寂しくなかったわけじゃない。

泣きたくなる時もあった。

だけど、そんな時は必ず誰かが居てくれた、来てくれた。

例え、それが自分を監視するためだったとしても。


「沙織ちゃん…、私は元の世界に帰れるのかな？」

沙織「葵さん…。」

「帰れたら、もう沙織ちゃんたちには会えないのかな？」

沙織「少なくとも、私には次元と次元を繋げる能力はありません。ですが、今神官たちが総出で書物を調べております。じきに良い方法が見つかるでしょう。」

「私ね。あっちの世界が本当の世界なのにさ、こっちの世界も好きなの。おかしいよね、まだ１週間くらいしかいないのに。」

沙織「いいえ、そんな事ありません。私たちにとっても葵さんは大切な方ですもの。そう思っていただけて嬉しいですわ。」

「もし、もしね？　元の世界と行き来できるようになったら、遊びに来てもいい？」

沙織「ええ、もちろんです。」

「ありがとう、沙織ちゃん。」


しばらく談笑していたが、葵は寝椅子で眠ってしまった。


沙織（よっぽど、寂しさを紛らわすために働いているのですね？　でも、大丈夫です。きっと、元の世界に戻す方法を見つけ出しますから。）


沙織は葵をそのまま寝かせ、静かに席を立った。


？「ん？　誰か寝ているのか？」


黄金の鎧に身を包んだ聖闘士が１人、東屋に近づく。


？「葵？　こんな所で眠るとは無防備な…。シーツも被らずに。」


シーツは見事に体の下敷きになっていて、取ろうとしたら彼女を起こしてしまう事間違いなしだ。


？「仕方がないな。」


聖闘士は自らのマントを取り、葵に優しくかけてやった。


？「お前は…よく頑張っている。今だけでもゆっくりと休め。…おやすみ、良い夢を。」


葵の髪を一房取り、それに口付ける。

その聖闘士は自分のした事を思い返し、顔を赤らめてその場を去った。

葵は気持ちよさ気に寝返りを打ち、ますます眠りにその身も心も委ねていった。