今で言うところ、デスマスクが酒の席でアイオリアやカミュあたりに己の女性経験を生々しく語っているようなものだろうか。

そう思うと、当時の蟹座の餌食になった先輩黄金が気の毒になってきた。


「だが、いざ聖戦の折にはこれ以上ないほど頼りになる聖闘士だった。勇猛果敢に戦い、散った。」

アフロ「…貴女もか？」

「あぁ、残った２人にあの御方を託してな。だが、その２人がどうしても思いだせない。」


心から信頼していた大事な戦友なのに。


「そろそろ失礼する。あの御方をこれ以上待たせるのもかえって無礼だろう。」

アフロ「我らもじきに呼び出しを受けるでしょう。その時、またお話したいものですね。」

「あぁ、ご馳走様。」


目の前には教皇宮。

見張りの雑兵は既に自分の立場を教えられているのか、跪いて葵を中に通した。


（懐かしい。あぁ、あのレリーフもあったな。）


廊下の何気ない装飾、窓からの風景。

全てが懐かしい。

ここにこうしてある事に、どういう意味があるのかは知らない。

だが、これも全てあの御方の思し召し。

ならば、その通りにあの御方に謁見を。

全てを知った時、本当に自分の生が始まる。

葵はそう思い、教皇の間の扉の前に立った―――。