全くこれだから犯罪者ってのは信用ならない！ 怒りのあまり大股になりながら廊下を歩く。ルカさんが止める声も無視して歩く。もういい、自分に割り当てられた個室に行って寝よう。
幸いな事に、館内の構造はある程度覚えていた。だから割り当てられた個室にも特に迷わず着いた。問題なく。滞りなく。
「……あ」
「な、なんでお前が此処に……！」
遠くに見える人影も、適当に挨拶するかする前に個室に入ると思っていた。だから誰か、なんて詳しく見ていなかった。掛け看板の名前も見ていなかった。まさか隣が、アンドルーの部屋だったなんて……！
「なんでも何も此処が私の部屋だからだけど！？」
「え……あぁ、本当だ」
「本当だ、って……」
ぼんやりしてるというか、なんというか。しかしこれは思ってもいないチャンスだ。これから先、自分は避けられる。けど、こうして部屋が近いのなら話すチャンスも増える！ 避けようにも避けられないし！
「も、もう寝るの？」
「……それをどうしてお前に教える必要がある」
「そ、それはそうだけど……」
……でも、やっぱりダメだ。会話が続かない。昔のように仲良しこよしとまではいかずとも、せめてコミュニケーションに難が無いくらいにはもう一度お近付きになりたい。
「……ふん。僕は寝る」
「あ、え、えっと」
バタリ、とドアが閉められる。
「……おやすみ」
届かないとわかっていても、そう呟いた。聞こえていても、きっと嬉しくないだろうけど……でも……。
おやすみって言い合える、そんな仲になりたい。そんな欲が無いと言ったら、嘘になる。
……私も寝よう。そう思い、個室に入る。綺麗に整えられた部屋のベッドにダイブする。はしたないとわかってはいるが、なんだか色々起きすぎて疲れてしまったのだ。
「どうしたら……」
もう一度、仲良くなれるのかな。
じわりと目に涙を浮かべながら、それを考える。有効な手段は何も思いつかない。それどころか、ルカさんに強く当たってしまったことを思い出して、酷く恥ずかしい感情に襲われた。
良くない傾向だとわかりつつも、思考は回り続ける。何かドカンとあれば仲良くなれるかな。いやでもやっぱり、日々の積み重ねだろうな。そうは言っても、あんなつんけんした態度じゃどうしようもないな。まず私自身も吃りをどうにかしないとな。後、このニヤケ面も……。
色々と考えている内に、眠くなってくる。
意識が消える間際、ふと呟いた。
「そういえば、『ゲーム』って何なんだろう……？」