「…今日は聖域に来たばかりの頃をたくさん思い出すなぁ…。」


教皇宮の一室で、少し大人びた葵が呟く。

可憐な純白のドレスに身を包み、薔薇のブーケを手にして。

そう、葵がこの聖域に来て２年たち…。

葵２０歳の誕生日である今日、彼女は嫁ぐ。

世界を超えて出会った愛しい人へ。


（プロポーズの言葉も飾り気なかったっけ。『俺の妻になってほしい///』だったもんね。でも、それがシュラのいいところだもの///）


飾り気なく、シンプルに。

それから１２宮や聖域に触れを出して、行く所行く所で祝福されて嬉しいやら恥ずかしいやらで。

１２宮の皆はシュラに詰め寄って、泣かせたら必殺技だぞって脅迫したという。

デスマスクとアフロディーテが葵に教えたが、その時シュラがなんと答えたかといえば…。


シュラ『葵を泣かせるのはベッドの中だけだ。』


デスマスクとアフロディーテがあまりに冷やかすものだから、葵は顔を真っ赤にして走り去ったというのは微笑ましいエピソードである。


シュラ「葵、用意はできたか？」


ドアの向こうからシュラの声。


「うん。」

シュラ「入るぞ？」

「どうぞ。」


シュラの衣装は黄金聖衣に、祭祀祭礼用の特別な刺繍が施されたマント。

これが聖域における聖闘士の最高礼服にあたるのだから。