える事はない。

多少、荒療治になるだろうがこれは避けて通れぬ道と思い、葵は了承した。


「カノン、カノンはいるか？」


双児宮に赴くなり、葵はカノンを呼んだ。

従者が出てきて、今は訓練用コロッセオにおいて修行中だと告げられる。

自分が冥界に行っている間、修行をサボっていたらどんな目に合わせてくれようかと黒小宇宙全開で考えていただけに、少し肩透かしを食らった気分だ。

葵は訓練用コロッセオに向かってみる。

中からは凄まじい小宇宙が発せられていた。


（真面目に修行しているようだな。感心、感心。）


葵はコロッセオへ入っていった。

中では黄金聖闘士たちが手合いの最中。

葵は満足そうにそれを見守る。

かつて、自分もこうやって仲間たちと日々鍛練しあい、今の力を手にした。

素質があったとはいえ、元からこんなデタラメに強かったわけではないのだから。

彼らにも強くなってほしい。

そして、この地上とアテナを守り、冥界・海界とともに末永く平和の礎となってほしいと切に願う。

争いのない平和な世界を築き、彼らにも人並みに幸せな時間を過ごしてほしい。

もう、充分に彼らは傷ついてきたのだから。

その為には、やはりアテナの進言は避けて通れない。

葵の視線はサガと手合いをしているカノンの元に注がれた。