「御伽噺」のように
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◇
「「「……」」」
その場にいるみんなが少し疑問に思った。
ひとり、“小さいまま”食事している彼の姿を
「なんやアレ。アレはなんか狙っとるんか?」
「さぁ…」
「ツッコミ待ちか?「お前なんでそのままやねーん!」って突っ込んだ方がええか?」
「井宿に限ってそんなことあるはずねーだろ」
コソコソと話す翼宿と鬼宿は置いといて、みんなの視線の先には3頭身のままの井宿がいた。
もちろん、今まで3頭身になることは多々あった彼だが、そのまま食事に来たことは無い。
これは、口に出していいものだろうか…。
『ねぇ、井宿…』
明の声に全員がバッと耀を見やる。
(言うのか?! 聞くのか!?)
(もし言いづらい事情があったらどないするつもりや!)
だけど、そんな視線はお構いなく明は続けた。
『なんで体、そのままなの?』
ついに言ってしまった一言に、再び全員の視線は井宿に向けられた。
「だ! やはり気になるのだ?」
『うん』
「みな、何も言わないから、特に気にしてないと思ったのだ」
「いや! めちゃめちゃ気になんねん!」
「どうしたんだ? 今までその姿で食事をしに来たことがなかろう」
「何か事情でもあるんですか?」
明が先手を切ったのを合図にみんなから心配やら質問の声が浴びせられた井宿は「だぁ〜」と項垂れてしまった。
『どうしたの?』
「オイラとしたことが…戻れなくなってしまったのだ」
「「『……ええぇえ!!?』」」
「ち、井宿が?」
「珍しい事も、あるんだな」
『猿も木から落ちる、だね』
「だ〜…参ったのだ。昨日の夜から何故か元に戻れなくなってしまったのだ」
『太一君の所に行ってみたら?』
「術を使うには気力体力を使う。この姿では少々荷が重いのだ」
「それじゃぁ、どうするんですか?」
「考えてるとこなのだ」
『軫宿の薬とか』
「これは井宿の術なのだから、俺の力ではどうにも出来ないだろう」
「だぁ〜」
結局、解決策は見つからないまま食事を終えた。
◇
何もすることがない明は宮廷内をひとり、散歩しているといつもの池のほとりに変わらず小さいままの井宿がいた。
珍しく釣り糸はたれておらず、水面を見ながら考え事をしているようだった。
『井宿』
「だ」
『まだ戻れないの?』
「どうやら時間の問題ではなさそうなのだ〜」
本気で悩んでいるらしく(当たり前)、明も隣に腰を下ろした。
『んー…変身した時、何かいつもと違う感じがした?』
「んー…これといって思い当たらないのだ」
『うーん……何か変わったものを食べたとか飲んだとか』
「ここで出されるもの以外は口にしてないのだ」
『じゃぁ…うーん……』
「……すまないのだ。明」
『え?』
明まで本気で頭を抱え始めたため井宿は申し訳なく思った。
「オイラの失態なのに、君まで悩ませてしまったのだ」
『気にしなくていいよ! だって困った時はお互い様でしょ?』
「…ありがとうなのだ」
『まぁ、私はこのままでも嬉しいけど』
「?…なぜなのだ?」
『だって可愛いから! 小さい井宿ってなんだか愛でたくなっちゃう』
「だぁ〜…それはオイラが困るのだ」
『あははっ、そうだね。でもどうしてだろうね…
うーん。太一君に何か聞いてないの?術を使う時の注意みたいな』
「んー……邪念がある時に使うと、厄介なことになると…聞いた覚えがあるのだ」
『邪念?』
「術を使う時は気を集中させ、一切の邪念を捨てることが必要なのだ。少しでも集中を欠くと……」
『となると…昨日の夜、変身する時なにか井宿の集中を欠くことが起こったのか』
「……」
『…ん。井宿?』
「……どうしたのだ?」
『いや、急に黙ったから…なにか思い出したの?』
「いや……なんでもないのだ」
『んー…昨日、何か見たり聞いたりした?』
「……思い出せないのだ」
『そっかぁ』
しかし、井宿は思い当たる節があった。が、それを言うに言えない。
『……あ、そうだ』
「だ?」
『ねぇ、“御伽噺”ってしってる?』
「おとぎばなし?」
『うん。私の世界でね、小さい子に読み聞かせる本なんだけど、色んなお話があってね
竹から生まれた女の子が大きくなって月に帰ったり、桃から生まれた少年が鬼退治に行ったり』
「ちょっと面白そうなのだ」
『色んなお話があるから面白いよ。あ、それで、魔法で姿を変えられた王子様が愛する人のキスで元に戻るってお話も素敵だったなー』
「……」
『だからね、井宿も好きな人とのキスで元に戻ったりしてーなんて、ちょっと思っただけ。ごめんね、なんか期待させるようなこと言っちゃって』
「……」
『…井宿?』
「…ありなのだ」
『え?』
「試す価値ありなのだ」
『え? え……? 井宿、気になる人でもいるの?』
「……」
戸惑う耀に3頭身のままだが真剣な顔をして向き合った。
「君に、してもらいたいのだ。明」
『……え、』
「頼むのだ。このままではオイラ、一生このままかもしれないのだ」
『え…えっと……』
井宿はこの上なく真剣な顔をしている。
確かにこのままかもしれない。だけど、戻る確証もない。
だが、井宿がこのままなのもなんだかちょっと寂しい気もする。
『わ、分かりました』
戸惑いながらも明も井宿に向き合い、真剣になる。
「……では頼むのだ」
『は、はい』
ゆっくりと近づく明の顔。
目つぶってて…、なんて言おうとしたが、糸目だから見ているのか分からない。
フニっとした感触をほんの1秒ほど感じた。
次の瞬間、
「だぁ!」
『わぁ!? も、戻った…ほんとに!?』
「助かったのだぁ〜」
『え…あ……ほ、本当に戻った』
明はまだ信じられないと言う表情だが、井宿は真剣になり続けた。
「すまなかったのだ」
『え?』
「オイラの為に、嫌なことさせて」
『嫌なこと……?』
「口付けを…無理矢理させたようなものなのだ」
その言葉に、明は顔を真っ赤にして否定した。
『そ、そんな! 嫌じゃないよ! だって…だって井宿はあのままじゃ不便でしょ? 戻って良かったじゃん!』
「だ。それに関しては感謝してるのだ」
『……でも、なんで戻ったんだろうねえ』
「…その時の、邪念を払えば…元に戻るのだ」
『邪念を払う…?』
「……オイラ、昨日の夜君を見かけたのだ」
『え?』
「柳宿と、楽しそうにしていたのだ」
『あぁ』
確か昨日は、寝る前に夜風に当たろうと外に出たら柳宿がいて、少し話してたっけ。
「何故だか、モヤモヤした。柳宿が羨ましかったのだ。その邪念が拭えぬまま、術を使ったから…」
『じ、じゃぁ…私が、その…キス、したことで、その邪念が消えたってこと?』
「多分そうなのだ」
『多分』
「おとぎばなしの事を思い出して欲しいのだ。『愛する人のキスで姿が元に戻る』」
『…………え』
数秒考えた明にひとつの答えが浮かんだ。
『あ、あの…井宿』
「さっき確信したのだ。
オイラは、明が好きなのだ」
『……』
井宿のいつもの優しい顔を向けられ、引いていた熱が再びぶり返した。
「でも、君にその気持ちがあるか分からないのに、こんなことを頼んですまなかったのだ。今回だけは、許して欲しい」
そう言って立ち上がった井宿。
「ありがとうなのだ」
立ち去ろうとした井宿の服の袖を掴んだ。
『あ、あの…井宿』
「どうしたのだ? ……謝り、足りなかったのだ?」
明が立ち上がると申し訳なさそうに向き直った。
『ち、違う! その…さっき言った御伽噺、ちょっと違ってて』
「違う?」
『その…キスで、元に戻る条件…。
本当はね、“愛する人の”じゃなくて……あ…“愛し合う人同士”で……』
「……」
『だ、だから…その…私が言いたいのは』
真っ赤な耀を見て、井宿は満足そうに笑った。
「つまり、明もオイラが好きなのだ」
『っ! ……は、はい…』
井宿は仮面を取ると、明を引き寄せ口づけた。
『……』
ポカンとする明にいたずらに笑う。
「やっぱり、仮面越しじゃなく、直接がいいな」
『っ…!』
明は恥ずかしさから井宿の胸に顔をうめた光景がしばらく続いた。
◇END・2020/02/20◇
「「「……」」」
その場にいるみんなが少し疑問に思った。
ひとり、“小さいまま”食事している彼の姿を
「なんやアレ。アレはなんか狙っとるんか?」
「さぁ…」
「ツッコミ待ちか?「お前なんでそのままやねーん!」って突っ込んだ方がええか?」
「井宿に限ってそんなことあるはずねーだろ」
コソコソと話す翼宿と鬼宿は置いといて、みんなの視線の先には3頭身のままの井宿がいた。
もちろん、今まで3頭身になることは多々あった彼だが、そのまま食事に来たことは無い。
これは、口に出していいものだろうか…。
『ねぇ、井宿…』
明の声に全員がバッと耀を見やる。
(言うのか?! 聞くのか!?)
(もし言いづらい事情があったらどないするつもりや!)
だけど、そんな視線はお構いなく明は続けた。
『なんで体、そのままなの?』
ついに言ってしまった一言に、再び全員の視線は井宿に向けられた。
「だ! やはり気になるのだ?」
『うん』
「みな、何も言わないから、特に気にしてないと思ったのだ」
「いや! めちゃめちゃ気になんねん!」
「どうしたんだ? 今までその姿で食事をしに来たことがなかろう」
「何か事情でもあるんですか?」
明が先手を切ったのを合図にみんなから心配やら質問の声が浴びせられた井宿は「だぁ〜」と項垂れてしまった。
『どうしたの?』
「オイラとしたことが…戻れなくなってしまったのだ」
「「『……ええぇえ!!?』」」
「ち、井宿が?」
「珍しい事も、あるんだな」
『猿も木から落ちる、だね』
「だ〜…参ったのだ。昨日の夜から何故か元に戻れなくなってしまったのだ」
『太一君の所に行ってみたら?』
「術を使うには気力体力を使う。この姿では少々荷が重いのだ」
「それじゃぁ、どうするんですか?」
「考えてるとこなのだ」
『軫宿の薬とか』
「これは井宿の術なのだから、俺の力ではどうにも出来ないだろう」
「だぁ〜」
結局、解決策は見つからないまま食事を終えた。
◇
何もすることがない明は宮廷内をひとり、散歩しているといつもの池のほとりに変わらず小さいままの井宿がいた。
珍しく釣り糸はたれておらず、水面を見ながら考え事をしているようだった。
『井宿』
「だ」
『まだ戻れないの?』
「どうやら時間の問題ではなさそうなのだ〜」
本気で悩んでいるらしく(当たり前)、明も隣に腰を下ろした。
『んー…変身した時、何かいつもと違う感じがした?』
「んー…これといって思い当たらないのだ」
『うーん……何か変わったものを食べたとか飲んだとか』
「ここで出されるもの以外は口にしてないのだ」
『じゃぁ…うーん……』
「……すまないのだ。明」
『え?』
明まで本気で頭を抱え始めたため井宿は申し訳なく思った。
「オイラの失態なのに、君まで悩ませてしまったのだ」
『気にしなくていいよ! だって困った時はお互い様でしょ?』
「…ありがとうなのだ」
『まぁ、私はこのままでも嬉しいけど』
「?…なぜなのだ?」
『だって可愛いから! 小さい井宿ってなんだか愛でたくなっちゃう』
「だぁ〜…それはオイラが困るのだ」
『あははっ、そうだね。でもどうしてだろうね…
うーん。太一君に何か聞いてないの?術を使う時の注意みたいな』
「んー……邪念がある時に使うと、厄介なことになると…聞いた覚えがあるのだ」
『邪念?』
「術を使う時は気を集中させ、一切の邪念を捨てることが必要なのだ。少しでも集中を欠くと……」
『となると…昨日の夜、変身する時なにか井宿の集中を欠くことが起こったのか』
「……」
『…ん。井宿?』
「……どうしたのだ?」
『いや、急に黙ったから…なにか思い出したの?』
「いや……なんでもないのだ」
『んー…昨日、何か見たり聞いたりした?』
「……思い出せないのだ」
『そっかぁ』
しかし、井宿は思い当たる節があった。が、それを言うに言えない。
『……あ、そうだ』
「だ?」
『ねぇ、“御伽噺”ってしってる?』
「おとぎばなし?」
『うん。私の世界でね、小さい子に読み聞かせる本なんだけど、色んなお話があってね
竹から生まれた女の子が大きくなって月に帰ったり、桃から生まれた少年が鬼退治に行ったり』
「ちょっと面白そうなのだ」
『色んなお話があるから面白いよ。あ、それで、魔法で姿を変えられた王子様が愛する人のキスで元に戻るってお話も素敵だったなー』
「……」
『だからね、井宿も好きな人とのキスで元に戻ったりしてーなんて、ちょっと思っただけ。ごめんね、なんか期待させるようなこと言っちゃって』
「……」
『…井宿?』
「…ありなのだ」
『え?』
「試す価値ありなのだ」
『え? え……? 井宿、気になる人でもいるの?』
「……」
戸惑う耀に3頭身のままだが真剣な顔をして向き合った。
「君に、してもらいたいのだ。明」
『……え、』
「頼むのだ。このままではオイラ、一生このままかもしれないのだ」
『え…えっと……』
井宿はこの上なく真剣な顔をしている。
確かにこのままかもしれない。だけど、戻る確証もない。
だが、井宿がこのままなのもなんだかちょっと寂しい気もする。
『わ、分かりました』
戸惑いながらも明も井宿に向き合い、真剣になる。
「……では頼むのだ」
『は、はい』
ゆっくりと近づく明の顔。
目つぶってて…、なんて言おうとしたが、糸目だから見ているのか分からない。
フニっとした感触をほんの1秒ほど感じた。
次の瞬間、
「だぁ!」
『わぁ!? も、戻った…ほんとに!?』
「助かったのだぁ〜」
『え…あ……ほ、本当に戻った』
明はまだ信じられないと言う表情だが、井宿は真剣になり続けた。
「すまなかったのだ」
『え?』
「オイラの為に、嫌なことさせて」
『嫌なこと……?』
「口付けを…無理矢理させたようなものなのだ」
その言葉に、明は顔を真っ赤にして否定した。
『そ、そんな! 嫌じゃないよ! だって…だって井宿はあのままじゃ不便でしょ? 戻って良かったじゃん!』
「だ。それに関しては感謝してるのだ」
『……でも、なんで戻ったんだろうねえ』
「…その時の、邪念を払えば…元に戻るのだ」
『邪念を払う…?』
「……オイラ、昨日の夜君を見かけたのだ」
『え?』
「柳宿と、楽しそうにしていたのだ」
『あぁ』
確か昨日は、寝る前に夜風に当たろうと外に出たら柳宿がいて、少し話してたっけ。
「何故だか、モヤモヤした。柳宿が羨ましかったのだ。その邪念が拭えぬまま、術を使ったから…」
『じ、じゃぁ…私が、その…キス、したことで、その邪念が消えたってこと?』
「多分そうなのだ」
『多分』
「おとぎばなしの事を思い出して欲しいのだ。『愛する人のキスで姿が元に戻る』」
『…………え』
数秒考えた明にひとつの答えが浮かんだ。
『あ、あの…井宿』
「さっき確信したのだ。
オイラは、明が好きなのだ」
『……』
井宿のいつもの優しい顔を向けられ、引いていた熱が再びぶり返した。
「でも、君にその気持ちがあるか分からないのに、こんなことを頼んですまなかったのだ。今回だけは、許して欲しい」
そう言って立ち上がった井宿。
「ありがとうなのだ」
立ち去ろうとした井宿の服の袖を掴んだ。
『あ、あの…井宿』
「どうしたのだ? ……謝り、足りなかったのだ?」
明が立ち上がると申し訳なさそうに向き直った。
『ち、違う! その…さっき言った御伽噺、ちょっと違ってて』
「違う?」
『その…キスで、元に戻る条件…。
本当はね、“愛する人の”じゃなくて……あ…“愛し合う人同士”で……』
「……」
『だ、だから…その…私が言いたいのは』
真っ赤な耀を見て、井宿は満足そうに笑った。
「つまり、明もオイラが好きなのだ」
『っ! ……は、はい…』
井宿は仮面を取ると、明を引き寄せ口づけた。
『……』
ポカンとする明にいたずらに笑う。
「やっぱり、仮面越しじゃなく、直接がいいな」
『っ…!』
明は恥ずかしさから井宿の胸に顔をうめた光景がしばらく続いた。
◇END・2020/02/20◇
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