双子硬

瞼が開く。
瞬間、広がる世界には二人の父親の姿。
「おはようございます、お父様方。私をジェミニマンと名付けてくださったのですね」
「うん、起動はうまくいってますよ」
「全て良好です」

私に次いで聞こえた声は、赤いロボットと青いロボット。ああ、あのお姿は!

「マグネットお兄様!ニードルお兄様!」
「もう俺たちのことが認識出来るのか?」
「勿論です。ずっと私のプログラミングに協力してくださっていたでしょう?」
お二人が私の構築に携わってくださっていたことは、起動した瞬間から知っている。記憶のようなものが、一気に噴き上がるのだ。

「はじめまして、お兄様方。よろしくお願いいたします」
「そんなに畏まらなくてもいいんだぜ?俺のことだって好きに呼べばいいし」
「……で、でしたらやはり、マグネットお兄様と。ご迷惑でなければですが」
「迷惑じゃねーけどよ。ジェミニ、それじゃ疲れねーか?」

…初めて、名前を呼ばれた。

「うわっ!?なんで泣くんだよ!?」
「おいマグネット、お前の言い方がキツいんじゃないのか?」
「あれぇー?そうかなぁ…」
「ち、違うのです。嬉しくて…」
私の中には確かに、『心』が存在することを認識する。私はロボット。だけれど、私は大切な『心』というものを持ったロボットであることを、誇らしく思った。

「そういやお前、ホログラムを出せるだろう。ちょっとやってみてくれ」
「は、はい、ニードルお兄様」

………もし、ちゃんと出来なかったら?

「!?」
「どうした、ジェミニ?」
「…今…」
確かに、『心』がざわついた。何だったのだろう。

「ほ、ホログラムを起動します」
ホログラム起動命令を出すと、それはすぐに現れた。私と同じ容姿をしている。
「はじめまして、僕は『私』のホログラム。好きなように呼んでくれ」
「…はじめまして、『僕』。私が君の本体です」

何だろう。唯一無二の『心』に寄り添う存在が出来たみたいだ。
「とりあえず、基地を案内しようか。こっちだぜ」
「はい!」
私に繋がっていたコードをお父様方が外してくださり、私は自由となった。その体で歩き始める。


……この世に生まれることが出来て、本当に嬉しい。
私は何よりも、それを喜んだのだった。
1/3ページ
スキ