天照は葵の頭を優しく撫で、沙織たちを見る。


天照『アテナとその黄金の闘士たちに告ぐ。この娘は時を越え、世界を超えてなお、想いが通じる証としてこの世界に留まらせる。だが、そのために大きな代償を支払った。その心、無にするでない。』

沙織「葵さんは、きっと幸せになれます。」

天照『その言葉、神の誓いとして聞いてもよいか？』

沙織「知恵と戦の神、アテナの名において誓います。」

天照『よかろう、アテナ。ならば天界の守護神、天照の名において、この誓いは効力を持った。』

沙織「今度こそ、彼女は守ってみせます。」

天照『葵よ。愛する者と共に過ごし、そなたの血をこの聖域に残しておくがいい。』

「え///？？？」

天照『輪廻を果たした時の彼方で会おうぞ、葵。我はそなたの事けして忘れぬ！　さらばじゃ！』


天照は再び光と化し、眩い光を放つとその場から完全に消える。

天照が消えた後も、葵はその場から動けなかった。


「さよなら、お父さん、お母さん…。みんなっ…！」


ごめんなさい、と呟くと葵は沙織たちの方を見る。

沙織がニケの杖を放り出して葵へ駆け寄る。


沙織「葵さんっ！！」

「さ、沙織ちゃん！？」


飛びつくように沙織は葵に抱きついた。


「沙織ちゃん…。」

沙織「葵さん、よかった…っ！」


葵は沙織の背中を優しく擦り、それこそ太陽のように微笑んだ。


「ただいま、沙織ちゃん。」

沙織「…お帰りなさい、葵さん。でも、後ろに控える黄金聖闘士たちにもそれを聞かせてやってくださいね？」


その言葉に葵が顔を上げると、そこに勢揃いしている黄金聖闘士たちにも微笑んだ。


「ただいまっ、皆！」


その言葉に弾かれたように、黄金聖闘士たちも葵へ駆け寄り、それぞれに抱擁を交わした。

ある者は涙を流し、ある者は憎まれ口を叩き、ある者は彼女を抱き上げて、ある者は無言で。

その日、確かに聖域では奇跡が起きたのだ―――。