パン「大使殿、大使殿…？」


優しい女性の声が耳に届く。


「ん…、ここは？」

パン「おお、気が付かれたか！　ここは客室、ゆっくり寛がれるが良い。」

「貴女は？」

パン「ハーデス様の全権代理人、パンドラと申す。」

「ハーデス神の姉上ですね？」

パン「もったいない呼び方だ。」


部屋の扉がノックされ、三巨頭が入ってくる。


ラダ「気が付かれたか、大使殿！」

パン「今しがた、目を覚まされた。心配は要らぬ。」

ミノ「しかし、貴女もなんという無茶をされるのか…。聞けばあの技、かつての聖戦で双子神を倒し自らも滅んだ禁断奥義というではありませんか！」

アイ「下手をすれば、君の命だって危うかったんだぞ！？」


アイアコスもミーノスもラダマンティスも。

皆心配そうに葵を見ていた。


「すまん、これからは自重しよう。」

ラダ「そうしてくれ。このままでは俺の胃が幾つあっても足りん；」


その時、再び部屋の扉が開いた。


パン「タナトス様、ヒュプノス様！！」


双子神は遠慮も無く部屋の中にズンズンと入ってくる。

目指すは葵に違いなかった。

今仕掛けられたら、葵とてやられるだろう。

すると、目の前に黒き壁が何層にも出来た。


ヒュ「何のつもりか？　三巨頭。」

タナ「無礼であろう、退け。」

ラダ「いいえ、退きませぬ。」

ヒュ「神の命が聞けぬか。」

ミノ「今、お二方がやろうとしている事、見過ごすほど堕ちておりませぬ。」

パン「お引取りを。タナトス様、ヒュプノス様。」

タナ「それほどその娘が大事か？」

アイ「わかりきった事をおっしゃいますな。葵は、聖域と冥界、海界に必ず真の和平をもたらす人物。そんな大事な人をむざむざ殺させはしない！！」