それは君を見つける道標
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◇
『みーあーかー』
「なに?」
『ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど…』
「うん! いいよ」
神座宝探しの旅に出る前、目的のものを探しに商店へ向かうふたり。
「明、何探しに来たの?」
『その……──』
「いいじゃん!」
美朱に目的のものを耳打ちすると、パッと顔が明るくなった。
『柳宿には内緒だよ』
「分かってるって!」
『美朱も鬼宿に買ったら?』
「そうする!」
ふたりで色んなお店に回ってやっと目的のお気に入りのものを見つけた。
『旅が終わったら、渡そう。』
旅が終わったら──。
◇
後日、神座宝探しの旅に出た。
道中様々な障害があったが、無事に北甲国で神座宝を探すことに。
「手分けして探した方がいいと思います」
張宿の提案で2人1組で別れて探すことに。
私はもちろん、柳宿と……
「何かあったら、この照明弾で知らせてください。直ぐに向かいましょう」
『さむぅ…』
「さすが北甲国ね、どこもかしこも雪景色よ」
『…小さい頃は、雪が好きだったなぁ』
「あら、今も小さいじゃない」
『…どういう意味っ』
「あー。神座宝の手がかりないわねぇ〜」
『あ、話し逸らした!』
少し先を歩く柳宿に追いつこうと駆け出した時、
「見つけた……朱雀の巫女!」
『──!』
屋根の上から大きな何かが降ってきた。
「明!」
ザシュッ─
『っ…あれ』
明らかに何かに裂かれた音がしたが、痛みはやってこない。目を開けると、柳宿の腕の中だと分かった。
『柳宿っ』
「明、大丈夫?」
『うん……柳宿、怪我してる!』
「これくらい平気よ」
「朱雀の巫女、覚悟しろっ」
「なによあんた」
朱雀の巫女…美朱と勘違いしてる……。
「青龍七星士、尾宿…朱雀の巫女を渡せ」
「断る」
『柳宿……』
「あんたはあたしの後ろにいなさい」
尾宿が再び飛びかかってきて柳宿が応戦する。私は、何も出来ずにただ祈るだけだった。
「っ……明! 照明弾!」
『え…は、はいっ』
柳宿に言われ、照明弾を出すと、それを取り尾宿に向かって放った。
「くっ……くそ、覚えてろよ」
戦意喪失したのか、尾宿は去っていった。
「はぁ…」
『柳宿!』
堪らず柳宿に泣きつくと、頭を撫でてくれた。
「大丈夫よ。これくらい」
近くに宿を見つけて、そこで一晩明かすことにした。
『……』
「…なにまだそんな顔してんのよ」
泣きそうな顔をしながら傷の手当をしていると、そんなことを言われた。
『…私は、守られる対象じゃないよ。巫女でも、なんでもないんだから』
「…馬鹿じゃないの」
『……』
「あんたは守るべき人なの。少なくとも、あたしにとっては。大好きで、大切な人なんだから…」
『柳宿っ』
泣きそうな顔を優しく見つめてくれて、ゆっくりと互いの顔が近づき重なった。
……。
夜は、ひとつのベッドに身を寄せあった。
『……ねぇ、柳宿』
「……」
返事がない。
代わりに規則的な呼吸だけが聞こえた。
『…寝ちゃった』
指輪、渡そうと思ったんだけど…。
出発前に美朱とふたりで買いに行った指輪。
やっぱり、全てが終わってからにしよう。
そう思いながら柳宿の背中に手を回し眠りについた。
◇
翌朝、こちらには手がかりが無いため誰かと合流することにした。
『誰か手がかり掴めたかな?』
「どうかしら…少しくらい情報あってもいいはすだけど」
そんなことを話しながら昨日みんなと別れた辺りまで来た時、
『あ! あれ、美朱と鬼宿じゃない?』
「ほんとね」
「耀! 柳宿!」
「丁度みんなと落ち合おうと思ってたんだ」
『なにか分かったの?』
「あぁ。この先の黒山って山の頂上にあるらしい。みんなを集めて行こうと思って」
「そう……なら、あたしが先に行ってるわ。あんたたちはみんなを連れて来て」
『え…でも柳宿、ひとりで大丈夫なの?昨日の…』
「大丈夫よ」
『でも…やっぱり私も』
「あんたは鬼宿たちとみんなを連れてきて」
『……』
「それじゃ、あとで」
頭を撫でると、馬に乗り行ってしまった。
『柳宿…』
「…明。大丈夫よ。柳宿は強いんだから」
『…うん』
でもなんだろう…すごく胸騒ぎがする。
「よし。とりあえず、みんなを探そうぜ」
『…うん』
しばらく歩き回り、軫宿と翼宿を見つけた。
「あれ、柳宿はおらんのかい」
『先に行ってる』
そんな話をしていた時、突然、今までに感じたことの無い不思議な感覚を覚えた。
それは紛れもなく“負の感覚”。
良くないことが起こった。
「なんだ…今の感じ」
それは、みんなも同じだったようで顔を青くしていた。
「誰かに…何かあったのか」
軫宿のその言葉に直ぐに頭に浮かんだのは
『…柳宿!』
「あ、明!」
「馬鹿っひとりで行くな!」
みんなの声も気にせず走り出した。
「俺たちが井宿と張宿を見つけていく。鬼宿たちは明を追え」
「わかった」
『柳宿…柳宿……!』
どうか、無事でいて──
◇
『は…はぁ…はぁ…』
息が苦しい。冷たい空気にやられて肺が痛い。
それでも走り続けて、躓きながらも黒山の頂上までたどり着いた時視界に見えたのは雪の上に横たわる人。
『ぬり、こ…』
「明!」
後ろから美朱たちが追いついていた。
しかし、そんなことも気にとめず彼の元へ駆け寄った。
『柳宿っ』
駆け寄ると、思った以上の深手を負っていた。
『柳宿っ…柳宿!』
「柳宿…嘘でしょ……」
『柳宿! 柳宿!』
何度が呼びかけるとピクリと指先が動き、ゆっくりと持ち上がった手で流れる涙を拭ってくれた。
「あんた、泣いてんの」
『柳宿……柳宿! 死んじゃダメだよ!直ぐに軫宿たちが来るから…』
「…あんたたちの為に…道、開けておいた、から」
『……』
「進みなさい」
『柳宿も…一緒、に……っ』
「……」
柳宿はただ、柔らかく微笑むだけだった。
それに何かを感じた耀は、震える声で言った。
『…柳宿に、渡したい物があるの』
ポケットから出したのは、昨晩渡そうと思ってた指輪。
それを取り出し柳宿に見えるように見せた。
『これね、出発前に買ったの。お揃いだよ。これをつけておけば、きっと…また、一緒になれるから…』
そういい、柳宿の左の薬指につけた。
「……綺麗ね、明みたいに、輝いて…」
『ずっと、一緒だから』
「ありがとう。…明…愛してる」
『っ…私も、』
握ってた柳宿の手は力なく雪の上に落ちた。
『……柳宿』
いつの間にかみんなが集まっていたが、気にすることも無く、私はしばらく泣き続けていた。
◇
ひとしきり泣き、ようやく口を開いた。
『……軫宿、お願いがあるの』
「…なんだ」
『柳宿を、綺麗にしてくれる?』
「あぁ…もちろんだ」
最後に、軫宿の治癒力で柳宿の傷を治してもらい埋葬した。
『ありがとう。柳宿』
前に進むよ。
だから絶対にまた会おうね。
強い決意を固めながら、自分の指にお揃いの指輪をつけた。
◇
『わーい! 花の女子大生だー!』
「同じ大学受かって良かったね」
『うん!』
あの物語が終わって数年。
美朱は、無事にこっちの世界で鬼宿と出会った。だけど…私はまだ彼とは会えていない。
『あ、ほら。魏が待ってるよ』
「ほんとだ。明、またね」
『うん。またね』
歩いていくふたりの後ろ姿を見つめながら、いつか私もまた彼と出会える日が来ることを信じていた。
『…あとどれくらい、待つのかな』
振り返った拍子に誰かにぶつかり、相手の荷物を散らかしてしまった。
『っ…あ! す、すみません……』
「大丈夫」
慌てて拾い集めていると、相手の手が視界に入った。
『……あれ…あの、失礼ですが、ご結婚されてるんですか?』
顔を挙げずに、ただその左手に着いている見覚えのある指輪だけ見つめていた。
「え? …あぁ、これ? 結婚指輪じゃないの。これは、大切な人への道標」
『みち、しるべ…』
「離れ離れになっても、必ず会いに行く。大好きな…あんたへの道標」
『……』
ゆっくりと顔をあげると、あの大好きな笑顔がそこにあった。
「遅くなって、ごめんね。明」
『…柳宿っ!』
思わず飛びついたが、しっかりと受け止めてくれた。
何度離れようとも、必ず君の元へ迎えに行くから。
◇END・2020/02/14◇
『みーあーかー』
「なに?」
『ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど…』
「うん! いいよ」
神座宝探しの旅に出る前、目的のものを探しに商店へ向かうふたり。
「明、何探しに来たの?」
『その……──』
「いいじゃん!」
美朱に目的のものを耳打ちすると、パッと顔が明るくなった。
『柳宿には内緒だよ』
「分かってるって!」
『美朱も鬼宿に買ったら?』
「そうする!」
ふたりで色んなお店に回ってやっと目的のお気に入りのものを見つけた。
『旅が終わったら、渡そう。』
旅が終わったら──。
◇
後日、神座宝探しの旅に出た。
道中様々な障害があったが、無事に北甲国で神座宝を探すことに。
「手分けして探した方がいいと思います」
張宿の提案で2人1組で別れて探すことに。
私はもちろん、柳宿と……
「何かあったら、この照明弾で知らせてください。直ぐに向かいましょう」
『さむぅ…』
「さすが北甲国ね、どこもかしこも雪景色よ」
『…小さい頃は、雪が好きだったなぁ』
「あら、今も小さいじゃない」
『…どういう意味っ』
「あー。神座宝の手がかりないわねぇ〜」
『あ、話し逸らした!』
少し先を歩く柳宿に追いつこうと駆け出した時、
「見つけた……朱雀の巫女!」
『──!』
屋根の上から大きな何かが降ってきた。
「明!」
ザシュッ─
『っ…あれ』
明らかに何かに裂かれた音がしたが、痛みはやってこない。目を開けると、柳宿の腕の中だと分かった。
『柳宿っ』
「明、大丈夫?」
『うん……柳宿、怪我してる!』
「これくらい平気よ」
「朱雀の巫女、覚悟しろっ」
「なによあんた」
朱雀の巫女…美朱と勘違いしてる……。
「青龍七星士、尾宿…朱雀の巫女を渡せ」
「断る」
『柳宿……』
「あんたはあたしの後ろにいなさい」
尾宿が再び飛びかかってきて柳宿が応戦する。私は、何も出来ずにただ祈るだけだった。
「っ……明! 照明弾!」
『え…は、はいっ』
柳宿に言われ、照明弾を出すと、それを取り尾宿に向かって放った。
「くっ……くそ、覚えてろよ」
戦意喪失したのか、尾宿は去っていった。
「はぁ…」
『柳宿!』
堪らず柳宿に泣きつくと、頭を撫でてくれた。
「大丈夫よ。これくらい」
近くに宿を見つけて、そこで一晩明かすことにした。
『……』
「…なにまだそんな顔してんのよ」
泣きそうな顔をしながら傷の手当をしていると、そんなことを言われた。
『…私は、守られる対象じゃないよ。巫女でも、なんでもないんだから』
「…馬鹿じゃないの」
『……』
「あんたは守るべき人なの。少なくとも、あたしにとっては。大好きで、大切な人なんだから…」
『柳宿っ』
泣きそうな顔を優しく見つめてくれて、ゆっくりと互いの顔が近づき重なった。
……。
夜は、ひとつのベッドに身を寄せあった。
『……ねぇ、柳宿』
「……」
返事がない。
代わりに規則的な呼吸だけが聞こえた。
『…寝ちゃった』
指輪、渡そうと思ったんだけど…。
出発前に美朱とふたりで買いに行った指輪。
やっぱり、全てが終わってからにしよう。
そう思いながら柳宿の背中に手を回し眠りについた。
◇
翌朝、こちらには手がかりが無いため誰かと合流することにした。
『誰か手がかり掴めたかな?』
「どうかしら…少しくらい情報あってもいいはすだけど」
そんなことを話しながら昨日みんなと別れた辺りまで来た時、
『あ! あれ、美朱と鬼宿じゃない?』
「ほんとね」
「耀! 柳宿!」
「丁度みんなと落ち合おうと思ってたんだ」
『なにか分かったの?』
「あぁ。この先の黒山って山の頂上にあるらしい。みんなを集めて行こうと思って」
「そう……なら、あたしが先に行ってるわ。あんたたちはみんなを連れて来て」
『え…でも柳宿、ひとりで大丈夫なの?昨日の…』
「大丈夫よ」
『でも…やっぱり私も』
「あんたは鬼宿たちとみんなを連れてきて」
『……』
「それじゃ、あとで」
頭を撫でると、馬に乗り行ってしまった。
『柳宿…』
「…明。大丈夫よ。柳宿は強いんだから」
『…うん』
でもなんだろう…すごく胸騒ぎがする。
「よし。とりあえず、みんなを探そうぜ」
『…うん』
しばらく歩き回り、軫宿と翼宿を見つけた。
「あれ、柳宿はおらんのかい」
『先に行ってる』
そんな話をしていた時、突然、今までに感じたことの無い不思議な感覚を覚えた。
それは紛れもなく“負の感覚”。
良くないことが起こった。
「なんだ…今の感じ」
それは、みんなも同じだったようで顔を青くしていた。
「誰かに…何かあったのか」
軫宿のその言葉に直ぐに頭に浮かんだのは
『…柳宿!』
「あ、明!」
「馬鹿っひとりで行くな!」
みんなの声も気にせず走り出した。
「俺たちが井宿と張宿を見つけていく。鬼宿たちは明を追え」
「わかった」
『柳宿…柳宿……!』
どうか、無事でいて──
◇
『は…はぁ…はぁ…』
息が苦しい。冷たい空気にやられて肺が痛い。
それでも走り続けて、躓きながらも黒山の頂上までたどり着いた時視界に見えたのは雪の上に横たわる人。
『ぬり、こ…』
「明!」
後ろから美朱たちが追いついていた。
しかし、そんなことも気にとめず彼の元へ駆け寄った。
『柳宿っ』
駆け寄ると、思った以上の深手を負っていた。
『柳宿っ…柳宿!』
「柳宿…嘘でしょ……」
『柳宿! 柳宿!』
何度が呼びかけるとピクリと指先が動き、ゆっくりと持ち上がった手で流れる涙を拭ってくれた。
「あんた、泣いてんの」
『柳宿……柳宿! 死んじゃダメだよ!直ぐに軫宿たちが来るから…』
「…あんたたちの為に…道、開けておいた、から」
『……』
「進みなさい」
『柳宿も…一緒、に……っ』
「……」
柳宿はただ、柔らかく微笑むだけだった。
それに何かを感じた耀は、震える声で言った。
『…柳宿に、渡したい物があるの』
ポケットから出したのは、昨晩渡そうと思ってた指輪。
それを取り出し柳宿に見えるように見せた。
『これね、出発前に買ったの。お揃いだよ。これをつけておけば、きっと…また、一緒になれるから…』
そういい、柳宿の左の薬指につけた。
「……綺麗ね、明みたいに、輝いて…」
『ずっと、一緒だから』
「ありがとう。…明…愛してる」
『っ…私も、』
握ってた柳宿の手は力なく雪の上に落ちた。
『……柳宿』
いつの間にかみんなが集まっていたが、気にすることも無く、私はしばらく泣き続けていた。
◇
ひとしきり泣き、ようやく口を開いた。
『……軫宿、お願いがあるの』
「…なんだ」
『柳宿を、綺麗にしてくれる?』
「あぁ…もちろんだ」
最後に、軫宿の治癒力で柳宿の傷を治してもらい埋葬した。
『ありがとう。柳宿』
前に進むよ。
だから絶対にまた会おうね。
強い決意を固めながら、自分の指にお揃いの指輪をつけた。
◇
『わーい! 花の女子大生だー!』
「同じ大学受かって良かったね」
『うん!』
あの物語が終わって数年。
美朱は、無事にこっちの世界で鬼宿と出会った。だけど…私はまだ彼とは会えていない。
『あ、ほら。魏が待ってるよ』
「ほんとだ。明、またね」
『うん。またね』
歩いていくふたりの後ろ姿を見つめながら、いつか私もまた彼と出会える日が来ることを信じていた。
『…あとどれくらい、待つのかな』
振り返った拍子に誰かにぶつかり、相手の荷物を散らかしてしまった。
『っ…あ! す、すみません……』
「大丈夫」
慌てて拾い集めていると、相手の手が視界に入った。
『……あれ…あの、失礼ですが、ご結婚されてるんですか?』
顔を挙げずに、ただその左手に着いている見覚えのある指輪だけ見つめていた。
「え? …あぁ、これ? 結婚指輪じゃないの。これは、大切な人への道標」
『みち、しるべ…』
「離れ離れになっても、必ず会いに行く。大好きな…あんたへの道標」
『……』
ゆっくりと顔をあげると、あの大好きな笑顔がそこにあった。
「遅くなって、ごめんね。明」
『…柳宿っ!』
思わず飛びついたが、しっかりと受け止めてくれた。
何度離れようとも、必ず君の元へ迎えに行くから。
◇END・2020/02/14◇
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