～序章～


まったく、何でこういうめんどっちぃ事になったんだ…；

あの沙織嬢じゃなきゃ、とっくに断ってたんだがな；


ギリシャ・聖域にある黄金１２宮の入口付近に、美しい黒絹のような長髪をなびかせ、途方にくれている人物が佇んでいた。

佇むその姿はまるで１枚の絵の様で、白く美しい肌を持つその人は男性とも女性とも取れぬ中性的な姿だった。

憂いといささかの憤りを含んだ瞳の色は青紫で、神秘的な輝きを含んでいる。


―――私は御剣葵。

米と味噌汁と焼き魚をこよなく愛する、１８歳の日本人。

ちなみに女だからそこんとこ覚えとくように！


ちょっと今、困った事になった。

今、私はギリシアにある聖域って所に置いてけぼり状態。

いきなりグラード財団の職員がうちに来て、総帥がお呼びなのですなんて言われて、行ってみたらコレだ。

いきなり日本からギリシャに拉致るなんて、犯罪じゃないか？

しかも、この古代建造物の連なるてっぺんまで来いだと！？

ふざけんな、てっぺんなんて見えねぇし！！

でも、何だろ？

私はここに初めて来た気がしない。

むしろ、懐かしい感じがする…。

デジャヴュってヤツかな？

ギリシャはおろか、日本から一歩も出た事が無いのに、何で？

とにかく、てっぺんにある教皇の間って所に来たら全部理由を教えるって言ってたしな、沙織嬢。

１２個の宮があって、それぞれに守護者がいるって言ってたっけ。

それを全部ブチ倒して来いって言ってたし、サクサク行くか。

（言ってません！←城戸沙織嬢談）