6*閑話 [ご機嫌/ハニー先輩のうさちゃん]
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「悪いな、あいつ最近気が立ってるんだ」
「気が立ってるって…」
「そういう問題じゃない気がするんですケド」
「まるで違う…」
宇佐さんの言葉に頬をひくつかせる
思っていたことは同じらしい
僕たちの言葉に続き、殿も賛同する
ハルヒは言葉が出ないのが口が開きっぱなしだ
席にどっかりと座るその姿はホスト部ではみることのできないもので
D組なんだと納得してしまうほど溶け込んでいる
「ってか、お前ら同じ部活だろ?知ってるもんだと思ってた」
まるっきり初耳で初見なんですが?
「機嫌悪いのっていつぐらいからなのだ?」
宇佐さんを廊下に引っ張り出しコソッと聞く
「んー…あぁ、この前の放課後、お前らが外で騒いでた、あの次の日」
からかな…
と考える宇佐さん
その言葉を聞くなり
「や、やっぱり…!!俺が怒らせてしまったんだ…!!」
それで麗は、麗はっ…!!!
顔を青くさせ、狼狽る殿に
あーあ…なんて揶揄う余裕は今はない
「ふーん…ま、原因なんてどうでもいいけど」
わぁわぁ騒ぎ出す僕らを一瞥し、ふ…と、息をつく宇佐さん
だがそれも束の間、次にはニヤリと笑みを浮かべた
「それよりさ、Cクラの女子が騒いでたから少しだけ聞いたことあんだけど、
部活の時のあいつって、そんな性格違うの?」
聞かれる質問
その表情は面白いものを見つけたかのようなもの
「どんな感じで女と話しっっ…ってぇ!!!」
「宇佐、お前煩い…変な詮索もやめれ、…どつくぞ」
ズイズイと前のめりになって聞いてくるその人は、突然脇腹を押さえてうずくまってしまった
疑問符が浮かんだが、宇佐さんが蹲った途端に現れる原因
その原因である人物に、体感温度が下がった気がした…
そう、麗さんである
「……わり」
よほど痛いのか、脇腹を抑え痛みに悶えながら短く謝罪する宇佐さん
その言葉を聞くと、麗さんは僕らの間をスッと通った
「…って、どこ行くんだよ」
「いつもンとこ」
「だっ…!お前な、担任に言われたんじゃねぇの?しっかり授業に参加しろって」
「言われた、けど気が失せた」
聞かれたら知らんとでも言うとけ
そう言い手を軽くひらりと振って、何処かに行く麗さん
「「行っちゃった……」」
僕らには何も言わず、触れず、見ず…
背中を向けて消えた麗さん
「また機嫌損ねちまった…悪いな」
「い、いえ…」
脇腹をさすりながら、宇佐さんがハルヒ達に謝罪をする
「麗は…いつもあんな感じなのか?」
「ん?…まぁ、あそこまで機嫌悪いのは珍しいけど、大体雰囲気とか?はあんな感じだな」
殿はずっと気になっていたのであろう事を聞く
その回答はあまりにもあっさりで、簡単なものだった
…そして、また僕らは自分たちの耳を疑うことになる
「あいつ、このクラスのボスだしな」
***
「「っはーーー…全然わからない」」
「そうだね…」
僕らとハルヒで頭を抱える
さっきからずっとだ
その原因の人はまだ部活に登場もしていない
また遅刻か…それでないなら…
「麗さん、部活来ないのかな…」
「これじゃ話もできないよねー」
入り口の方をずっと見ていても人影は現れない
ハァ…と重い溜息が無意識に溢れた
そのため息を聞いたからか
「ちゃんと来させるさ、心配しなくとも…だから」
鏡夜先輩が話しかけてきた
いつものようにノートに何かを書きこみながら、腕時計で時間を確認する
「そろそろ部室にきのこ生やすのやめろ」
鏡夜先輩がそう言った先にある背中…
部室の隅でキノコ栽培に勤しむ殿だ
きっとお客さんが見たら引くんじゃないかっていうほどジメジメしている…
「麗…麗っ…うぅう…」
「ハァ…なんなんだこいつは」
「鏡夜先輩の言った通り2-Dに行ったんだよ」
「今日の昼休みにね」
殿のフォローの気なんか全然ないけど、殿が“ああ”なった原因を教えてあげようと声を出す
「あぁ、どうだった?」
「「全然別人じゃん」」
「そのギャップのおかげでCクラスのお客も増えたんだ」
僕らの言葉に、にっこりとした黒い笑みを浮かべる鏡夜先輩
清々しいほどの笑顔、もはや恐怖でしかない…
光と一緒に身を縮こませていると
「遅いぞ、麗」
鏡夜先輩が僕らの後ろに声をかけた
呼ばれた名前に、びくっと肩が上がる
そうだよ!!麗さんからちゃんと聞かなきゃ!!
D組ではきっと、強がってたに違いない…!
それになんで、あんな冷たい態度だったの…か……え……?
え“ぇえぇええ!!?!?!!?
「麗さ…!?」
「どうしたのさ…!その怪我!」
振り向いてまず目に飛び込んできたのは
『赤』
麗さんの白い肌に…特に頬と手の甲にべったりと赤がこびりついている
「ほ、保健室…!」
ハルヒが慌ててその腕をとろうとすると
ハルヒの手が触れる前に麗さんが軽く手を上げそれを止める
「そん必要はない、汚れるから弄うな…
今日はなんか衣装ある?」
心配そうなハルヒにそういうと、ハルヒから鏡夜先輩に視線を移す
「今日は中華テイストのものだな、奥に用意してある」
「OK、着替えてくる」
「光、馨、髪のセットを頼む」
「え…あ、うん」「任せてよ…」
控室にさっさと歩いていく麗さん
鏡夜先輩から頼まれた髪のセットは、きっと麗さんのだろう
光と顔を見合わせて、僕らも麗さんの背中を追い、控室へと急ぐ
僕らが控室に入っても、麗さんはこちらを気にせず、さっさと服を脱いでく
……あれ?
「「麗さん、怪我してない」」
「あぁ、他んやつの」
だから早く着替えたかったんだ
そう言葉を続ける麗さんにやはり疑問が浮かぶ
「でも、どうしたのさ」「そんな他の人の血ぃつけて」
「…」
肌についた血を洗い流し、消毒も丁寧に行う
赤から解放されたその肌は、いつもより白く感じた
ようやく着替え終わった麗さんは
いつも通り色香を纏っている
…うわ、めちゃくちゃ綺麗じゃん
麗さんの衣装はメンズ用のチャイナ服のはず…
女性ものじゃないくせに、なんでこんな色気が…?
…今日は麗さんに悩まされてばっかりだ
ぶんぶんと頭を振り、邪な考えを振り払う
そして、麗さんが鏡の前に座ったのを見て、そそくさと櫛を持って平気なフリをした
さら…と流れる髪を梳く
…相変わらずいい髪質
光とどうしようか、なんて話をしながら髪のセットを進めていると
「…麗、そろそろいい加減にしろよ」
「何が」
「環のことだ、ジメジメして鬱陶しい」
早く仲直りでもなんでもしろ、と
不機嫌な鏡夜先輩が控室に顔を出し、隣に並ぶ
「別に喧嘩はしてへん」
まだジメジメしてるのか…殿は…
でも、それほどショックだったんだな
鏡夜先輩にもピシャリと言ったように言葉を返す麗さん
…喧嘩じゃない?なら…それなら
「……じゃあ、なんであんなに冷たいのさ」
「…光?」
テキパキ動いていた光がピタッと手を止めた
その代わりに動いたのは口
「なんであんな突き放すこと言うんだよ、麗さん」
鏡越しに視線が交わる
だが実際交わっているのは光と麗さんで
僕はそれをおどおどしながら交互に見るだけだ
「……はぁ」
麗さんの重みのあるため息に肩がびくつく
それは光も同じようだった
麗さんは、少し考えた後…
諦めたというような雰囲気で話し始めた
「…こん前のれんげ嬢の一件で、俺が実は女子やって噂が出回ってる」
「え“…」
「最初は『D組のおねーさま』なんて形で出回っとったが、そないなのおらんとなった矛先がこれだよ」
「…それで機嫌が悪かったと」
鏡夜先輩がバインダーをトントンと指で叩きながら視線を向けてくる
…その視線の先は麗さん
「具体的に言えばこの後だ、
俺と環が付き合っとるって言うデマが流れた」
ん…???
「…付き合ってるって言うと…」「やっぱり」
「恋仲として、の付き合ってる」
「「だよね」」
「部のお嬢たちに言われるんならまだええ、やけど、男どもに噂されるのはええ気がせん」
まさかそんな噂が出回っているとは…
疲れた、というような麗さん
きっと噂が大きくならないように、ずっと抑えていたのだろう
「根も歯もない噂だけど、面白がる奴は多い」
そんな噂が広まってんのに環がうちのクラスにきたら、噂が本物だって言ってるようなもんだろ
そう不貞腐れながら言う麗さんに
昼間に感じた怖さは微塵も残っていなかった
「「だから…」」
「…俺は別に何言われてもええし、どうだってええが、それに友達を巻き込むんはかなん」
「…なるほど、じゃあさっきの血は要するに」
「噂流して面白がってる奴どついてきた」
淡々と言ってのけるその姿に、Dクラスの麗さんが記憶から顔を出した
あぁ…部活中の麗さんに早く会いたい
「喧嘩はやめろと言っただろ」
「ハッ、出たよお母さん、別に怪我してないんだから良いだろ」
髪のセットを終え、二人の先輩の口喧嘩を流しながら片付けをしていると
「あ、化粧も頼んでええか?」
そう声をかけられる
鏡越しではなく顔が見える位置に移動すると
麗さんが頬のガーゼを剥がした
隠されていたところは少し赤い程度
「これ、隠してくれ」
そろそろガーゼウザくなってきたのか、剥がしたガーゼは丸めてポケットに押し込む麗さん
光と顔を見合わせると
ふふ…と笑みが溢れた
「どうせならアイシャドウも入れない?」
「目尻にアイラインもどうよ」
「あんまり厚くするなよ、清楚なイメージ崩したくない」
「「はーい!」」
メイクを始めようとすると、目を閉じる
うっわ…まつげ長…
これは腕がなるな…!
なんて光とウキウキしながらメイクボックスを開いた