双子硬

私が起動して、数週間。
「よかったなあ、ジェミニ」
「? 何がでしょうか、マグネットお兄様?」
「弟機が出来上がるんだってよ」

マグネットお兄様はニコニコと、いつもの笑顔でそう仰った。
その一方で、私に起きた異変は……。
「おい、ジェミニ!?」
「どうしたんじゃ、ジェミニマン!?」
私は膝をつき、排気口に違和感がある。まるで、ギリギリと絞め上げられているような。

「ニードル、お兄様……ワイリーお父様……」
「ニードルマン、マグネットマン!メンテナンスルームへ運んでくれ!」
「了解!!」
私の意識と視界は、それを最後にプツン、と強制シャットダウンの音とともに途切れてしまった。


「……ジェミニ、起きれるか?」
「ニードルお兄様…?」
ニードルお兄様の音声が耳に届き、私はあのときのように瞼を開ける。
「何が、あったのでしょうか…?」
「……突然倒れたんだよ。弟機の話を聞いた途端」

………弟機。
………どうして?

「申し訳ございません、驚いてしまって…」
「驚きすぎだろう…しかも、精神回路の異常で倒れるなんざ」
「ご、ごめんなさい」
「ジェミニよぉ、何があったんだ?お前は何を考えた?」

………言えない。
………言ってはいけない。

「大丈夫です。もう落ち着きましたから」
「大丈夫つってもお前…」
「外で、マグネットお兄様もお待ちなのでしょう?早く行かなければ」
「おい!ジェミニ!!」
ドアへ向かおうとした足は、ニードルお兄様の怒鳴り声で止まる。

「…お前は繊細な奴だ。もっと俺達、アニキを頼れ」
「…ありがとうございます」
私はいつも通りの笑顔を返す。
しかし、また異変に気づく。眼から、涙が流れているのだ。

「おい…!?」
「だ、大丈夫、大丈夫ですから…!」
「……」
ニードルお兄様は黙ってしまわれた。私が怒らせてしまったのか、呆れられたのか…。

………捨てないで。
………あなたたちの一番でいさせて。

「あの…部屋へ帰ります。ごめんなさい、ニードルお兄様…」
「気にすんな」
ニードルお兄様は、ハンドパーツで私の頭を撫でて下さる。
「悩みがあるなら、言えよ。俺達はいつでも弟の味方だ」

………今度の弟機も?
………私だけの味方ではなくなるのですか?

「はい、ありがとうございます」

………嘘つきだ。
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