9*鳳プールSOS
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そして今に至る…
「ここは、うちの鳳グループが手がけているテーマパーク…熱帯アクアガーデンだよ」
環先輩をうまく交わし、これからどうやって帰ろうか考えていると、鏡夜先輩が優雅に海(のように見えるプール)を眺めながら自分が何処に連行されたのかを教えてくれた。
「だって、鏡夜先輩の家は病院とか…医療関係の仕事とか言ってませんでした?」
「まぁ…多角経営ってやつで色々やってるが、ここはむしろ、医療関連と言ってもいい」
多角経営…??と言う疑問が「はぁ…」と言う情けない相槌の形で口からこぼれた。
「ストレスや閉塞感に悩まされ…開放的な南国で休養したくても、時間的、経済的にできない人は沢山いる…ここは、そんな人たちの療養にもなる癒し系テーマパークだよ」
メガネを指であげたせいか、反射した光を眩しく感じた。…いや、眩しいのはこの人の笑顔か
「我が鳳グループは…いつも人々の幸せを考えているんだ」
まぁその笑顔は、果てしなく胡散臭いのだが…
「オープンするのは来月からだが、今日はホスト部貸切の特別先行招待さ」
「穏やかな気分だ…今回だけは、サービスしなければならないお客様もいない…まさに、美少年戦士の休息…と言ったところか…」
鏡夜先輩の隣の椅子に腰をかけ空(に見える人工物)を見上げる環先輩
…なるほど、自分がここに連れてこられた理由がなんとなくわかった。
そして逃げられないのだと言うことも
「ハールちゃんっ!ココナッツジュース飲む?それとも…マンゴーケーキ食べる?」
「えっと、じゃあ…ココナッツジュースを」
「はーーい♡」
憂鬱な自分とは違って通常運転で話しかけてくるハニー先輩。
可愛いウサギ柄の浮き輪を持つ無邪気な姿に市民プールで遊ぶ小さい子たちを重ねてしまった
…そしてこんな場所でもケーキを食べるのか、なんてツッコミは今更野暮なのだろうと思う。
「ハルヒ!ウォータースライダー行こうぜ」
「つーか、お前そのパーカー姿は何?」
「これは…」
***
これもまた、ほんの少し前
麗先輩とともに連行された先で
「「じゃっ、この子よろしく!」」
と突き出された先にいたのは…
「……双子のメイドは双子なん?」
麗先輩も言った通り、瓜二つな双子のメイド(?)がいた。
「かしこまりました♡」
「では藤岡様!…こちらへ♡」
「えぇ…!ちょっとぉ…!」
そう抵抗しても後ろには双子…逃げられない。
唯一の味方である麗先輩はと言うと、何故かモリ先輩にお姫様抱っこされて、顔を両手で覆って下を向いている。
…ありゃあ逃げられなさそうだ
更衣室に(渋々)入ると、無理やり制服を脱がされる。訴えたら勝てるレベルだぞこれは。
「そちらの部屋に、水着が用意してありますから」
メイドの片方にそう促され、「水着ぃ?」と素っ頓狂な声が出てしまった。
「ウチの母がデザインした今年の新作、全部持ってきたから」
「好きなの選んでいいよ」
聞こえたのは小悪魔双子の声。
その声に便乗するように、メイドたちも声を揃える。
「「さぁ!藤岡さま!お選びください!」」
いやでも目に入るズラリと並ぶ水着の中から何着かを持ち、ずいずいと近づいてくるメイドたち。
こちらの拒否権など全く無視な雰囲気に、やはり最後の助け舟…麗先輩に助けてもらうしか…
と思った時である。
更衣室の外から
「「じゃ!麗さんは僕らと一緒にお着替えねー!」」
「……………は?嫌だけど」
「レーちゃんとお着替え〜!!」
「麗さんの水着も俺らがちゃんと!持ってきたからねぇ」
「着せ替えごっこしてあっそぼー!」
「ぅえ”!?ちょっ…!や、お前達とは!絶対嫌だぁあ…!!!」
…などと言う声が聞こえてきて
あ…これ、終わったな、と悟った…。
双子が更衣室前から消えた後も別にいいと選ぶことを拒否していたのだが
「では、私が選ばせていただきます」と選ばれるものが全て意味のわからないもので
それならもう無難なものを…と選び
ピンクのワンピースタイプのを選んだのだが
着替えたあと、更衣室を出た途端に環先輩と遭遇した。
「先輩…?」
「は、早くこれを着ろ…」
こちらをざっとみた環先輩に何故かパーカーを渡されたのだ。
「女の子がお肌を見せていいのは、…お嫁に行く時だけだ…」
…と、言うことである
***
「…で?泳がないのか?」
「もしかしたら金槌…?」
「人並みには泳げると思うけど…こういう所、あんまり興味ないし」
空を見上げる
きっと、この眩しい日差しでさえも人工物なのだろう。
「泳いだりするより、早く帰りたいんだけど…」
「なんだよー、麗さんはしっかり着替えてくれたっていうのに」
「ねー?」
「お前らが勝手に服を剥いできたから仕方なくだろうが…」
双子のブーイングに続き聞こえた声に振り向くと、ようやく見つけた探していた人
「制服もどっかに隠しやがって…」
フラフラとした足取りでこちらに来る麗先輩
…顔が赤い気がする、のは…いや、やっぱり気のせいではない気がする
麗先輩の水着は、光や馨より少し長めのサーフパンツで、模様が和風テイストのものだ…
さすが…似合ってる、…というか
「何したの、2人とも」
そう問わずにはいられないほど、麗先輩が不機嫌なのだ
「んー?何って…別に?」
「オキガエ…だけど?」
そう言う双子の笑顔はそりゃあもう晴れやかなもので
「…お前らなんかもう嫌いだ」
麗先輩は自分のところまでツカツカ歩み寄ってきたと思ったら
自分の背中に身を隠すようにして自己防衛の形に入る
「えー?随分楽しんだじゃん?僕ら」
「楽しんでたのはお前らだけな」
「麗さんのこと隅々まで知れて、僕ら嬉しかったのに」
「俺はすこぶる不機嫌だよ」
じりじりと近寄ってくる光、馨から自分の身を守るように盾がわりにされる
その行為に、ちょっと複雑な気はしたが
「もうハルヒしか信じられない…」という細々とした声を聞いてしまったら、もう何も言えなかった…