1.スタートは華麗に鮮やかに
最近の若者は、何かと騒ぎを起こす。らしい。
私の周りの子たちも、ヤクってやつを試したりしてる。らしい。
お小遣い稼ぎに、違法取引やら、アレなバイトやら、やってる。らしい。
私は皐 ミハ。名前は、ミハエルから取ったと聞いた。
私の家は、武器を売る会社「サツキミリタリー」をやってて、生まれたころから、恵まれてるみたいだった。
でも、周りの子の「普通」がわからなくて、楽しいかって言ったら、そうでもない。
大好きなお母さんはいなくなっちゃったし、よくわかんない女は入ってくるし。
そろそろ、みんなみたいに楽しんでみたい。そんなことを思いつつ、諦めて、春休みが終わってしまった。
日本、東京都、銀座。高級アパートの最上階の一個下の部屋。
ここが、私の部屋。上は、父さんの部屋。
今日も、頑丈な壁越しに、銃声やら、サイレンやら。
父さんは、危ないからって、滅多に外に連れてってはくれなかった。
母さんは、一番昔の母さんは、普通の子の体験をさせてくれそうだったけど。
窓から外を見下ろすと、ナイフ片手にはしゃぎ歩く若者、若者。
登校の時間だ。私の場合、移動するのは先生だけど。
教材を用意したところで、新しい先生が部屋に入ってきた。
なんだ、ただのババアじゃん、つまんない。
普段聞き流すし、見るだけで読まない教科書だけど、耳と目に留まった、印象的な単語。
「悪魔の契約」
古代遺跡から、悪魔の契約に関する資料が発見された。
数十年前に知名度が広がったが、今はもう死語ってレベル。
悪魔との契約は現在、ほとんどの国の法律で禁止されている。
先生にばれないように、関心のないフリをした。
先生が帰るまでなんとか耐えて、さっそく、パソコンでいろいろ調べた。
悪魔にも、種類があるんだ...
楽しくて強くて、願いをかなえてくれるなら、別に何でもいいけど。
お手軽な奴が、一個あるようだった。
詳しくはこの本に、とリンクが張ってあり、おしまい。
買わなきゃいけないのね。まあ、父さんには内緒で買おう。
購入ボタンをクリックして、実は覚えてるクレジットカードの番号やらを入力する。
日が沈み、また昇ってきた。
宅配ボックスの中を覗くと、何かが入ってた。
さて、きたきた。
本をパラパラめくっていくと、やり方の書かれているところまで見えてきた。
前の方は読む気が起きないってことで、読まなかったけど。
魔方陣を腕に書いて、呪文を言って、ちょっと待つ。そんな感じっぽい!
夕食を食べて、早速やってみる。契約の内容も、あの静かな食事の中で決められた。
インクは何でもいいのかな。油性ペンで、見よう見まねで書いてみる。
そして、何語かもわからない呪文を唱えた。
なんも、起こらないじゃん。
”いいや?成功だ”
脳に、渋くて低くてかすれたような、おっさんの声が響いた。
よくわからなかった。
部屋にだれかいるのかと思って部屋を見回すが、人の影はない。
いやいや!まだお願い、してないし!
ていうか、悪魔ってもっとかっこいいやつじゃん!
「ていうか、見えないし...」
”種族が違うな。俺は寄生型の悪魔だ”
がっかりした。思っていたのと違いが大きすぎる。
人型の悪魔を思い描いてたのに。
悪魔にも種類があることはわかっていたが、寄生型に関しては知らなかった。
読み飛ばしたんだろう、おそらく。
”それに、願いに関して。願いは力そのものだろ?代償は、お前の体そのもの。知らずに契約したのか?”
そう!そうだよ、知らなかった。
だから、こっから出てってよ。
”無理だな。それはそうと、お前、俺について何も知らねぇんだろ”
そう。
応えると、おっさん悪魔の説明が始まった。
その説明はかなり長くて、大変だった。
終わるころには、大きな窓から朝焼けが見えていた。
覚えてる分だけ要約すると。
成長が止まるから寿命じゃ死なない。
昔憑いていた人の知識と技術を覚えてる。
私の身体を勝手に動かせる。
それくらいしか覚えてないや。
”なんだ?もう一回言ってやろうか?”
いや、いい。
とりあえず、寝なきゃ。
ベッドに飛び込み、気づけば昼になっていた。
スッキリしたところで、何かやってやろうと思い、パソコンを開いた。
闇サイトに入り込み、検索の欄に「募集」とだけ入力し、スクロールしていく。
自分にできそうなものはないようだった。
諦めて、そこらのイキったサラリーマンのスレッドを読んでいた。
いい情報を見つけた。
「某武器系の会社で働いてんだけど、今月、ボーナスがたっぷりと来るってウワサがあるんだ」
盗んじゃお、って思った。
さらにサイトを見ると、「時期がおかしい」「嘘だろ」ってのがほとんどだったけど。
信じたいから信じた。
さっそく、上の階へ行った。
鍵は持ってる。
部屋に入り、父がいないことを確認し、パソコンを開いた。
パスワードも、知ってる。
仕事用のそのパソコンには、例のボーナスのことについても、詳しく書かれていた。
その情報を、いそいそと読み漁った。
”おい、もっと考えてからにしろ”
うるさい。なんでもいいでしょ。
読み過ぎた。もう、寝るから。
掠れたため息が脳に響いた。
私の周りの子たちも、ヤクってやつを試したりしてる。らしい。
お小遣い稼ぎに、違法取引やら、アレなバイトやら、やってる。らしい。
私は
私の家は、武器を売る会社「サツキミリタリー」をやってて、生まれたころから、恵まれてるみたいだった。
でも、周りの子の「普通」がわからなくて、楽しいかって言ったら、そうでもない。
大好きなお母さんはいなくなっちゃったし、よくわかんない女は入ってくるし。
そろそろ、みんなみたいに楽しんでみたい。そんなことを思いつつ、諦めて、春休みが終わってしまった。
日本、東京都、銀座。高級アパートの最上階の一個下の部屋。
ここが、私の部屋。上は、父さんの部屋。
今日も、頑丈な壁越しに、銃声やら、サイレンやら。
父さんは、危ないからって、滅多に外に連れてってはくれなかった。
母さんは、一番昔の母さんは、普通の子の体験をさせてくれそうだったけど。
窓から外を見下ろすと、ナイフ片手にはしゃぎ歩く若者、若者。
登校の時間だ。私の場合、移動するのは先生だけど。
教材を用意したところで、新しい先生が部屋に入ってきた。
なんだ、ただのババアじゃん、つまんない。
普段聞き流すし、見るだけで読まない教科書だけど、耳と目に留まった、印象的な単語。
「悪魔の契約」
古代遺跡から、悪魔の契約に関する資料が発見された。
数十年前に知名度が広がったが、今はもう死語ってレベル。
悪魔との契約は現在、ほとんどの国の法律で禁止されている。
先生にばれないように、関心のないフリをした。
先生が帰るまでなんとか耐えて、さっそく、パソコンでいろいろ調べた。
悪魔にも、種類があるんだ...
楽しくて強くて、願いをかなえてくれるなら、別に何でもいいけど。
お手軽な奴が、一個あるようだった。
詳しくはこの本に、とリンクが張ってあり、おしまい。
買わなきゃいけないのね。まあ、父さんには内緒で買おう。
購入ボタンをクリックして、実は覚えてるクレジットカードの番号やらを入力する。
日が沈み、また昇ってきた。
宅配ボックスの中を覗くと、何かが入ってた。
さて、きたきた。
本をパラパラめくっていくと、やり方の書かれているところまで見えてきた。
前の方は読む気が起きないってことで、読まなかったけど。
魔方陣を腕に書いて、呪文を言って、ちょっと待つ。そんな感じっぽい!
夕食を食べて、早速やってみる。契約の内容も、あの静かな食事の中で決められた。
インクは何でもいいのかな。油性ペンで、見よう見まねで書いてみる。
そして、何語かもわからない呪文を唱えた。
なんも、起こらないじゃん。
”いいや?成功だ”
脳に、渋くて低くてかすれたような、おっさんの声が響いた。
よくわからなかった。
部屋にだれかいるのかと思って部屋を見回すが、人の影はない。
いやいや!まだお願い、してないし!
ていうか、悪魔ってもっとかっこいいやつじゃん!
「ていうか、見えないし...」
”種族が違うな。俺は寄生型の悪魔だ”
がっかりした。思っていたのと違いが大きすぎる。
人型の悪魔を思い描いてたのに。
悪魔にも種類があることはわかっていたが、寄生型に関しては知らなかった。
読み飛ばしたんだろう、おそらく。
”それに、願いに関して。願いは力そのものだろ?代償は、お前の体そのもの。知らずに契約したのか?”
そう!そうだよ、知らなかった。
だから、こっから出てってよ。
”無理だな。それはそうと、お前、俺について何も知らねぇんだろ”
そう。
応えると、おっさん悪魔の説明が始まった。
その説明はかなり長くて、大変だった。
終わるころには、大きな窓から朝焼けが見えていた。
覚えてる分だけ要約すると。
成長が止まるから寿命じゃ死なない。
昔憑いていた人の知識と技術を覚えてる。
私の身体を勝手に動かせる。
それくらいしか覚えてないや。
”なんだ?もう一回言ってやろうか?”
いや、いい。
とりあえず、寝なきゃ。
ベッドに飛び込み、気づけば昼になっていた。
スッキリしたところで、何かやってやろうと思い、パソコンを開いた。
闇サイトに入り込み、検索の欄に「募集」とだけ入力し、スクロールしていく。
自分にできそうなものはないようだった。
諦めて、そこらのイキったサラリーマンのスレッドを読んでいた。
いい情報を見つけた。
「某武器系の会社で働いてんだけど、今月、ボーナスがたっぷりと来るってウワサがあるんだ」
盗んじゃお、って思った。
さらにサイトを見ると、「時期がおかしい」「嘘だろ」ってのがほとんどだったけど。
信じたいから信じた。
さっそく、上の階へ行った。
鍵は持ってる。
部屋に入り、父がいないことを確認し、パソコンを開いた。
パスワードも、知ってる。
仕事用のそのパソコンには、例のボーナスのことについても、詳しく書かれていた。
その情報を、いそいそと読み漁った。
”おい、もっと考えてからにしろ”
うるさい。なんでもいいでしょ。
読み過ぎた。もう、寝るから。
掠れたため息が脳に響いた。
1/2ページ