短編
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航空障害灯と眩しい白色灯の窓。夜空の星は白夜のように明るかった。
大荷物を抱えた結衣に連れられて、僕たちは車庫から盗んだ発煙筒の煙に巻かれ、暖を取って夜を明かす。
「今日はこれにしようかな!」
横には、いつも本を読んでいる彼女。淡いミルクティーの海に浮かぶストローに口をつけながら優雅に本を開いている。僕たちは家出しているはずなのに、アイツは。
「緊張感なさすぎじゃないかい?もっと、こう、家出してるんだからさ。」
「えー?別に思い思いに過ごせばいいじゃん。
……読み聞かせしてあげようか?」
読み聞かせ?成人した男が読み聞かせされるってどういう状況だよ。期待の眼差しを向ける結衣には申し訳ないけど、とてつもなく嫌だ。
ふと彼女の手元を見ると『黴』の一文字。
「そんなに気になる?秋声さんが最初になおしてくれた本だよ。」
懐かしい思い出。彼女が今よりももっと頼りなかった初仕事の時、僕は侵蝕されたこの本を浄化した。彼女は他の誰よりも喜んでくれて、「これで本が読める」と大はしゃぎして。
その後、彼女はすぐに、元に戻ったばかりの本をめくっていた。
今思えば、彼女は純粋に「文学」を愉しんでいたんだと思う。
「嗚呼、覚えているさ。結衣、この本好きだな。」
柄にもなく、彼女の猫毛をやんわりと撫でてしまう。「そんなに僕のことが好きなのか」と言いかけて、無理やり別の言葉に置き換える。
「うん。だって、秋声さんのこと好きだもん!」
「僕を揶揄うと痛い目見るぞ。」
嘘だろ、そんなこと軽々しく言うなって。
彼女の宝石のような瞳を見てしまったら、途端に熱が上がりそうで、必死に目を逸らした。
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航空障害灯と眩しい白色灯の窓。夜空の星は白夜のように明るかった。
大荷物を抱えた結衣に連れられて、僕たちは車庫から盗んだ発煙筒の煙に巻かれ、暖を取って夜を明かす。
「今日はこれにしようかな!」
横には、いつも本を読んでいる彼女。淡いミルクティーの海に浮かぶストローに口をつけながら優雅に本を開いている。僕たちは家出しているはずなのに、アイツは。
「緊張感なさすぎじゃないかい?もっと、こう、家出してるんだからさ。」
「えー?別に思い思いに過ごせばいいじゃん。
……読み聞かせしてあげようか?」
読み聞かせ?成人した男が読み聞かせされるってどういう状況だよ。期待の眼差しを向ける結衣には申し訳ないけど、とてつもなく嫌だ。
ふと彼女の手元を見ると『黴』の一文字。
「そんなに気になる?秋声さんが最初になおしてくれた本だよ。」
懐かしい思い出。彼女が今よりももっと頼りなかった初仕事の時、僕は侵蝕されたこの本を浄化した。彼女は他の誰よりも喜んでくれて、「これで本が読める」と大はしゃぎして。
その後、彼女はすぐに、元に戻ったばかりの本をめくっていた。
今思えば、彼女は純粋に「文学」を愉しんでいたんだと思う。
「嗚呼、覚えているさ。結衣、この本好きだな。」
柄にもなく、彼女の猫毛をやんわりと撫でてしまう。「そんなに僕のことが好きなのか」と言いかけて、無理やり別の言葉に置き換える。
「うん。だって、秋声さんのこと好きだもん!」
「僕を揶揄うと痛い目見るぞ。」
嘘だろ、そんなこと軽々しく言うなって。
彼女の宝石のような瞳を見てしまったら、途端に熱が上がりそうで、必死に目を逸らした。
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