3*高校生ホストのお仕事
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さて、どういうことだ
「不器用カップルに祝福あれっ…!!」
踊り疲れて壁の花を決め込んでいたんだが…
「「はーい麗さん確保〜」」
両腕を掴まれ引きずられる形でバルコニーに連れ出される
「あんたらに優しさはないんか?俺一人でお姫さんの相手をさせられて…あいよが棒んようなんやけど…」
「ごめんって」
「これからラストダンスだからさー」
「…もぉ、今日は絶っ対、踊らへんからな」
そういうと、はいはいー、と、なんとも適当な返事が返ってきた
外に出るとスポットライトに照らされる二つの影…
春日姫とその許婚である珠洲島享だ…
あぁ…なるほど
「環の計画はうまくいったってことやな…」
舞い散る桜の中で踊る二人…
とてもロマンチックな情景に、ギャラリーからも拍手が上がる
春日姫の表情は、ホスト部内で見てきた笑顔より、一層幸せそうで
「よかったですね、春日崎さん…」
隣に並んだハルヒが呟く
「あぁ、そうやね…」
視線を二人へ戻すと、ちょうどダンスが終わりを告げる
「本日のダンスクイーンは!」
「春日崎奏子姫に決定しました!」
先ほどよりも激しい拍手の雨
「それでは!祝福のキスをキングより…」
「出番か…」
「…を変更して、藤岡ハルヒから!」
「え“っ」
唐突のサプライズ
ハルヒと環が驚き、慌てふためいている
「鏡夜か…?」
「ラストにはアクシデントがあった方が面白いだろ?」
「…後輩で遊ぶなよ」
溜息まじりで言葉を落とすのは自分だけではないようだ
「そりゃ…いくらなんでも…」
「借金1/3カット」
「う”っ…まぁ、ほっぺくらいなら」
「…意外と潔いんやなぁ、ハルヒ…」
決心をし、春日姫の元へ足を向かわせるハルヒ
「ねーねー!もしかしてハルちゃん、ファーストキスなんじゃ?」
「多分、というか絶対そうおすやろなぁ…」
まぁでも、ほっぺだし…カウントされないんじゃ?と口に出そうとしたその時
「そのキス、まったぁ!!」
元気よく飛び出したキングことお父さん
「あ」
間抜けな声
それはそうだろう…
止めようとした事で、ハルヒの背中を押してしまい…結局…
「んぅっ!」
ほっぺどころか
「あらら…マウス・ツー・マウス法みたいやねぇ?」
***
「「いやー、本当にアクシデントが起こるなんてね?」」
ねー?殿〜?…なんて、環を茶化す双子
環はというと
どす黒い闇を背負って部室の端の方で体育座りしている
みんな制服に着替え終わっているというのに、環だけはスーツのままだ
ふぅ…と一息つき
ぶつぶつと何かを呟きながら床にのの字を書く環に近づく
「麗…?」
「そない落ち込むなよ
…俺にはちゃんと、ハルヒを止めようとしとるように見えたぞ?」
「…っ!!麗っ、麗〜〜!!」
慰めればいとも簡単に顔色が戻り
涙を溜めたまま抱きついてこようとする環
「環、やめとけ」
そしてそれをギリギリのところで止める鏡夜
そのおかげで、今度は俺と環がマウス・ツー・マウスになるのを防げたのだが…
「何をするのだ鏡夜…!!俺はっ、俺は麗にこの感謝の気持ちを表そうとっ…!」
「環、うるさい」
「……わん」
すっかり元気(?)になった環を見て、相変わらず素直なやつだな、と笑みを零す
「じゃ、俺は帰るわ…迎えきたみたいやし」
「あ、あぁ…麗、ありがとう…」
「…ふふっ、どういたしまして」
しっかり礼を言うところは、健気だなと思う
そこが可愛らしいなとも…
「麗、明日は遅刻するなよ?」
「ん、気分次第やな…あ、ハルヒ」
帰り際、鏡夜が話しかけてくる
釘を刺してくる内容も、視線も嫌になり、話題をすぐに変える
「…?はい?」
「どうせなら乗ってくか?…よう外も暗いし、男子制服着てても女の子やし…家まで送ってく」
「え…」
「どないしはる?」
気は使わなくていい、とだけ最後に付け加えると
「…あの、じゃあ…ご迷惑でなければ」
「おう、じゃあ行くか」
「「あ、僕らも迎えきたから一緒に行くー」」
双子もちょうどよく迎えがきたらしい
さいなら〜、と部室に残る環、鏡夜、先輩方に軽く挨拶し、一年ズを連れ部室を後にする
「「やっぱり、ハルヒに優しいよな、麗さん」」
「また、言うてるのか、それ…」
「また?」
双子の問いかけにうんざりしてるとハルヒが聞いてくる
「麗さんはハルヒに優しいって話!」
「家まで送ってあげるなんてさー」
「いや…こないな暗い夜道を、一人で帰させるわけにはいかんでしょ…」
「本当、お気遣いありがとうございます…」
ギャーギャーいう双子をかわしつつ、二人の言うことは別に気にせんでええよとハルヒを促す
正面玄関まで着くと、馴染みのある黒塗りの車と、常陸院の車が止まっていた
「俺ん車はこっちな」
ハルヒに指差して車を教え、足を向わせると
「麗…!!お帰りなさい!……?」
「おう、あ…今日後輩乗せてくから」
車から降りてきたのは俺の付き人
ハルヒをじぃ…と見つめながら後部座席のドアを開ける
「「……もさ、前のハルヒみたい…」」
後ろから小さく聞こえた言葉
まぁ2人の言うこともわかるからこの際黙っておこう…
ただこの前髪は切っても切ってもこうなるのだからしょうがない…
元々癖っ毛なのだ
「わかった…どうぞ…」
「お、お邪魔します…」
律儀なハルヒを先に乗せ、自分も続けて乗る
するとドアが閉められる
「ほな、また明日」
「「はーい、また明日ね、麗さん」」
窓を開けて、双子に手を振る
「出せ」
「わかった」
いつもより発進が緩やかな気がした
多分それは、ハルヒを乗せているから
俺以外にも気を使えるようになった、可愛いペットに緩い笑みが溢れた…
「ハルヒ、家までん道案内やけ、よろしうな」
「はい、あ…次の突き当たりを右で…」
「わかった」
スムーズに進んで行く車…窓から見える道は、人の足が少なく、やっぱり乗せて正解だったなと1人思った