再会した幼なじみは、学園の極上王子様でした。~和菓子屋の不器用な恋、お届けします~

「……こら、泣くなよ琴音」

聞き慣れた優しい声が、私の頭の上から降ってくる。

「春樹……だって……」

視界が涙で滲んで、目の前に立つ大好きな幼なじみの顔がぐにゃりと歪んだ。

たった今、情けなく泣きべそをかいているのは私、羽月琴音、12歳。

小学校の卒業式を終えたばかりの校庭。

舞い散る桜の花びらが、私たちの足元を淡いピンク色に染めていく。

けれど、この美しい景色さえ、今の私にはお別れの合図にしか見えなかった。

「中学が違うだけで、一生会えないわけじゃないだろ? またすぐ会えるさ」

律が困ったように眉を下げて、私の頭をそっと大きな手で撫でた。

その手の温もりが心地よくて、余計に胸の奥がキュンと痛む。

「ったく……。いつまで泣いてんだよ、お前。鼻真っ赤だぞ。不細工」

蓮がぶっきらぼうに吐き捨てたけれど、その瞳は私を突き放してなんていなかった。

むしろ、壊れ物を扱うみたいに、痛いくらい優しい視線で私を見つめている。

春樹、蓮、律。

この3人は、地元でも有名な秀才3人組。

明日からは、県内でもトップクラスの私立中学校へ進学することが決まっている。

私だけが、地元の中学校。

当たり前のように一緒にいた毎日が、今日でぷつりと途切れてしまう。

それが、たまらなく怖くて、寂しくて。

「……っ、高校は!絶対に、みんなと同じところに行くから……!」

私はぎゅっと拳を握りしめて、震える声を振り絞った。

溢れそうだった涙をぐっとこらえて、3人を真っ直ぐに見据える。

「……蒼月学園だぞ?お前、あそこがどれだけ受かるの難しいか分かってんのかよ」

蓮が意地悪く口角を上げた。

蒼月学園。

県内屈指の超難関進学校であり、毎年の倍率はとんでもなく跳ね上がる。

この3人なら余裕だろうけれど、平凡な私にとっては、まるでお城のような遠い場所。

「大丈夫……!私、死ぬ気で頑張る。3年後、絶対……隣に行くから!」

「……ふはっ、死ぬ気かよ。大げさだな」

私の必死な顔を見て、春樹がふっと柔らかく、花が綻ぶように微笑んだ。

そして、私の小指に自分の小指を絡める。

「わかった。約束な、琴音。……俺たち、待ってるから」

春樹に続いて、蓮も、律も。

3人の温かい指先が、私の小指に重なった。

――これが、私たちの『約束』。

この時の私は、まだ何も知らなかった。

3年という月日が、男の子をどれほど劇的に変えてしまうのか。

そして、再会した彼らが、学園中の女子を虜にする『完璧すぎる王子様』へと進化して、私の平凡な日常を甘くかき乱すなんて――。
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