9*鳳プールSOS
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前は、泳がないのか?」
椅子に預けている背中に声をかける
その相手はゆっくりとこちらを振り返り「あぁ」と短く返し体を起こした
「そもそも俺がプールではしゃぐところが想像できるか…?」
「あー、そら考えられへんわ」
言いながら鏡夜の隣の椅子に腰をかけ、手に持っていたジュースを一口飲んだ
「ん」
「…ん?」
ふと、手を差し出してきた鏡夜
なんだ?と思いとりあえず自分の手を乗せてみる
すると、ようやくこちらをみた鏡夜
側から見れば、鏡夜の手に俺の手がただ乗っているだけというおかしな光景
鏡夜はじーっとこちらをみてくる
…最近多いぞお前、その視線だけで分かれって言うやつが
なんだよ、と思いながらこちらも負けじと鏡夜の目を見つめ返すと
「俺の分のジュースはないのか?」
「………は…?」
「お前が飲んでいるジュース…俺にはないのか?と聞いている」
「あ」
…なるほど、そういう…
「…ん、飲む?」
飲みかけで悪いけどと言って渡すと
何かを考えるようにして固まる鏡夜
…なんだよ、どうしたんだ
「…飲まないなら」
と言いかけた時、スッとジュースを手から奪われる
飲むんじゃん、そう思うも口には出さずにプールの方を見る
するとハニー先輩と目が合い、手を振られた。
無邪気だ、なんて高校生男子にいうには可愛い言葉を思い浮かべながら手を軽く振り返す。
カラン…となった涼しげな音
きっと氷の音だな…ん?氷?そう思い
鏡夜に渡してジュースに目を向けると
「俺のジュース…!!」
見事に空になっていた
「ご馳走様」
「…一口しか飲んでへんのに」
「また取ってくればいいだろう?その時は俺の分も持ってこい」
「とんだ俺様やな」
御坊ちゃまか、いや御坊ちゃまだったな…
仕方ない…取ってくるか、と席を立ちジュースをもらいに行こうとすると後ろ手を取られる
手の中のコップから、涼しい音が小さく鳴った。
「きょ…や…?」
なんだ、離せ、そう手を振り払おうとするも、うまく解けない。
もう片手にコップも持っているため、もう視線で訴えるしかない。
すると、その視線を面白く思わなかったのか、手を思いっきり引っ張られ
「わっ…!!?」
バランスをくずし、鏡夜の膝の上に跨る形になってしまう。
コップを落とさなかったのが救いだなと少し安心した。
「なんや、急に…!」
「いや、別に」
ますます意味がわからない
「どないした…?鏡夜…んっ」
無防備な背中を撫でる指
その指は背骨の、椎骨を一つずつなぞるような手つきで上から下へと流れていく
痺れるような快感とくすぐったさ、それと単純に膝の痛みから、鏡夜の膝に直接体重をかけて座ってしまう
掴まれたままの手、もう片方の手にはコップ
抵抗などさせないつもりだ。
「な、にしてん…っ」
体勢からして、少し下にある鏡夜の顔を睨みつける
「…そんな睨み、全然怖くないぞ?」
言いながらも鏡夜の指は止まらない
「…背中のあざ、もう綺麗に治ったみたいだな」
「当たり前、もうえらい経ったやろ…ん…ぅ、てか、それわざわざ確認するためにこないな“触診”してんのか?」
「いや、お前の肌は触れていて心地いいからだが」
「うあっ…!ちょっ……んん!」
背骨をなぞっていた手がうなじに回り、グイッと引き寄せられる
それにより更に近づいた距離
そして喉、首、鎖骨と撫でられる
今度は手ではない…鏡夜の唇でだ
キスとも呼べないその行為に、顔に熱が集まる
その行為は、俺の胸にまで到達すると、ちぅ…という音とともに離れた。
ふぅ…と、吐き出した息は自分でも驚くほど熱い
「…お前の肌は白いから、キスマークなんてすぐつきそうだ」
そう言われ、息良いよく自分の胸元を見る
そこには何の跡もなく、ホッとした
「…冗談だ」
「…………立ち悪ぃ」
緩まった鏡夜の腕からこれ見よがしとすり抜け
ジュースを持ってこようとその場を離れようとすると
「俺の分も持ってこい」
と背中に声をかけられる
その方向を見ずに「…あーい」なんて適当に返事をし鏡夜の元を離れた
離れた場所からチラと後ろを覗くと、こちらをみている様子はない
はぁ…再度吐いたため息は、もちろん自分の中の熱を出すもの。
パタパタと首元を手で仰ぐ。
…なんであいつはあんなに恥ずかしいことができるんだ
いや、確かにいつも恥ずかしい言葉を使っているのは自分もそうなのだが…
今日は客もいないからそんなサービス気にしなくていいのに、そうだろ…?
自問自答しては頭を唸らせる
…そういえば…
双子の喧嘩の時
「お前だって俺が大好きだろう…?」
「俺は、お前が」
……あれって、何を言いたかったんだ?
***
ジュースをとりに行った麗の背中をチラと伺う
その背中には、映画撮影の時に負ったあの生黒く大きなアザは綺麗さっぱり無くなり
綺麗な白い肌に戻っている
そして自分の口元に手を持っていく
別に気にする事なんてない間接キス
しかし、意識したらどうしても振り払うことができなくて、麗の肌に唇を寄せた
唇が撫でる肌はとても滑らかで何度も吸い付き、跡を残したいと目眩がした
胸に吸い付いた時に、わざと可愛らしく音を立てて離れた
…これでお前も気づけばいい
耳へのキスの意味を知っていたんだろう?
なら胸へのキスの意味も知っているんじゃないか?
ふぅ…と吐く息は僅かに熱を帯びている
「あぁ、くそ…」
自分らしくもない
そう思うものの
そうさせているのは、…いつだって同じ相手なのだ