7*双子、ケンカする
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「「Aランチ」」
ハモった
「「やっぱBのパスタとDのサラダ…は置いといてDのカッペリーニにバルバリー鴨とフォアグラのポワレ パリグーソース添え!!」」
またハモる…それはもう、綺麗に
「「マネすんなっ!マネすんなって言ってるだろ!!」」
ガルルル…という威嚇でさえ綺麗に重なる
双子でも流石に凄いなと、こんな状況でなければ拍手を送りたい所だ、と麗とハルヒの考えもまた一致した
光と馨に引っ張られ、教室を後にし
今日のお昼はゆっくりできなさそうだ…と諦めていたハルヒだが
廊下で救世主を見つけた
麗先輩である
学食のところまで、という言葉をありがたく思ったのがつい先程のことであり…
まぁ、つまり…
「じゃあ…頑張れよハルヒ」
「え“…!!もう言っちゃうんですか!?」
「うん、めんどくさい」
この人は…
少しの安息の時間だったな…と肩を落とす
出来れば、お昼を一緒に…いや、あの2人から逃してもらうだけでもいいのだが
そうチラリと麗先輩を伺うと
「……そんな目で見るな」と哀れみの目を返される
「騒がしいと思えば…あいつらまだやってんのか…部の恥だな」
そんな声が近くから聞こえ、そっちを見ると
おぉ、ホスト部だ
ホスト部の皆さんよ〜♡
…という声とともに、ホスト部の先輩方が勢揃い
そして環先輩方に目を取られた時はもう遅い
麗先輩は、Dクラスの人たちと共に昼食を頼みに行ってしまっていた
…に、逃げ足が早い
「お♡ハルヒどちたのー?学食で会うなんて珍しー」
見つかった。
麗先輩はこれも恐れていたのだろうか…
と頬が引きつった
「いえ、2人に引きずって来られただけです…いつもお弁当なので…」
そう環先輩に返す
本当に…別に学食にこなくたって…と考えていると「ハルヒ、ここ空いてる」と光に呼ばれた
どうやら今日は教室でお弁当はできないらしい
***
ハルヒには悪いが面倒ごとはごめんだと近くから離れた
「おっ、後輩くんはもういいのか?」
和久と宇佐のところに戻ると、和久が丁度
俺たちのランチボックスも一緒に注文したところだった
宇佐がハルヒ達の方をチラッと伺う
「おう…面倒ぐちに巻き込まれへん前に撤退したわ」
「ふーん…てか麗…どうした?そんな制服整えて」
和久が俺の頭から靴の爪先まで、全身を見回し
なんで?という疑問符が頭に浮かんでいる
「ん…ちょっとな、意外と人増えてきたから」
「ん??」
疑問符を浮かべる和久と
へぇ〜と、変にニヤつく宇佐
…宇佐は絶対にわかってるな、コイツ
学食内はどの学年、どのクラスも平等に利用できる
それ故に、部のお客さん達と出会う確率も高いというもの
俺たちは早めに教室を出たから、混雑は避けられ、目立つこともないなと高を括っていたが
一年ズに遭遇というアクシデントにより大幅にタイムロスしてしまったのだ
そして何より…ホスト部員が学食を利用している
これはまずい、本当にヤバい
「…ランチボックスもろたら さっさと教室戻るからな」
そういい、ニヤついている宇佐を軽く睨む
しかし目線を逸らされる
ハァ…とため息をつき、まだできないのかと苛立っていると
「まぁ…!麗様…♡」
「部活以外でお会いできるなんて…!!麗様もランチボックスを?」
背中にかけられた声
気づかれない程度に肩を引くつかせ
ネクタイを締め直し、襟を整え振り返る
その速さ 僅か2秒未満
「あぁ…お姫さん方、ええ日和やね」
完璧な笑顔を取り繕う
…隣の和久が、口をあんぐりと開けてこちらを見ている
宇佐に限っては和久の影に隠れて笑いを堪えている、見えてるからな
「今日は気分でも変えて、ランチボックスにしようかなぁ思てね、お姫さん方も?お揃いやね」
お姫さんの髪を耳にかけてあげると、桃色に染まった頬がよく見えるようになった
「…♡、植物館でお昼をいただこうと思いましたの…もし、よろしければ麗様も…」
「あぁ…素敵なお誘い嬉しなぁ…そやけど、すんまへんなぁ 先約があって…」
もう1人のお姫さんがランチのお誘いをしてくれる
しかし、悪いがお昼を一緒にする事はできないし、しない
一刻も早くこの場から立ち去って、この隣にいる2人を口封じしなければならないのだ
「あ、そうですわね!部の皆さんと…?」
「……んー、ふふ、どうやろね」
含みを持たせた笑みを浮かべ、遠くにいる部活メンバーを見やる
光と馨が何やらまた騒動を起こしたらしい
物の投げ合いに発展している
うん、絶対行かない
「…あ、その魅力的なお誘いは部活の時も有効かな?」
「「え…?」」
「今日の放課後、ランチではおまへんけど、
アフタヌーンティーなんて一緒にどうかなって思て…あかんかな?」
部活中でいいなら、いくらでもお相手させていただこう
そう思っての提案だった
姫たちは顔を見合わせ何かを考えている様だった
…これは、もう一押し
「今日は忙しい?それか、…俺以外の先客がいるんかな?」
姫さん達の顔を覗き込むようにして、最後に一つ微笑む…すると
「い、い いませんわ…!!ご一緒させてください…♡♡」
「麗様のこと…!ご指名させていただきますわ!」
「ふふ…おおきに」
先程より一層顔を赤らめてそんな風に言ってくれる
「今日も、こんな かいらしいお姫さん方とお茶できると思うと、放課後が楽しみやね」
ほぅ…♡と蕩けるお姫さん方
すると、お待たせしました、とランチボックスを渡される
チラと宇佐と和久を見、2人の手にも渡っているのを確認する
2人は昼飯を受け取ると早々に列から離れた
「じゃあ、午後もおきばりや、部活の時に…また」
「は、はい…!!」
「麗さまとのお茶楽しみにしてますわ…♡」
軽く手を振りお姫さん方と別れる
少し先で待っている和久と宇佐に合流し、ようやく肩の荷が降りた
…が
「……ぶふっっ…」
「どつくぞ」
「ん“……ふふ…わり…ぃ…ふはっ!」
宇佐が笑いを押し殺している
和久に関してはこっちを見たまま目を離さない
…ぶつかるぞ、いやいっそぶつかれ
「Cクラの女子がかなり騒いでたから噂には聞いていたけど…ふふ…中々の変わりようだな、早乙女」
「いつもの麗じゃなかった…なんだあれ!キラキラしてたぞ!?」
今すぐにでも2人をぶん殴ってやりたいのだが、いかんせん今は人が多すぎる
今もまだ聞こえてくるのだ
「あっ…!麗くんよ…!」
「きゃあ…!今日も麗しいわぁ…♡」
「学食でお目にかけられるなんて…!!」
…この声のおかげで、俺は目の前の2人を殴りたくても綺麗な笑顔を保たなくちゃいけないのだ
「俺…麗のそんな綺麗な顔初めて見た気がする」
「ぶはっっ!!あぁ、もうダメだ…ふは…!アハハ!!」
和久の至極真面目なその一言に宇佐が限界を超え、抑えることなく笑い始めた
…マジで覚えとけよ、お前ら…
そう思って足早に学食を後にしようとすると
「麗」
聞き馴染みもある声に名前を呼ばれた
振り返るとやはり、と言った奴が立っていた
「ん……、鏡夜?」
こんなところで声をかけてくる事自体珍しい
どうしたと聞き返す
「今日はしっかり部活に来いと伝えにきただけだ、“お迎え”しなくてもな」
「ハァ…小言ばっかり言ってると老けるぞ」
「だったら言わせるな」
わざわざそんなことを言いにきたのか?
と、疑問に思う
だが、電話やメールだとこっちの確認次第でスルーもできるからか、と今までの自分の行動を思い返し納得した
「ま、今日はしっかり行くよ…あ、さっき指名の予約入ったから、最初はフリーで」
「あぁ…わかっt」
「あ、コイツが麗がよく言ってる怖いメガネ?」
急に入ってくる和久
そして、とんでもない爆弾を落としていった
「…メガネ…?」
「おい、和久」
「麗のことが大好きな怖いメガネの副部長だろ?え…違った?」
死んだ。
「…ほぉ…?麗が大好き、ねぇ」
「早く食べないと飯が冷めるから早く行こう、じゃあまた部活でな鏡夜」
和久を止めようとしたが、時すでに遅し…
コイツを止めたい時は口を塞がせるしかないようだと学んだことを脳に仕舞い込み
早々に会話を切り上げ背を向け、2人を押しながらその場を離れる
学食から一目散に逃げ、自分達の教室に着くと一気に脱力する
「っっはーーーーー……和久、お前まじで殺す」
「え!?なんで!?」
「お前の部活人格も笑ったけど、副部長サンとのご対面も中々笑えたな」
なんでじゃないだろ、なんでじゃ
お前が落としたのは疑問なんかじゃない、爆弾だったんだよ…
「てか、よく分かったな、和久」
「いやだってそりゃわかるでしょ、俺らが学食抜ける時からずっとこっち見てたし、近づいてきたと思ったら急に麗呼び止めるし」
宇佐が和久に話を振りながらランチボックスを開け始める
和久も話しながら飯を食べ始める
…ん?和久の言葉に違和感を覚える
「いや、それだけで」
「麗のことが“大好き”なんだなって」
俺の言葉を遮り、素晴らしい笑顔を見せる和久
…ケチャップがその笑顔台無しにしてるぞ
「”副部長“ってより、”早乙女が大好きなメガネ“って気づいたわけか」
「だってフツーさ、あんだけの要件だったらメールとか電話で十分じゃない?それをわざわざ言いに来るなんて麗が大好きなメガネしか当てはまらないでしょ」
なるほど…
そう思ったが、うちの部活の奴らは俺を見かけたら寄ってくるような人ばかりだからな
なんて、深く考えずにこちらも食べ始める
…人の金で食う飯、最高
…それにしても、昼間のあの光景
双子のケンカ…ねぇ
ピンク頭とブルー頭を思い出し、面白いこと考えるなぁ…なんて
顔に出そうなニヤケをランチと一緒に喉奥に流し込んだ