エウリュディケ荘園。此処で行われるゲームをこなせば彼と会わせてくれるし、彼との間にある誤解も解けてあの夢も叶えてくれる何かが手に入るという。
あの日送られてきた手紙と金貨袋を握り締め、手紙で来るように言われていた荘園内の建物の中に入る。入れば……
「エミリー！ 新しいサバイバーさんが来たなの！」
「あら、本当ね。ようこそ、新しいサバイバーさん。私はエミリー・ダイアーと言うの。よろしくね」
「エマはエマ・ウッズって言うの！ よろしくなの！」
「……シンシア。シンシア・サリヴァン。よろしくお願いします」
熱い歓迎を受ける。私の歪んだ笑みを、彼女達はどうやら気にしないらしい。そのことに安心しつつ、案内を受ける。
「着いたなの！ ささ、このドアを#シンシア#さんの手で開けてほしいの！」
「じゃあ……」
言われた通り、ドアを開ける。
そこには。
豪華な飾り付け、美味しそうな食べ物、沢山の人。そして壁には、シンシアさん歓迎会と書かれた大きな紙が貼り付けられていた。
「どうも、あなたがシンシアさんですね？ 私はイライ・クラークと言います。よろしくお願いしますね」
「シンシアさん、彼は占い師をやっているの。とても優しい人だから、困ったら頼ってみてね」
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「はは、優しいなんて。そんなに言われるほどでもありませんよ。ですが、困ったらいつでも言ってくださいね」
皆、十人十色の服を着ている。そして皆、違う性格だ。食べ物の近くにずっと居る人、酒を飲む人、こちらに話しかけてくる人、逆にこちらから話しかけないと自己紹介すらしない人。服だけ違う、皆同じように礼節を弁えた人間だけのパーティーよりも楽しい。
……最も、それでも引き攣った笑いしかできないのだが。
「やぁエマ。彼は此処に来たかい？」
「あ、ルカさん。……うーん……多分来てないなの」
「ふーむ、そうか……」
歓迎会に足を踏み入れ、一時間くらい経った頃だろうか。ルカさんがエマさんに話しかけた。どうやら口ぶり的に、私が会っていない人間がまだ居るようだ。
「やっぱりおかしいなの。確かに人が多い場所を嫌う人だけど、いつも少しは顔を出してくれるなの」
「君もそう思うよな。私もそう思う。……シンシアさん」
「何でしょうか」
彼が、私の方を向く。
「アンドルー・クレスという名前に、聞き覚えはないかい？」