カノン「お前も物好きだな。客人なら客人らしくのんびりしていればいいものを。」

「招待されたならそうだけど。イキナリ押しかけてきたようなものでしょ？　やっぱり、何かしないと落ち着かないし、気がひけるんだよね。」


サガから回ってきた書類をカノンの執務机に置く。

カノンからはサガ行きの書類を貰う。

葵はこの１週間で１２宮の住人たちと打ち解ける事ができた。

彼女は１２宮の住人を兄のように思い、１２宮の住人は彼女を妹のように思っている。


ムウ「良いではないですか、カノン。私たちも執務を手伝ってもらって助かっているのですから。」

「少しでも、皆の役に立てていれば良いけど。」


ムウからもサガ行きの書類を受け取る。


シュラ「葵、こちらの書類も頼む。」

「はい。」

シュラ「…心配せずとも、お前は良くやっている。もっと自信を持つんだな。」

「ありがとう///」


葵は黄金聖闘士の執務室から出て、隣の教皇執務室へ向かった。


ムウ「彼女は本当に優しい娘ですね。」

カノン「アレはお人好しと言うんだ。」

シュラ「忘れるな、２人とも。何故、葵が教皇宮に仕えているのかを。注意を怠ってはならん。」


そう、葵が教皇宮に仕えるという事、それは常に葵を黄金聖闘士以上の存在が監視するためでもある。

兄のように接していても、常に彼女への監視や注意を怠らないのも黄金聖闘士たちの役目なのだ。

それを彼女に言う事も無いため、申し訳なく思える。


「サガ、シオン。失礼します。」

サガ「葵か。」

シオン「書類は受け取ってきたのか？」

「はい。これはカノンとムウ、シュラからです。」

サガ「すまんな。もうすぐこちらの書類の決裁が済むから、それまで待ってくれるか？」

「待っている間に、何かやれる事ないですか？」

シオン「ならば、そこに山積みになっておるファイルをその棚に戻してくれるか？　背表紙の番号順に並べておくれ。」

「はい。」


葵はファイルを持つと、番号順に棚へ返す。

チョコチョコ動きながら戻す姿は何処となく頼りなさげだ。


シオン『ああしておると、彼女を教皇宮へおいた本来の意味も忘れてしまいそうになるの、サガ？』

サガ『はい。彼女を常に監視し、アテナに仇なさぬか見極める。本人が聞けばきっと悲しむでしょうが…。あの一生懸命さは本物です。』