そして、私は第一獄へ到着した。

カロンはむこう何回かはこのワインに免じて通してやると約束してくれて、手形まで作ってくれた。

わりと律儀なおっさんだ。

私は裁きの館と説明された場所へと向かう。


「ごめんください。」

？「シィ～！　静かにしないかっ！」


オメェの方がよっぽどうるせぇよ。

つーか何者だ？

地球人なのか、こいつ？

もしかして、火星人か？


「も、申し訳アリマセン…。」

？「ここは裁きの館。俺の名前はここに仕える雑兵のマルキーノ。三巨頭ミーノス様の代理を務めるルネ様がこの奥でお待ちだ。」

「ミーノス？　ルネ？」

マル「三巨頭、天貴星グリフォンのミーノス様。天英星バルロンのルネ様だ。そんな事も知らずに冥界へ来たのか、小娘。」

「し、失礼いたしました；」


本来ならば、火星人の活き造りが一丁出来上がる勢いなのだが、ここで使者の役目を台無しにできない。

理性を総動員して、葵は耐えた。


マル「まぁいい。さぁ、こちらの中だ。ここからは１人で行け。」

「マルキーノ様は？」

マル「俺は次々来る亡者どもを案内するのが役目なのだ。じゃあな。」


１人遺された大きな扉の前。

私は少し深呼吸して中へ入る。


「天英星バルロンのルネ様。いらっしゃいますか？」

？「静粛に。」


目の前には長髪の優男。


ルネ「私が天英星バルロンのルネ。亡者へ裁きを下す裁判官です。」

「聖域から参りました、御剣葵と申します。」

ルネ「パンドラ様からお話は伺っています。…それにしても、アテナの聖闘士たちもこのようなか弱い女性に冥界との親善大使を任せるとは、いささか短慮が過ぎますね。」

「…はぁ；」

ルネ「あの扉の奥から先へ進めます。女性が１人歩きするにはいささか目に毒な光景もありますが気にしないで下さい。」

「は、はい。」

ルネ「では、私は執務が残っておりますので。」


ルネはそれだけ言うとサッサとその場から去った。


「今の冥闘士は紳士なヤツがいるんだな。」


もっとも、自分が現役張っていた時にはエスコートされるどころか、殴り合いどつき合い上等、必殺技の応酬上等で。

葵はルネに教えられたとおり、奥の扉をくぐった。