その瞬間、葵の体から力が失われた。


シュラ「葵…？」


顔を覗き込むと、とても安らかそうに、嬉しそうに微笑んでいる。


シュラ「葵、葵………！？」


アイオロスや老師が葵の脈や呼吸を診る。

２人とも、力なく首を横に振る。


リア「そ、そんな……！」

デス「くぅう……！」

アフロ「葵っ……！」

シュラ「葵、葵！！　目を開けてくれっ！」


周りに響く嗚咽の声。

大の男たちが、１人の少女を囲み泣いている。


シュラ「声だけでも良い、聞かせてくれっ…！」


その白い頬をソッと撫でるが、葵は目を開けてくれない。

その声すら発してくれない。

ようやく、自分の気持ちを伝えようと思っていたのに。

これから、何よりも慈しんでいこうと決意したのに。

愛しい少女の命は今、自分の胸の中で失われてしまった。


シュラ「これがっ、俺が今まで犯した罪への罰なのか…！！！」


俺は葵を掻き抱いた。

その柔らかな頬に己の頬を合わせるように、無心で掻き抱いて泣いた。

つややかな黒髪からは、彼女が好んで使っていた石鹸の香りがほのかに香る。

それに混じっている血の匂い。


シュラ「何故だっ、罰なら俺に直接下ればいいものを、何故、何の罪も無い葵の命を奪う事で、俺を罰する！！！」