再会した幼なじみは、学園の極上王子様でした。~和菓子屋の不器用な恋、お届けします~
「……琴音!いい加減に起きなさい!」
階下から響くお母さんの鋭い声に、私はビクッと肩を揺らした。
「んぅ……あと5分……」
「何言ってるの!今日は入学式でしょうが!遅刻したら承知しないわよ!」
「……っ!入学式!?」
その言葉で、頭の中にパッと鮮やかな桜の色が浮かんだ。
私は飛び起きるようにベッドから這い出し、まだ重い瞼をこすりながら洗面台へと向かう。
冷たい水で顔を洗うと、ようやく意識がはっきりしてきた。
鏡に映る自分に、「今日からだよ」と小さく言い聞かせる。
自室に戻り、クローゼットに掛けてあったおろしたての制服を手に取る。
県内屈指の名門、蒼月学園の制服。
凛としたネイビーのブレザーに、清楚なチェックスカート。
袖を通すと、生地のパリッとした感触が肌に心地よく、背筋が自然と伸びるのを感じた。
「……よし」
合格祝いで買ってもらった、白を基調とした猫脚のドレッサーの前に座る。
丁寧にブラッシングをして、長い黒髪を整える。
いつもより念入りに身だしなみをチェックしていると、なんだか自分が少しだけ大人になったような気がして、胸の奥がくすぐったくなった。
一階へ降りると、リビングには香ばしいお出汁とコーヒーの香りが漂っていた。
「おはよう、琴音。いよいよ今日だな」
新聞を片手にコーヒーを飲むお父さんが、眼鏡の奥の目を細めて笑う。
「おはよう、パパ」
「早く食べちゃいなさい。今日はパパに車で送ってもらうんだから、のんびりしてられないわよ」
キッチンでお弁当を作っているお母さんの小言も、今日ばかりは心地いいBGMだ。
私は用意された朝食を急いで口に運ぶ。
実家の和菓子屋『はづき』が忙しい時期は、家族全員で朝からバタバタするのが日常だけど、今日は私の人生にとって特別な日。
4月1日。
夢にまで見た、蒼月学園の入学式。
合格が決まった時、お父さんもお母さんも、お店の職人さんたちも、みんなが大袈裟なくらい喜んでくれた。
私がどれだけ必死に机に向かっていたか、みんな知っていたから。
(やっと……会えるんだ)
そう思うだけで、勝手に口角が緩んでしまう。
12歳のあの日、桜の下で約束してから3年。
中学に入ってからは、お互いに別々の道を歩んでいた。
向こうは進学校での勉強や習い事で忙しかったし、私も放課後は家のお店を手伝う毎日。
連絡先は知っていても、なんとなく気恥ずかしくて、メッセージを送る勇気も出なくて――。
気づけば、私たちは「疎遠」と呼べるくらいの距離になっていた。
でも、それも今日でおしまい。
食事を終え、最後にもう一度鏡の前に立つ。
緊張のせいか、少しだけ顔色が悪い気がした。
私は制服のポケットに忍ばせていた、お気に入りの桜色のリップクリームを取り出す。
唇にひと塗りすると、ほんのりと艶が出て、私の心に小さな勇気を灯してくれた。
「琴音、準備はいいか?」
玄関でお父さんの呼ぶ声がする。
私はスクールバッグをぎゅっと抱きしめ、大きく深呼吸をした。
「うん! 行ってきます!」
あの日交わした約束の場所へ。
3人が待つ、蒼月学園の門をくぐるために。
私は期待と不安を胸いっぱいに詰め込んで、父親の車に乗り込んだ。
車窓から見える桜並木は、3年前と同じように、私たちの再会を祝うみたいに満開だった。
階下から響くお母さんの鋭い声に、私はビクッと肩を揺らした。
「んぅ……あと5分……」
「何言ってるの!今日は入学式でしょうが!遅刻したら承知しないわよ!」
「……っ!入学式!?」
その言葉で、頭の中にパッと鮮やかな桜の色が浮かんだ。
私は飛び起きるようにベッドから這い出し、まだ重い瞼をこすりながら洗面台へと向かう。
冷たい水で顔を洗うと、ようやく意識がはっきりしてきた。
鏡に映る自分に、「今日からだよ」と小さく言い聞かせる。
自室に戻り、クローゼットに掛けてあったおろしたての制服を手に取る。
県内屈指の名門、蒼月学園の制服。
凛としたネイビーのブレザーに、清楚なチェックスカート。
袖を通すと、生地のパリッとした感触が肌に心地よく、背筋が自然と伸びるのを感じた。
「……よし」
合格祝いで買ってもらった、白を基調とした猫脚のドレッサーの前に座る。
丁寧にブラッシングをして、長い黒髪を整える。
いつもより念入りに身だしなみをチェックしていると、なんだか自分が少しだけ大人になったような気がして、胸の奥がくすぐったくなった。
一階へ降りると、リビングには香ばしいお出汁とコーヒーの香りが漂っていた。
「おはよう、琴音。いよいよ今日だな」
新聞を片手にコーヒーを飲むお父さんが、眼鏡の奥の目を細めて笑う。
「おはよう、パパ」
「早く食べちゃいなさい。今日はパパに車で送ってもらうんだから、のんびりしてられないわよ」
キッチンでお弁当を作っているお母さんの小言も、今日ばかりは心地いいBGMだ。
私は用意された朝食を急いで口に運ぶ。
実家の和菓子屋『はづき』が忙しい時期は、家族全員で朝からバタバタするのが日常だけど、今日は私の人生にとって特別な日。
4月1日。
夢にまで見た、蒼月学園の入学式。
合格が決まった時、お父さんもお母さんも、お店の職人さんたちも、みんなが大袈裟なくらい喜んでくれた。
私がどれだけ必死に机に向かっていたか、みんな知っていたから。
(やっと……会えるんだ)
そう思うだけで、勝手に口角が緩んでしまう。
12歳のあの日、桜の下で約束してから3年。
中学に入ってからは、お互いに別々の道を歩んでいた。
向こうは進学校での勉強や習い事で忙しかったし、私も放課後は家のお店を手伝う毎日。
連絡先は知っていても、なんとなく気恥ずかしくて、メッセージを送る勇気も出なくて――。
気づけば、私たちは「疎遠」と呼べるくらいの距離になっていた。
でも、それも今日でおしまい。
食事を終え、最後にもう一度鏡の前に立つ。
緊張のせいか、少しだけ顔色が悪い気がした。
私は制服のポケットに忍ばせていた、お気に入りの桜色のリップクリームを取り出す。
唇にひと塗りすると、ほんのりと艶が出て、私の心に小さな勇気を灯してくれた。
「琴音、準備はいいか?」
玄関でお父さんの呼ぶ声がする。
私はスクールバッグをぎゅっと抱きしめ、大きく深呼吸をした。
「うん! 行ってきます!」
あの日交わした約束の場所へ。
3人が待つ、蒼月学園の門をくぐるために。
私は期待と不安を胸いっぱいに詰め込んで、父親の車に乗り込んだ。
車窓から見える桜並木は、3年前と同じように、私たちの再会を祝うみたいに満開だった。
