5*女子マネージャー襲来
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「環くん…環くんは、何故そんなにお美しいの…?」
「1秒でも長く、君の目に留まりたいからさ…」
「何故そんな艶のあるお声なの…」
「僕の思いが、君の心まで届くように…」
「何故そんな濡れた瞳で…私を…?」
「瑞々しい君の笑顔が…僕の心の泉を、溢れさせるからさ」
「「「環様…!!」」」
今日も今日とて…
超金持ち学校、桜蘭学院高等部に君臨する最高級のお遊戯
その名もホスト部…
蝶の様に華やかに舞い集う女生徒客
そして、大輪の蘭のごとく
匂い立つほどに見目麗しい美男の園が
今ここに花開いておりました…
「やっぱり2人はお揃いの着物なのね♡」
その話す声は楽しさを十分に含んでいて
聞いてるだけで、お客さんの笑顔が思い浮かべられるほどだ
「今日のは全員、うちの母がデザインしたヤツだよ
よかったらオーダー承りまーす」
「着付けたのは祖母だけどねー」
常陸院の双子といえば、お揃いの着物を華麗に着こなし
「勿論、脱がせるのは俺の役目だよな、馨…?」
「光…!!恥ずかしいよ、皆の前で…っ」
いつも通り、その場に花を咲かせている…
きゃああ♡と響く方角を見ると、異様に距離が近い2人の姿
…またバカやってる
頬が引き攣るのももう慣れた
軽くため息をつき、双子と客の様子を眺めていると
「ハルヒくん…!着物姿もかわいいのね」
「まるで女の子みたい…!」
女の子たちから、そう声をかけられる
「はぁ…」
「ハルヒ、ご指名どす」
「麗先輩…と、鏡夜先輩…」
女の子たちと一緒に登場したのは2年の先輩方
…麗先輩、流石…
そう思ってしまう程、今日の衣装が似合っている…一瞬見惚れてしまった
「最近は接客もだいぶ安定してきたじゃないか…その調子だ」
「ハルヒは頑張り屋はんやもんなぁ?」
「…ま、本来つくべき借金の利子まで請求するつもりはないから、頑張って稼いでくれよ?
その着物のレンタル代だって、バカにならないんだからね?」
悪代官か、この人は…
心の中で悪態をつく…
天使のような笑みの麗先輩と、悪代官のような鏡夜先輩…
鏡夜先輩の隣に笑顔で立ってられるのは、麗先輩ぐらいなものだ
「鏡夜様、麗様…♡」
「お2人共…その着物姿も堪りませんわ…!」
「ホスト部の新しい写真集は、まだ出ませんの…?」
そう声をかけてきたお客さんは、確かこの間、写真集をフルセットでお買い上げしていた…
そう記憶を蘇らせる
「残念ながら、今のところ予定は…」
鏡夜先輩がそういうと、少し残念そうな顔を見せるお客さん
「麗先輩…うちの部はグッズ販売で」
「随分稼いでいるんでしょ?」
「んー…まってな?」
双子からのひそひそ話に耳を傾け、少し苦笑いをする麗先輩
鏡夜先輩のファイルを覗き込むその姿に、自分の後ろから、誰かが嬉しそうな声をあげた
…何故だ
「売り上げはそこそこやね…」
「…あぁ、グッズ自体が弱くてな…
写真集などといっても、素人が隠し撮りしたものだし…学院予算からさらに部費を引き出すためにも…もっと優良な商品開発を実現しなければ…」
「もういっそんこと、俺らで撮っちゃう?
…それか、サイン入りで価値をあげるか…環にポエムでも書かせれば?」
「…需要あるか?」
「まぁ、俺らにはないことは確かやな」
…小声だが、しっかりと聞こえた会話は、利益に貪欲なその姿勢がありありと分かった
この2人だからこそ…この部を破産させずに運営できてるんだなぁ
ははは…と、口から乾いた笑いが出た
「ハルちゃん、ハルちゃん…
草履、かたっぽなくなった」
うっ…うっ…と泣き声と共に登場したのはハニー先輩…
目に涙を溜めるその姿は、自分より年上だなんて考えられない…
「さっきまで履いてたじゃないですか」
そう目線を合わせようとかがむと
「光邦…」
低い声が聞こえ、そちらを振り向く
すると、草履の片方を手に持ったモリ先輩がいた
「崇…」
「向こうに、落ちてた…」
静かにそう言いながら、ハニー先輩の足に草履を履かせる…
ハニー先輩はというと、崇ーー!と泣きながらモリ先輩に飛びついていた
「素敵…♡」「素敵ね…!」
何故か、感動に包まれる周りに
いつも通り疑問符を浮かべる
「なんか、涙ものが流行ってるなー…皆なんであんなにすぐに泣けるんだろう」
そう言いながら、その場を離れる…
すると
「おっと…」
悪い、ハルヒ…と、光にぶつかってしまった
ころん…床に何かが転がる
よく見てみると
「これ…!!」
目薬…
「いっとくけど、こんなのホストの常識だから」
「濡れた瞳によろめかない女はいないのさ」
「ずるい」
「ま、硬いこと言わない〜」
「ほら、ハルヒ!これやるから」
手を支えられ、その上に乗せられたのは
桜をモチーフにした和菓子
「くれるの?」
「「カワユイねぇ〜」」
今まで見たものの中で、上位にあがるほど綺麗なそれに、思わず目が光ってしまう
「わぁ!ハルヒくん和菓子が好きなのー?」
「いえ…甘いものはあまり…でも、母の仏前に備えたらいいかなって…」
お母さんの姿を思い出し
喜んでくれるかな…と思いをよせる
「なんて健気なんだ…!」
うるさいのがきた
正直そう思ってしまった
案の定環先輩は、目に涙を溜め
和菓子を大量に手にのせてきた
「そんな親思いのところもいい…!さぁ、ほら…好きなだけ持っておいき…!」
「その涙もニセモノ?」
「何を言う…!俺の涙はいつだって本物だ…目薬など使わずに泣けるようになってこそ…本物のホストだ…」
「ははは、環ん涙腺はどないなってるんやろうなぁ」
言いながらまた一筋、涙を流す環先輩に
麗先輩が、作り物の笑顔を向ける
お客さんにはわからないと思うが、これはかなり面倒くさそうにしている笑い方だ
「どうだ?感心したか?惚れ直したかにゃ?」
「別に」
「どうもハルヒには、俺のアピールは届かんな…少しキャラを変えた方がいいのかにゃ?」
やれやれ
そう一息つき、話の方向をずらそうかと考えていると
「「アレ?お客さん新顔だね〜」」
光と馨の声
新顔?と思い、その方向をみると
確かに…見たことがない子が入り口から顔を覗かせていた
「どうしたの?入っておいでよ」
「みてるだけじゃ、つまんないよ」
薔薇を差し出しながら双子がその子に話しかける
…一体どこに薔薇を仕込んでいたんだ
謎すぎる…
「「さぁ」」
「あ、あの」
「こら、初めてのお客さまには…もっと丁寧にしろといつもいっているだろう」
ひっ…と怖がる声が聞こえたが、きっと気のせいではないと思う
いきなりあんな風に声をかけられて喜ぶ女子は多いが、例外だっているのだ
自分のように…
「さぁ…怖がらないで、お姫様…
ようこそ、桜蘭ホスト部へ…」
「い」
「い?」
「いやぁ!触らないで…!!このニセモノぉ!!」
ばちーん!と平手の良い音と共に
ホスト部内で、聞いたことのない言葉が聞こえた
「俺が…ニセモノ…!」
「そう!ニセモノよ!」
やはり聞き間違いではなかったようだ
ビシッ…!と指を刺すその方向には
しっかり環先輩が捕らえられていた
「あなたがこの部の王子様的存在だなんて信じられませんわ!!!」
そう話す女の子の顔は真剣そのもの
「王子キャラたるもの、そう易々と愛を振りまいたりしないもの!!
どうしてそんなにバカみたいなの!?」
ザク
「まるで頭の軽いナルシストじゃない!!」
ザク
「無能!凡人!!」
ザクザク
「最っっっ低!!!」
もはや刺さる場所はもう無いぞというほど
言葉が刺さりに刺さり…
トドメに雷が落ちたような衝撃を受ける環先輩…
「おぉっ!新技だ!!」
「1人スローモーション…!」
この人は…
器用なのか、そうじゃ無いのか…
まったくもって意味がわからない…
「君は…もしや」
「鏡夜様…!!」
鏡夜先輩の声を聞き、目を潤めかせながらその声の方に駆け出す女の子…
ぐぇっ…と、その場に似つかわしく無い声が聞こえた気がして、周りを見渡すと、床には環先輩が
「…おや、小綺麗なモップが放置されてるなぁ?」
いや、麗先輩…それはモップではなく環先輩です
「お会いしたかった…♡私だけの王子様…♡」