MHまとめ
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ああ、もう。どうしてこうなったのだろう。
ただ薬草を取りに来ただけなのに。
そう遠くない距離で、のっしのっしと聞こえる足音に息を潜めて岩陰に隠れる。
「私、何かしたかな…」
言葉として漏れでた言葉にハッとして口を抑えた。
僅かに恐怖で上擦った声を聞きとったのだろうか、足音は確実にこちらに来ている。
ところが、一定の距離で足音はぴたりと不自然に止んだ。
少なからず混乱状態に陥っている私は、岩陰からちらりと頭を出してしまったのだ。
太陽の光を受けてきらきらと輝く白銀世界に、黄色と青。うっすら開いた口から覗く鋭く尖った歯と、しっかり筋肉のついた脚からこれまた大きく鋭い爪。
もう私を追いかけ回していた生物の名はパッと出る。轟竜ティガレックス、かつて新米ハンター達を戦々恐々とさせた雪山に君臨する絶対強者なる飛竜である。
そして不運にも、辺りを見回していたティガレックスの翡翠が私を捉えた。
逃げなければ、脳が警告を鳴らす。
しかし、体は小刻みに揺れ、動かない。いや動けない。だってこわいし、動けるハンターさんってすごいなあ。
場違いな事を考えている内にティガレックスはどんどん近付いてくる。
こんなことになるなら、大人しくギルドのカウンターにこもっていればよかった。
とうとう、ティガレックスの口から漏れでる呼吸音が岩陰の後ろから聞こえる。
これは一か八か、そろそろと岩陰から這い出てティガレックスから距離を取る。
回り込んで岩陰を覗きみるティガレックスにとって今なら丁度死角になるであろうと思い、一気に駆け出した。
流石に雪の上ををざくざくと踏み走れば音で気付かれるというもの。
轟竜の名に相応しい咆哮が辺りに響く、しかし後ろを振り返れば転けることを私は知っているのだ。
融けた雪が水となってズボンを重くしたが、構っていられず必死で走って、足を止めた。
止まるしかないのである、先は崖。
ハンターさんのように頑丈ではないのだから、落ちれば無事では済まないだろう。
もう後ろにはティガレックスが二足歩行でゆったりと距離を縮めてくる。
四足歩行ではない、前脚をついて歩いてないあたり、恐らく、遊ばれている。
ぐぬぬ、ななしよ、頑張るのだ。幸い崖下にはこんもりと雪が積もっているではないか。
ええい、五体満足であれば多少の怪我は承知!寧ろいつも馬鹿にしてくるあのハンターに自慢出来ると意気込み、意を決して飛び降りた。
雪のクッションへ落ちたはいいが上手く立てず、目前がぐにゃりと歪んで、ばふ、と大袈裟な音と共に倒れ込んだ。
打ち所が悪かったかななどぼやける視界に鮮やかな黄色が見えて、瞼は下がった。
「ん、んー…?」
肌寒い空気を吸う感覚に泥沼から意識を引っ張り出す。
重い瞼を押し上げて、不自然な体制で寝ていたため、凝り固まった身体をぐっと伸ばす。
ここは、洞窟だろうか。
私の座っている下には藁と思わしき干し草がふかふかとしていた。
しかし、何故ここにいるのだろう?
確かティガレックスに遊ばれていたような、食われかけていたような。そんな曖昧な感じ。
けど、ここは紛れもなく暖かいギルドではなく、凍てついた洞窟。
風や雪を凌ぐにはいい場所なのだろう、寒いけど。
「寒いなあ、ホットドリンクあと一個しかないや…?」
乾燥してかさかさした唇から音を繋げばしっかりとした言葉になる。
腰ポケットに入れていたホットドリンクも逃げている時に落としたのか最後のひとつしかない。
ひとつ、考えるのをやめた。五体満足な上、怪我もないのだ、感謝感謝。
きゅぽ、と蓋が鳴いて、瓶の中身を一気に飲み干したとき。
天井がないこの洞窟に、風と共に影を落とした。
上を見上げればお世辞にも上手いとは言えない雑な羽ばたき。
そりゃあ、仕方ないのは仕方ない。轟竜ティガレックスという飛竜は翼膜が退化した飛竜なのだから。
何故この様に私は冷静にいられるのか。そう、考えるのをやめただけである。降りてきた飛竜は近付いてくるものの、危害を加えるような素振りを一切見せず、見上げた矢先、大きな舌でしっとりと顔を舐められたのだから。思考放棄するのも当たり前。
ぴしりと固まる私を他所に、顔を舐めた目の前の飛竜は満足気にぐるぐると喉を鳴らしている。
顔を伝う唾液から臭う鉄臭さに少し、顔を歪めてしまったがティガレックスは気にせず私の周りを、ふんふんと鼻腔を引くつかせ、何かを確認していた。
襲われないように、じっとしていればティガレックスは私を囲うようにぐるりと横になった。
「わあ、あったかい…」
ティガレックスの体温とホットドリンクの効果で、寒さが大分軽減されて。ほっと息をつけば、壊れ物を扱うようにちょいちょいと翼膜内に仕舞われてしまった。
まるで寒さから守るような行動に内心驚きつつも、この暖かな温もりは満更でもなく。
恐る恐るティガレックスにもたれ掛かっても、お咎めは飛んでこない。
ギルドのみんな、心配してるだろな。我ながら呑気だ。
しかし、ギルドのカウンターを担当しているだけの雪山散策中な小娘に何で興味を示したのか。
全くもってさっぱりである。
生態本にも載っていない行動をしたりとこのティガレックス、もしや私と同類なのではないだろうか。絶対強者ではなく、楽観者。
クスクスと笑えば、リズム良く聞こえるごろごろ音。
なんだか、お得な気分だ。
ティガレックスとあほっぽい楽観者ちゃん。
楽観者ちゃんは普段ぽけーとしてる。前向きにしか捉えないけどあほまじり。
ティガレックスに舐められたりしたかっただけ。
ただ薬草を取りに来ただけなのに。
そう遠くない距離で、のっしのっしと聞こえる足音に息を潜めて岩陰に隠れる。
「私、何かしたかな…」
言葉として漏れでた言葉にハッとして口を抑えた。
僅かに恐怖で上擦った声を聞きとったのだろうか、足音は確実にこちらに来ている。
ところが、一定の距離で足音はぴたりと不自然に止んだ。
少なからず混乱状態に陥っている私は、岩陰からちらりと頭を出してしまったのだ。
太陽の光を受けてきらきらと輝く白銀世界に、黄色と青。うっすら開いた口から覗く鋭く尖った歯と、しっかり筋肉のついた脚からこれまた大きく鋭い爪。
もう私を追いかけ回していた生物の名はパッと出る。轟竜ティガレックス、かつて新米ハンター達を戦々恐々とさせた雪山に君臨する絶対強者なる飛竜である。
そして不運にも、辺りを見回していたティガレックスの翡翠が私を捉えた。
逃げなければ、脳が警告を鳴らす。
しかし、体は小刻みに揺れ、動かない。いや動けない。だってこわいし、動けるハンターさんってすごいなあ。
場違いな事を考えている内にティガレックスはどんどん近付いてくる。
こんなことになるなら、大人しくギルドのカウンターにこもっていればよかった。
とうとう、ティガレックスの口から漏れでる呼吸音が岩陰の後ろから聞こえる。
これは一か八か、そろそろと岩陰から這い出てティガレックスから距離を取る。
回り込んで岩陰を覗きみるティガレックスにとって今なら丁度死角になるであろうと思い、一気に駆け出した。
流石に雪の上ををざくざくと踏み走れば音で気付かれるというもの。
轟竜の名に相応しい咆哮が辺りに響く、しかし後ろを振り返れば転けることを私は知っているのだ。
融けた雪が水となってズボンを重くしたが、構っていられず必死で走って、足を止めた。
止まるしかないのである、先は崖。
ハンターさんのように頑丈ではないのだから、落ちれば無事では済まないだろう。
もう後ろにはティガレックスが二足歩行でゆったりと距離を縮めてくる。
四足歩行ではない、前脚をついて歩いてないあたり、恐らく、遊ばれている。
ぐぬぬ、ななしよ、頑張るのだ。幸い崖下にはこんもりと雪が積もっているではないか。
ええい、五体満足であれば多少の怪我は承知!寧ろいつも馬鹿にしてくるあのハンターに自慢出来ると意気込み、意を決して飛び降りた。
雪のクッションへ落ちたはいいが上手く立てず、目前がぐにゃりと歪んで、ばふ、と大袈裟な音と共に倒れ込んだ。
打ち所が悪かったかななどぼやける視界に鮮やかな黄色が見えて、瞼は下がった。
「ん、んー…?」
肌寒い空気を吸う感覚に泥沼から意識を引っ張り出す。
重い瞼を押し上げて、不自然な体制で寝ていたため、凝り固まった身体をぐっと伸ばす。
ここは、洞窟だろうか。
私の座っている下には藁と思わしき干し草がふかふかとしていた。
しかし、何故ここにいるのだろう?
確かティガレックスに遊ばれていたような、食われかけていたような。そんな曖昧な感じ。
けど、ここは紛れもなく暖かいギルドではなく、凍てついた洞窟。
風や雪を凌ぐにはいい場所なのだろう、寒いけど。
「寒いなあ、ホットドリンクあと一個しかないや…?」
乾燥してかさかさした唇から音を繋げばしっかりとした言葉になる。
腰ポケットに入れていたホットドリンクも逃げている時に落としたのか最後のひとつしかない。
ひとつ、考えるのをやめた。五体満足な上、怪我もないのだ、感謝感謝。
きゅぽ、と蓋が鳴いて、瓶の中身を一気に飲み干したとき。
天井がないこの洞窟に、風と共に影を落とした。
上を見上げればお世辞にも上手いとは言えない雑な羽ばたき。
そりゃあ、仕方ないのは仕方ない。轟竜ティガレックスという飛竜は翼膜が退化した飛竜なのだから。
何故この様に私は冷静にいられるのか。そう、考えるのをやめただけである。降りてきた飛竜は近付いてくるものの、危害を加えるような素振りを一切見せず、見上げた矢先、大きな舌でしっとりと顔を舐められたのだから。思考放棄するのも当たり前。
ぴしりと固まる私を他所に、顔を舐めた目の前の飛竜は満足気にぐるぐると喉を鳴らしている。
顔を伝う唾液から臭う鉄臭さに少し、顔を歪めてしまったがティガレックスは気にせず私の周りを、ふんふんと鼻腔を引くつかせ、何かを確認していた。
襲われないように、じっとしていればティガレックスは私を囲うようにぐるりと横になった。
「わあ、あったかい…」
ティガレックスの体温とホットドリンクの効果で、寒さが大分軽減されて。ほっと息をつけば、壊れ物を扱うようにちょいちょいと翼膜内に仕舞われてしまった。
まるで寒さから守るような行動に内心驚きつつも、この暖かな温もりは満更でもなく。
恐る恐るティガレックスにもたれ掛かっても、お咎めは飛んでこない。
ギルドのみんな、心配してるだろな。我ながら呑気だ。
しかし、ギルドのカウンターを担当しているだけの雪山散策中な小娘に何で興味を示したのか。
全くもってさっぱりである。
生態本にも載っていない行動をしたりとこのティガレックス、もしや私と同類なのではないだろうか。絶対強者ではなく、楽観者。
クスクスと笑えば、リズム良く聞こえるごろごろ音。
なんだか、お得な気分だ。
ティガレックスとあほっぽい楽観者ちゃん。
楽観者ちゃんは普段ぽけーとしてる。前向きにしか捉えないけどあほまじり。
ティガレックスに舐められたりしたかっただけ。
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