いわゆるおとぎばなし
ぶくぶくと 音を立てて沈んで行く
真っ暗な海底にて 抗うことなく
不思議と呼吸ができるのは
此処を甘受しているから
あの日は光が恋しかった
それでもわたしは暗闇を選んだ
恋い焦がれるより愛していた
足元でざらつく砂つぶも
柔く肌を撫ぜる生温い波も
わたしにとってはそれが全てだった
わたしはこの海の味を知っていて
それが自分が生んだものであることも
本当は最初から知っていたのである
離れ難いのは 愛しいのは
みるみる内に水面が遠ざかっていくのは
自分の悲しみを何よりも尊んだから
励ましも 叱咤も
わたしには不要だった
ただわたしの背を撫ぜる
あたたかな手が欲しかった
ただわたしを強く抱く
やわらかな腕が欲しかった
裏切りも 失望も 此処にはない
だから、眠ろう
此処でもう少しだけ
わたしだけの海をつくろう
そうすればいつか
きっと、
真っ暗な海底にて 抗うことなく
不思議と呼吸ができるのは
此処を甘受しているから
あの日は光が恋しかった
それでもわたしは暗闇を選んだ
恋い焦がれるより愛していた
足元でざらつく砂つぶも
柔く肌を撫ぜる生温い波も
わたしにとってはそれが全てだった
わたしはこの海の味を知っていて
それが自分が生んだものであることも
本当は最初から知っていたのである
離れ難いのは 愛しいのは
みるみる内に水面が遠ざかっていくのは
自分の悲しみを何よりも尊んだから
励ましも 叱咤も
わたしには不要だった
ただわたしの背を撫ぜる
あたたかな手が欲しかった
ただわたしを強く抱く
やわらかな腕が欲しかった
裏切りも 失望も 此処にはない
だから、眠ろう
此処でもう少しだけ
わたしだけの海をつくろう
そうすればいつか
きっと、
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