羽宮一虎
Name change.
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目をぎゅっと閉じて、頭の中で羊を数える。
二桁になったあたりで羊たちは早くも思考の外に走っていき、相も変わらず名前の心臓は早鐘を打っていた。
それもそのはずである。そもそもここは名前の部屋などではなく恋人の羽宮一虎の部屋であり、それどころか名前は、ベッドの上で一虎に抱きしめられているのだ。
室内の電気は全て消えていて、一虎が起きているのかはたまた寝ているのかさえ、名前にはわからなかった。しかし、二人でベッドに横になってから微動だにしてないから多分寝たのだと思う。
名前は、一虎のパジャマをそっと握ってみた。
そのまま数秒待ってみたが、やっぱり何の反応もない。名前は一虎に近づいて胸元に顔を埋めた。
服を着ていると細く見える一虎だが、こうして実際に触れ合ってみると女性よりもずっと筋肉質だ。
「かわいーことしてくれんじゃん」
「へ……一虎くん、起きてたの?」
一気に顔が赤くなるのを感じて、名前は何事も無かったかのように距離を取る。痴女だと思われたらどうしようだとか、そんなことが頭の中を支配した。
「わっ」
勝手に悶々としていると、ほんの数秒の隙に一虎が密着してきて名前は腕の中に閉じ込められた。
「眠れねぇの?」
「うん。緊張しちゃって」
可愛い、と呟きながら名前の髪がぐしゃぐしゃにならないよう優しく頭を撫でる一虎。
いつもならこうして頭を撫でられるだけで割とどこでも寝落ちしてしまう名前だが、今日に限っては全くの逆効果だった。こんな状況で眠れるわけがない。
「よし、じゃあ行くか。ドライブ」
「やったー!ケッチ乗るの久しぶりだな~」
一虎はベッドから出て、ハンガーラックから白い上着を取ると名前に投げた。
「外寒いからそれ着ろよ」
「これって……」
背中の部分に“首の無い天使“のイラストが描かれ、左の二の腕にWALHALLAと書いてある赤いタグ。
「芭流覇羅 の特攻服 だ」
名前は暴走族のことに詳しくないが、一虎が芭流覇羅というチームに所属していて、この服が制服だということくらいはわかる。どうやらこの特攻服は複数枚あるらしく、一虎も同じ物を上に羽織っていた。
「特攻服って大事な物なんでしょ?私なんかが着ていいの?」
「名前が着るのに良いも悪いもあるわけねーじゃん。俺の彼女なんだし」
俺の彼女なんだし。
その何気ない一言が嬉しくて、名前は特攻服を抱きしめた。
**
冷たい風が顔面に吹き付けるが、ヘルメットで頭部の大半が覆われているため寒さはほとんど感じない。しかし、名前は不良ではないためバイクに乗り慣れているはずもなく、恐怖心が少なからずあるので、景色は楽しむよりかはずっと一虎の背中にへばりついていた。
「名前、行きたいところあるか?」
「一虎くんが一番好きな場所に行きたいな」
「とびっきりの所連れて行ってやるよ。もっと飛ばすから掴まっとけよ!」
そう言うが早いか、一虎はギアをチェンジしてケッチを加速させた。
「速くない……!?」
目まぐるしく変わる景色に狼狽えながら、名前は一虎にしがみつくしかなかった。
それから数十分ほど走り続け、東の空が薄ら明るくなり始めていた。名前にも徐々に睡魔が降りてきた頃、ケッチは減速して路肩に停車した。
「わぁ、凄い。綺麗……」
「すげーだろ」
どこまでも繋がる水平線。自らの美しさを知らしめ、感嘆させるためだけに存在しているのかと疑いたくなるほどゆっくり姿を現していく太陽。目に映るもの全てが自分たちとは別世界、別次元のような気がしてうっとりと見つめる。
「名前、10年後も……ずっと一緒にいような」
「20年後も、30年後も、その後もずっと一緒にいるよ。約束」
朝焼けを背景に、2つの影がひとつになった。
二桁になったあたりで羊たちは早くも思考の外に走っていき、相も変わらず名前の心臓は早鐘を打っていた。
それもそのはずである。そもそもここは名前の部屋などではなく恋人の羽宮一虎の部屋であり、それどころか名前は、ベッドの上で一虎に抱きしめられているのだ。
室内の電気は全て消えていて、一虎が起きているのかはたまた寝ているのかさえ、名前にはわからなかった。しかし、二人でベッドに横になってから微動だにしてないから多分寝たのだと思う。
名前は、一虎のパジャマをそっと握ってみた。
そのまま数秒待ってみたが、やっぱり何の反応もない。名前は一虎に近づいて胸元に顔を埋めた。
服を着ていると細く見える一虎だが、こうして実際に触れ合ってみると女性よりもずっと筋肉質だ。
「かわいーことしてくれんじゃん」
「へ……一虎くん、起きてたの?」
一気に顔が赤くなるのを感じて、名前は何事も無かったかのように距離を取る。痴女だと思われたらどうしようだとか、そんなことが頭の中を支配した。
「わっ」
勝手に悶々としていると、ほんの数秒の隙に一虎が密着してきて名前は腕の中に閉じ込められた。
「眠れねぇの?」
「うん。緊張しちゃって」
可愛い、と呟きながら名前の髪がぐしゃぐしゃにならないよう優しく頭を撫でる一虎。
いつもならこうして頭を撫でられるだけで割とどこでも寝落ちしてしまう名前だが、今日に限っては全くの逆効果だった。こんな状況で眠れるわけがない。
「よし、じゃあ行くか。ドライブ」
「やったー!ケッチ乗るの久しぶりだな~」
一虎はベッドから出て、ハンガーラックから白い上着を取ると名前に投げた。
「外寒いからそれ着ろよ」
「これって……」
背中の部分に“首の無い天使“のイラストが描かれ、左の二の腕にWALHALLAと書いてある赤いタグ。
「
名前は暴走族のことに詳しくないが、一虎が芭流覇羅というチームに所属していて、この服が制服だということくらいはわかる。どうやらこの特攻服は複数枚あるらしく、一虎も同じ物を上に羽織っていた。
「特攻服って大事な物なんでしょ?私なんかが着ていいの?」
「名前が着るのに良いも悪いもあるわけねーじゃん。俺の彼女なんだし」
俺の彼女なんだし。
その何気ない一言が嬉しくて、名前は特攻服を抱きしめた。
**
冷たい風が顔面に吹き付けるが、ヘルメットで頭部の大半が覆われているため寒さはほとんど感じない。しかし、名前は不良ではないためバイクに乗り慣れているはずもなく、恐怖心が少なからずあるので、景色は楽しむよりかはずっと一虎の背中にへばりついていた。
「名前、行きたいところあるか?」
「一虎くんが一番好きな場所に行きたいな」
「とびっきりの所連れて行ってやるよ。もっと飛ばすから掴まっとけよ!」
そう言うが早いか、一虎はギアをチェンジしてケッチを加速させた。
「速くない……!?」
目まぐるしく変わる景色に狼狽えながら、名前は一虎にしがみつくしかなかった。
それから数十分ほど走り続け、東の空が薄ら明るくなり始めていた。名前にも徐々に睡魔が降りてきた頃、ケッチは減速して路肩に停車した。
「わぁ、凄い。綺麗……」
「すげーだろ」
どこまでも繋がる水平線。自らの美しさを知らしめ、感嘆させるためだけに存在しているのかと疑いたくなるほどゆっくり姿を現していく太陽。目に映るもの全てが自分たちとは別世界、別次元のような気がしてうっとりと見つめる。
「名前、10年後も……ずっと一緒にいような」
「20年後も、30年後も、その後もずっと一緒にいるよ。約束」
朝焼けを背景に、2つの影がひとつになった。
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