10*海と太陽とホスト部
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「なんだよこの細い腕は…」
「ハルヒくんっ!」
「女みてーな癖にっ!カッコつけてんじゃねーよ」
環たちと向かう先にいるのは男3人にたった1人で立ち向かうハルヒ
お姫さん方はハルヒに絡む2人とは別の、もう1人に捕まえられ身動きが取れないようだ
なんてことを…そう思いお姫さんに触れている男に向かい手を伸ばそうとした時
「ガキは大人しく…海水浴でも、してろっ!」
男の振り上げた拳がハルヒの頬を打ち、そのままハルヒは崖の下へと落ちていく。
その瞬間が、スローモーションのように映った。
助けなければと思ってここまで走ってきたのに、足が動かない。
ふざけるなと自分に怒り足をハルヒの方に出した。
しかし自分の横をすり抜けたのは環。
いち早くハルヒの方に走った環は、躊躇する事もなくハルヒの後を追い崖の下に飛び込んでいった。
大きな水しぶきの音と共にお姫さんたちの悲鳴が上がる。
その悲鳴でふと我にかえった。
「ハ、ルヒ…!!環っっ!!!」
焦り狂い、2人を追うように崖へと向かうと
「馬鹿、お前も怪我する気か!」
後から来た鏡夜に腕を掴まれ引き止められる
「だっ…!!2人が!」
「落ち着け…大丈夫だ」
焦った俺の頬を両手で包み込み、言い聞かせるように鏡夜は落ち着いた声色を出す
そう言われゆっくりと下を覗くと海面から顔を出す環と、環に抱きかかえられているハルヒ
ふぅ……と一気に脱力した
よかった……しかし、ハルヒは頬を殴られている。
環だってもしかしたら怪我をしているかもしれない
早く迎えに…そう思い立ち上がると
「な、んだよお前ら…!」
後ろから聞こえた怒鳴り声
…耳障りとも思えるその声に、頭は一気に冷静になる
振り返ると光に掴みかかられている男らと馨に保護されたお姫さん方
男たちは反省の文字が見えていないのが丸わかりだ
「馨、お姫さんたちを下へ」
そういうと馨は少し驚いた顔で「う、うん…」と、お姫さんたちを連れていく
その背中が消えたのを確認すると、ゆっくりと男たちに近づく
「ん……麗さん?」
男たちもなかなか図体はでかいが、それに負けじと取っ組み合いをする光
光も相当怒っているようだ。
だが、悪いな…その役目は譲れない
「んだよ!なんか文句でも…っっ!?」
「んな…!麗さん?!」
光が掴んでいる男の胸ぐらを横取りさせてもらう
男が俺に手を引っ掻いてくるが痛くも痒くもない
「なっ…何してくれてんだお前!」
すると大人しくしていた仲間の一人が逆上し拳を向けてくる
「んがっっ!!?!」
その男に、空いてる手で顎に一発食らわせる
軽く脳震盪を起こしたのか、その場に膝から崩れ落ちる
それを見ていたもう一人はへたりと、顔を青くして座り込んでしまった
そんな二人にお構いなしに力づくで引っ張っていくのはハルヒを殴った男
向かう先は岩の端だ
「は…なせ!このっ…!っぅぐ…ぁ!!」
騒がしい…と、頬に一発
かなりいい角度で拳が入ったらしいきっと口の中は切れているだろう
「ぐぇっ…がはっ……ぁ!」
男の腹に一発、片方の頬にもう一発
自分の拳にも少し痛みが走ったがどうってことない
掴んでいた胸ぐらを離すと、よろめく男の頬を今度は鷲掴みにする
「ぐぅ…!」と鳴くその顔は腫れ上がって無様だ
無いに等しい力で俺の手から逃れようとするが、そのせいか男の片足が崖から滑り落ちた
「!!?!?」
なんとか落ちずに持ち堪えたが、落ちそうになった恐怖は身に刻まれたようで顔が青く染まっていく
「……落ちるか?」
「んん…!!!」
「落ちてみろよ、おどれがさっき落としたやつみてぇに」
ギリギリと手に力が入る
先ほど殴った両頬のアザが、より濃く色を広がる
「んん…!!んんん!!!」
「死にたくねぇってか?」
俺が腕を伸ばすことによって崖下に落ちそうになる男は必死に手にしがみついて首を縦に振る
「さっき同じことをやっただろうに、なのに自分は死にたくねぇか…大したイモ引きだな手前は」
怒りで無意識に力が強くなる
ミシミシとなるのは男の骨だろうか
いや、そうだろうがそんなこともう今更どうでもいい
「いいぜ、離してやるよ。んで魚の餌にでもなって…」
「「ストップ!!ストーーーーップ!!!麗さん!!!!!」」
急に後ろから羽交い締めにされた
声的に光と馨だろう
「あ」
止められた事で思わず手を離してしまった
ありゃ…拳を握り込んだとき、力が篭りすぎてしまってたんかな…掌に血が滲んでるわ
なんて呑気に考えていると
崖下からまた水しぶきの音が聞こえた
「「「………あ」」」
***
「ハルちゃん!」
「殿!!」
崖から降り、海から上がってきた2人に駆け寄る
ハルヒは環に抱えられているが、意識はあるようでほっと胸を撫で下ろした
「……アイツらは」
「身分証を預かって丁重にお帰りいただいたよ…女の子たちはホテルに帰った」
環の問いに、淡々と応える鏡夜。
環は鏡夜の話を聞きながらハルヒをそっと浜に下ろす。
「ハルヒ…」
もう日も沈む、照らすものがない今はその顔色も暗い
ハルヒの濡れた髪を払い、顔を上にむかせる
アザこそないが、頬は少し赤く、口元も切れている
その傷を見ただけで胸が締め付けられる
「医者は呼んであるから、すぐに来てくれるだろう」
「そうか…」
その一言に返事はするものの、内容は耳からすり抜ける
いち早くこの傷の治療をしなくては
その思いでいっぱいだ
「大丈夫ですよ、医者なんて」
ハルヒの頬に当てていた俺の手が、ハルヒの手によりゆっくりと外され、まるで何事もなかったかの様にハルヒは歩き出す。
そんなハルヒを止めたのは環だ。
「お前はアレか…?実はハニー先輩みたいに武道の達人だったりする訳か?」
「は…?」
「女の自分一人で、男相手になんとかできるって…どうして思うわけ」
いつもとは違う環の雰囲気にハルヒも固唾を飲む
しかし、物怖じする様子はない
「男とか…女とか関係ないでしょう?あんな所に居合わせてそんな事考えてる暇なんて…」
「ちょっとは考えろ!!馬鹿!!お前は女なんだぞ!」
環の一言にハルヒの瞳が見開かれる
だが、肩を掴まれながらも環の目を強く見つめ返し、ハルヒも負けじと言い返した
「迷惑かけたのは謝りますけど、それ以外で怒られる意味がわかりません…間違った事はしていない!」
「…そうかよ」
…普段怒ったとしても、ここまで見せない環に動くことすらできなくなる
環をそうさせる…それほどまでにハルヒに分かって欲しいことがあるのだろう
「それなら勝手にしろ!!間違いを認めるまで…お前とは口をきかん!」
そう強く言ったものの、すぐに話をしたそうにハルヒを見る環に肩の力が一気に抜ける
おいおい…さっきの父親のような威厳はどうしたんだよ…
「思わぬところで問題勃発…やね」
「あぁ、そういえば」
鏡夜が何か思い出したように呟く
「ん?どした?」
「ん、いや…一つ伝え忘れていたことがあってね、だがまぁいいか」
「?」
そしてその後
今夜の宿が猫澤家の別荘であるという更なる大問題を知り、環の悲鳴が辺りに響き渡るのだった