5*女子マネージャー襲来
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「きゃあーー!!さすが常陸院様…!桜蘭のエース!!」
歓声が響くそこは、体育館…
目の前にはバスケの試合が行われている
今、桜蘭学院の選手が、華麗なシュートを決めたのだ
「今決めたのは光くん?馨くん?」
「どっちでもいいわどっちも素敵!」
観客たちは黄色い声を上げ、選手を応援する
「馨くんタオルを…」
そのゴールを決めた選手に
1人の女子が駆け寄っていった
「…僕は光だけど」
「ごっごめんなさ…」
「別にいい 慣れてるから」
表情は暗い…だが突如鳴り響いた
ピーーーッ…と言う音に顔色が変わる
視線を向けた先には
「馨!!」
「担架を!すぐに医務室へ…!!」
「馨…っ」
駆け寄った選手と瓜二つなもう1人の選手
馨と呼ばれた選手は、光と呼ばれる選手の顔に手を添え、語りかける…
「光 落ち着くんだ、僕の痛みを感じとっちゃいけない…、いいな?怪我してるのはお前じゃない…」
「馨…無理だ…痛い、痛いよ 馨…」
お前の痛みは僕の痛み
誰に理解されなくてもいい
僕らはお互いさえいれば生きていけるから....
「…君達が羨ましいな…」
雨は、降り続いている
「そんな風に支え合える相手がいて…」
「須王先輩…」
「でも須王先輩は学院のアイドルで…」
「アイドル…か、そんなうわべだけの称号でもてはやされるくらいなら」
「きっと一人の方がマシだ....」
降り頻る雨の中…1人たたずむその姿は哀愁に満ちている…
傷ついた心と心が交差する
「…手紙、くれたのは君…?」
そわそわと落ち着かない背中に声をかける…
「え、あ…そうです…」
「………何?」
ふっ…と無理やりな笑顔
だがそれには気付かれない…気付かれないようにしているのである
「……っ!ぼ、僕…!あなたの事が好きに、なってしまいました」
それを聞いた途端、目の前の女子生徒…いや、女子生徒に“見せてる”その彼は
目を見開き、来た道を戻っていく
走る…はしる…
待ってと呼ぶ声が聞こえないところまで…
「はぁ…私は、俺は…どうすればいいんだ…
こんな気持ちになるくらいなら…いっそ…」
すれ違い 傷つけ合う 少年達の心の闇とは…?
ドシャ…と雨音の中に聞こえた水音
その音を出した本人は泥と傷に塗れ、汚れている…
「もう逃げられないよ 貧乏人、僕に逆らうとどうなるかよく覚えておくんだね」
「…!」
行き止まりで絶望する中、かけられる言葉はとても冷ややかだ
「…よせ…光邦」
やがて彼等を待つ結末とは 救いの光か
「人を傷つける度苦しむのは結局お前自身....」
「僕に意見するな崇、またお仕置きされたいのか」
ーそれともー…
「僕は見分不相応な奴が大嫌いなんだよ」
....。
「わぁあん!ハルちゃんごめんねぇ~」
「カーット!!!そこ!!台本通りやれェ!!!」
カット!カァーーーーット!!!
…と元気な声があたりに響く
だってぇ…と泣きべそをかきながら言うハニー先輩はいつも通り
先ほどの鬼畜姿は微塵も考えられない…
「何度言えばわかるんですの!?
第一、棒読みもいいとこですわ!カメラ!一旦止めて!雨!もっと切なげに!」
ハニー先輩だけに留まらず、カメラマンや雨の係にも指示を出し始めるマネージャー…
「ハリウッドから急遽呼んだらしいな」
「ハァ…そもそもキャラ改革からいつの間に短編映画撮影会に…」
まさか実写版「うき☆メモ」…!?
…なんて今更気付いても、時すでに遅し…
いや、遅すぎるのだ…
…そう、もう後戻りできないほど、不機嫌な人が、そこにいるのだ…
「……ねぇ、そろそろ誰か話しかけてよ」
「あの女帝にさぁ」
視線の先には
女装姿のままイライラする麗さん
足を組み、つま先をパタパタと動かす姿から、もう着替えたいのだろうなと推測できる…
……あ、今小さく舌打ちしたな
「…でも、やっぱりレーちゃん、かわいいねぇ〜♡」
「違和感がまるでありませんね」
「「特注ウィッグもぴったりだしね」」
「う“るせぇ…聞こえてるぞ」
ハニー先輩、鏡夜先輩、自分たちの言葉に、しっかり反応を示す麗さん…
イライラしすぎているせいか、喉からです声は低く、ドスが効いている
「どうせなら普通の女子制服着ればよかったのに〜」
麗さんの髪(ウィッグだが)を弄りながら、そんなことを言う光…
「うっせぇ…!あんなひらひらふわふわしたの着られるかっ!!」
麗さんは今、黄色いワンピースタイプの制服…ではなく
男子生徒のワイシャツ、ネクタイ、ブレザーに…黒のスカートを合わせて履いている
一回無理やり女子生徒用のを着せてみたのだ
結論を言うと、めちゃくちゃ似合っていた
…いや、その辺の女子よりも綺麗すぎてビックリしたぐらいだ
しかし、僕たちが綺麗だと思っても、本人はそうはいかなかったみたいで…
鏡で見た後の「勘弁してくれ…」と喉奥から絞られた声があまりにも酷く、可哀想だった為、このようなスタイルになった…
「別に普通の女子生徒制服でも可愛かったよ?」
「そうそう…ちょっと凛々しい、お姉様キャラって感じ」
「それれんげ嬢の前で言ったらぶっ殺す」
いつもはんなりした京言葉で話す麗さんからは想像もできない物騒な物言いに、背中にヒヤリとしたものが走った
これ以上は獅子が…いや鬼が出る…
ふと、周りが静かだなと感じ、見回すと、光と鏡夜先輩がれんげちゃんのところに映像の確認に行っていた
…あ、僕も
そう立とうとすると、腕を掴まれた
もちろんその相手は麗さん…
「ん…馨、それ履かないのか?」
「長ズボン?うん」
「じゃあそれ貸してくれ…足がスースーしてかなわん」
内腿をさするその姿は嫌に煽情的…っていやいや、違うでしょ…麗さんは男で…って
アレ…?
「…麗さんさ?」
「ん?」
「僕が馨だってわかるの?」
「何当たり前のこと言ってんだ?」
「え、だって僕ら」
双子なんだケド…と続けようとした言葉は
あっという間に飲まれてしまった
「双子だから何なんだよ…俺はしっかり見ればお前らの見分けぐらいつく」
「え…」
こちらが動揺しているっていうのに
麗さんときたら、僕のズボンを自分にあてがい、サイズを確かめている
「…しっかり見ればって、どうしっかり見るのさ」
少し納得がいかなかったので、吐き捨てたようにそういうと
「ん?そうだな…目かな」
「目?」
「目を見ればわかる…うん」
そんなことを言い、目を覗き込んでくる麗さん
頬に添えられた手から、程よく暖かい体温が伝わる
う…わっ…!!めっちゃまつげ長…
見られているのはこちらのはずなのに
あまりにも近い麗さんの顔に、僕も見惚れてしまっていた
肌が綺麗だ…
それは麗さんに化粧を施した時も思っていた
キメの細かい、白い肌…
薄く紅をさしたが…その行為すらいらないほど綺麗な桜色の唇
思わずドキドキしてしまうほど、整ったその顔に、こちらの顔が赤くなる
「…麗さん…近ぃ…」
「あ、ごめん」
声を絞り出し、伝えると
当の本人はあっさりと離れていった
うん、やっぱり馨だ…目の奥が、優しい
離れてから、告げられた言葉に
顔の熱を冷ます時間が延びたのは言うまでもない