6*閑話 [ご機嫌/ハニー先輩のうさちゃん]
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「あぁ!麗さま…!!」
「今日も素敵ですわ〜♡♡」
「今日はお化粧もしてますのね…!!」
「あぁ、本当はファンデーションだけの予定やったんけど、双子に遊ばれてしまってね」
似合うかいな?と微笑むと
「「「はい…♡♡♡」」」
目をハートにさせたお客さんが元気に返事をする
「ははっ…おおきに」
それに照れたように首を傾げる麗さん…
あぁ…
「「やっぱりすごいな、あの変わりよう」」
もしや二重人格?と疑ってしまう
「ほら環、お前も指名が入ってるんだ、さっさといけ」
「う、うむ…」
鏡夜先輩の一言で、僕らと一緒に麗さんを観察していた殿が接客に向かう
あーあ…寂しそうな背中だなぁ
それに、ふらふらとした足取りが危なっかしい
「…きょーや先輩さぁ、言わなくて言い訳?」
「殿、麗さんに嫌われてるって勘違いしたままだよ?」
「何故俺がそれを環に教えなきゃいけないんだ?」
「「だってさぁ〜」」
接客に行った殿を見てみるとわかる…
あからさまにポンコツだ
上の空で、辿々しい
「……はぁ、しょうがないな」
鏡夜先輩もそれを確認すると、ため息をつき、麗さんの方に向かっていく
…え???
光と顔を見合わせる
***
「麗」
「んん?鏡夜?」
どうした、と返す
接客中に話しかけてくるのは珍しなぁ…
なんて、部内特有のはんなり口調で言葉を紡ぎ
次の言葉を待った
「指名だ」
「誰と?」
急な指名は誰かとペアになることが多いため
即座に聞き返す
すると、こちらの言葉にチラッと視線を動かす鏡夜
その視線を辿ると、姫たちに心配されながら
呆ける環が視界に入った
…あれは呆けてるってもんじゃないな、無気力という言葉の通りだ
視線を鏡夜に戻すと
”なんとかしろ“と目で訴えられた
なるほどな、と周りに気づかれないほど小さいため息をつく
「じゃ、お姫さん方、ちょいと行ってきますね?」
***
俺は、俺は…
自分の頭の中で何度も繰り返す
麗に嫌われてしまっただろうか
いや、嫌われたに決まっている
友達を疑った挙句、殴ろうとした…
そして麗の頬を殴ってしまった…
結局、しっかり謝れてもいないし…
はぁ…と、何度目かわからないため息をつく
俺はこのままこれからの日々をどう過ごしていけば良いのだ…
解決策も見つけられずに頭の中をグルグルと回していると
「ふふ…お邪魔してええやろか」
鈴のなるような心地よい声が降ってきた
「麗様…!」
「えぇ…!もちろん!」
「え…!麗…!!?」
姫達が声に出した名前に目を見開き
声の方向に身体を向ける
「環とペアで指名なんて、久しぶりやなぁ?」
そこにいたのは、やはり麗本人で
昼に見た時とは全く違う雰囲気、笑顔を纏っている
「え、あ…麗、その…」
「どうした?お姫さんたちの前でそないな不安そうな顔…お前に似合わないな」
「…!!麗、本当に、この前はすまなっ」
作られた笑顔でもない…優しいその眼差しに
ずっと言えずじまいだった言葉を言おうとすれば、唇に人差し指があてがわれた
「…環、もう俺の顔に傷一つついてないんだけど」
「……あぁ」
頬に視線を移すが、あの赤みを思い出してしまって視線を逸らす
「ダメ…ちゃんと確認して…?」
はんなりしている京言葉を取り払った、標準語で話す麗からは真剣な視線が送られる
手をすくわれ、麗の頬にあてがわれる
自分の手を追うように、目でも麗の頬をしっかりと捉えた
「…もう、痛くないのか?」
「あぁ」
「…本当か?」
「ほんまに」
「……すまなかった」
「ん、わかった」
だからもうその顔はおしまい
と、今度は俺の頬が麗に撫でられる
こちらの目をしっかりと見つめ、ふんわりと笑う麗の美しさと言ったら…
「うっうぅ…!!麗〜〜〜!!!」
嬉しさやら申し訳なさやらでいっぱいいっぱいになり麗に抱きつく
「ぅわわ…っ!!」
その反動で麗はバランスを崩し、ソファに押し倒す形となるが環はそれに気づかない
姫たちの嬉しそうな声が聞こえたがそれの意味を理解できないほど、今は麗で頭の中がいっぱいだった
麗っ…麗〜〜!!とぎゅうぎゅうに抱きしめる
「っ…!環、落ち着け…ふ、くが…」
捲れる…!と言った声も耳に届かない
「!!麗様の御衣装が、捲れて…!」
「まぁ…!!綺麗な肌…!」
「艶やかねぇ…♡環様が抱きつかれてしまうのもわかるわぁ〜」
その様子を見て堪能する姫たちとそれに気づかないキング、己の状態に恥ずかしさを覚える部員一人
まるででかい犬にでも懐かれているようだと、周りから温かい視線を集める
「麗〜〜っっっい”っ!!!」
スパーンといい音がしたと同時に後頭部に痛みが走る
その痛みの原因を探すと
「き、きょうや…?」
「もう勘弁してやれ」
「へ?」
どういうことだ…?と疑問符を浮かべると
鏡夜がフイっと視線を流す
それを追いかけその方を向くと
「っは、はぁ……ふ……」
目をうっすら潤わせ、少し顔を赤らめた麗の姿
思えば自分は、麗の上に馬乗りの状態じゃないかと
冷静を取り戻してきた頭は、次から次へと今の状況を分析していく
「!!?!!?!?」
状況を理解していくごとに、顔が赤くなりそうな情報が脳をパンクさせた
「…っ環、…お前、暴走しすぎ」
「わ、わわ!、悪い麗っ…!!」
体勢もそのままで、狼狽るが
今起こすからな…!と
麗の身体を起こそうと手を伸ばすと
「ふ、ぅあっ…!」
麗の脇腹…衣装が捲れ上がった無防備なそこを撫でてしまった
途端に出た甘い声
その声に体が固まる、顔に熱が集まるのがわかった
それは麗も同じこと
口を両手で押さえ、フルフルと身体を小さく震わせながら、さらに目を潤ませる
するとそれも束の間
くるり…と、いまだソファに横になったままの麗が身体を回転し、ソファの背もたれと向き合う形になった
「…あ、麗…?」
「環なんか嫌いや」
「んな“っ!?そ、そんな…!麗…!!」
せっかく仲直りできたのに!と麗の肩を揺さぶると
口角を上げた麗の横顔が目に入った
「いい加減にしろ、お前たち、お客様の前だぞ」
「あ…!っす、すまない!」
鏡夜の言葉に慌てて姫達に謝罪すると
姫たちはクスクスと笑ってくれた
今日の接客で、初めてしっかりとお姫様たちを見た気がした
「麗…髪が乱れてる、整えるぞ」
「ん?あぁ、はいな」
鏡夜が麗の身体を起こすのを手伝い、髪を一掬いし、そう言う
麗は相変わらずの綺麗な笑顔で微笑む
「じゃあ、行ってくる」
と席を立つ麗
「……環…?」
その声にハッとする
無意識に麗の手をつかんでしまっていたのだ
まるで行かないでとでも言うように
「あっ…!わ、すまない…」
「ふふ…また戻ってくるさかい、それまで、お姫さんたちのお相手よろしうな?」
掴んだ手はするりと解け、俺の頭をふわりと撫でた
「…あ」
嬉しい…素直にそう思った
鏡夜と控え室に向かう麗の背を見届けながら、部活が終わったら、また話そう
素の状態の麗と
そう決意した
ご機嫌
そして麗が帰ってくるまでの間
麗との関係を根掘り葉掘り聞かれることとなる