4*身体検査にご用心
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「ハルヒー!待ったかにゃ?…どうした?うかない顔して…」
「だって…だってなんだか、みんなが私を見てるんですもの…」
清々しい青空の下、これまた清々しい男女が1組…
これは環とハルヒだろうか
ハルヒは女生徒の制服に身を包み、どこかおしとやかな雰囲気を纏っている
「ハルヒ、困っちゃう」
「ハルヒが可愛いから見てるんだよ…大丈夫、お前は必ず…俺が守るから…」
「先輩が…そう言ってくれるなら…ハルヒ、それでいい」
うふふ…あはは…
そんな音声まで聞こえるほどの脳内劇場に
それを上映している環は小さな声で「イイ…!」と呟いている
その顔面は幸せそうでもあるが、それと同様に、とんだアホ面である…
「…あんさ、環の妄想が激しすぎて、現実と妄想がごっちゃになるから、もう上映中止してくれへん?ってかいつまでやってんだよ…」
残念だが、その上映需要はお前しかいないぞ…
「楽しそうだねぇ!タマちゃん〜!」
「むしろ哀れに見えるけど…」
全くだ…昨日の「ハルヒが女だとバレてしまう」と言う話をした時から、ずっとこれである
一日経ったと言うのに、脳内は相変わらず興奮状態なのだろう
「僻むな光…!全ては計算通り…お前ら如きに嫉妬せずとも、最初から結果は見えていたのだ…!」
「僻んでいたのはお前では」
「そうとも!!そもそもこれは学園ラブコメディ…そして俺とハルヒは、どうみてもラブコメ要員!!」
…今のはわざと聞かないフリをしたな?
「「じゃあ僕らは?」」
「もちろんっ!脇役のホモホモ要員だ」
ホモホモ…要員…?
ふと辺りを見回す…
「…消去法でいくと俺の相手はお前か…?鏡夜」
「……何か不満でも?」
「むしろそれしかない」
「ほぉ…あとでじっくり聞かせてもらおうか、麗?」
ファイルをパタン、と、音が出るように閉じ、綺麗な笑顔を向けてくる鏡夜
や、やだなー…青筋、出てるよ?
「だからこの線から入ってこないように」
そう言いながら、棒で床に境界線を引き始める環
「「なんかムカつくー」」
「激しく同意やな」
「てゆーかさぁ…」「わかってんの?殿」
双子に同調し、ついでに現実を突きつけてやろうではないか…
「ハルちゃんが女の子ってバレたら…ホスト部にはいらんなくなっちゃうよね?」
「え」
「でも!ハルちゃん、女の子の格好したら…もっともーっと可愛いよねっ!」
「中学の時は、普通に女の子の格好してたから、男にモテモテだったんじゃない?」
「…あぁ、調査報告によれば、ほぼ月に1度、誰かに告白されているな」
「あーあ、こりゃ殿なんか近づけなくなっちゃうねぇ」
「ま、僕らは同じクラスだからいいけど」
「あ」
次々と出てくるこれからの予想図
「…それに、モテるんやから当然できるやろうなぁ…彼氏も」
「そんなっっ!!」
やっと、事の重大さを理解したのか
涙目でうんうんと唸る環…
まぁホスト部にいるからと言って恋人を作っちゃいけない、なんてことはないだろうが
ハルヒを可愛がっている環からすれば、ダメージは大きいだろう
「すいません…遅れてしまって…」
ちょうど良いタイミングでハルヒが部室に到着し、扉から顔を覗かせた
「案ずるな!ハルヒ!!明日の身体検査…お前が女の子であるという秘密は俺たちが必ず守る…!だから…俺たちだけのお姫様でいて下さいっ!!」
「はい…?」
急になんだとでも言いたげなハルヒがこちらを見遣る
…いや、俺もそいつについて行けてないから、説明を求める視線をよこさないでおくれ…
「確かに…ハルヒが他の男に言い寄られるのはちょっとシャクに触るなぁ…」
「じゃあ決まりだ!」
その一声で、ガラガラと準備されたホワイトボードに、何かを書き殴る我が部長
ボードマーカーのキャップを閉めたところで
その内容を見る
ーハルヒの性別隠蔽大作戦!
名付けて『ハルちゃんは断じて男の子!作戦』ー
なんとも必死さが滲み出る作戦名である…
「では、隊員諸君…明日の身体検査における、フォーメーションAのポジショニングを、各自、再確認すること!」
「「イエッサー!」」
もうやる気満々になった双子と3年の先輩方
本当にやるのかこの計画…
「…というか、俺、Aクラス組じゃないから保健室、皆と違うんだけど?」
俺が知る限り、桜蘭の保健室は3つある
Aクラス用保健室、BCクラス用保健室
そして…Dクラス用保健室だ…
多分そんな決まりはないが…暗黙の了解でそんな区別になっていることを俺は知っている
身体検査も、各保健室に移動し、行われるのだ
…因みに、俺がいつもサボりで使っている保健室はAクラス用
Dクラスの方は、他の奴らでうるさいし
保険医も、何か荒らされるんじゃないか等とビクビクしてるから居心地が悪いのだ
「じゃあ先生に許可をとってこい」
「いや、逆になんていうんだよ…部活ですーって?身体検査なのに?」
「そうだな」
む…投げやりだな、コイツ…
先ほどのホモホモ要員の相方が嫌だと言ったのをまだ怒っているのか…?
「そっか!…バレるとホスト続けられないから…借金の返済できなくなりますね…」
手をぽん…と打ち、今の現状を理解し
「残高533万3332円……ま、なんか別の方法でも考えるか」
あっはっはっは〜と、朗らかに笑うハルヒ
ホスト部に思い入れがまるでない…
いや執着するような子でもないけどさ
「「隊長…!!本人にまるでやる気がありません…!!」」
「んぅう…なんて協調性のないヒロインなんだ…!!」
今回ばかりは環に同意と同情をしてしまう
「そんなにホストが嫌いかっ!この部が嫌か…!!」
「まぁ、どっちかって言うとそうです」
まぁ、ハルヒ側からすれば正論だろうとこ取れる物言いで、環をバッサリと切る
それをうけた環はというと、お察しの通り…
部室の端で黒い影を背負って体育座りだ
「まぁ、さすがに女の子だってバレたら、もうしょうがないですよ」
「なんたるモチベーションの低さ…」
「まず解決すべきは、このハルヒのやる気のなさだな…」
部員がどうしようかと悩み始めた時
ボソリと聞こえた声
「…大トロ」
声の持ち主はモリ先輩…
その言葉が意味するものに、部員全員に稲妻が走る
「そうか…前回のダンスパーティーでは、食べ損ねたもんなぁ?」
「ご存知ぃ?あちら大トロ召し上がったことないんですってぇ」
「まぁ…お寒いお育ちですことぉ」
「この部にいれば、これからいっくらでも、美味しいもの、食べる機会があるのにね?」
「そうどすなぁ、もしかしてたら…大トロよりも美味しいもんに出会えるかもしれへんのになぁ」
言いながら、ニヤリとハルヒを見る
「な、何言ってるんですか…いくら貧乏だからって…そんな、大トロが食べられるくらいで、性別誤魔化し続けるだなんて…そんなに食い意地が張ってるわけ…」
苦しい笑いまじりに必死に否定するハルヒ
しかし本能には抗えないということか
「本当に食べられるんですか…?」
折れたのはハルヒの方だった