sweet nightmare?
何か今更なんだけれども、俺はゆーじくんの事が好きだ。
バンド組んで20何年と過ぎて、お互いいい歳になって、周りは結婚して子持ちでって…そんな風だからこの片想いは告げる事なんか出来ないって思ってる。
ゆーじくんは、優しいからもし俺が気持ちを伝えたとしても同じようにバンド仲間として見てくれるだろう。
でも…俺が、上手く演じられるかどうかなんだ。ゆーじくんの考えている俺の姿を。
多分、周りが思うより俺はずっと臆病で卑屈で情けない奴。
きっと、こんな俺を彼は好きになんてはならないだろう。
想像しただけで、辛くなってきた…はぁ。
フレーズ作ろうかなって思ったけど、今日はもういいか。寝ちゃおう…
ーーおーい。ーー
んん…?
ーーおーいってーー
…何……俺、寝てるんだけど…起こさないでよ…
ーーおいって!ーー
「…ッ?!?!」
心地良い微睡みについていたと思ったら、いきなり俺を呼ぶような声で起こされた。
思わず枕元のスマホで時間を確認すると、深夜の2時ー。何だよ…まだ、寝れるのに…
そこで、俺は気がついた。一人暮らしの俺の部屋で、メンバーや友達が泊まりに来ている訳でもないのに、誰が俺を呼んだんだ…?
「よ。起きた?」俺の足元で、そう語りかける存在がいる。それも、聞き覚えのあるような声でーー
「え…新弥…?」俺の目の前にいるのは、確かに新弥だった。でも、何で俺の部屋にいるの?あ、これってひょっとしてまだ夢の中にいるのか。だから、新弥が出てくるんだ。
最近、新弥の事ばっか考えちゃってるからかな。ちょっと恥ずかしいけど…
「残念だけど、俺は新弥じゃねぇよ?」
え??そう言われて薄暗い部屋の中、よく視線を凝らしてその姿を見てみる。
顔は新弥だ。確かに新弥。話す声も、新弥。
その形は、新弥そのもので…でも確かに違う所があった。
ーー新弥には、ツノも尻尾も生えていないーーそして、口元に薄らと見える牙も。
「…え、じゃあ…誰?…ツノ生えてるって………俺をどうすんの?…」
「安心しろって。殺したり傷つけたりしねぇから。ほんのちょっと、あんたの精気をもらうだけ。俺は、インキュバスなんだ。」
「…俺、男だけど……?」
「そこら辺は気にしねぇんだ。アンタがちょうど美味そうだったからさ。」
そう言いながらソイツは、俺の身体の上にのしかかってくる。や、いくら見た目が新弥そっくりでも…インキュバス…淫魔って事でしょ?!
「やっ!ちょっ…待っ…」
慌てて起き上がろうとした所を押さえつけられて、じっと深いその金色に見つめられた。
「いいじゃん。アンタは、この姿の男に惚れてんだろ?ソイツの代わりになってやるよ。
コレは、取り引きだ。俺はアンタにとって心地良い夢を見させてやる。その代わり、アンタは俺に精気を与える。な?」
そう言われて……俺は、新弥そっくりなその淫魔を押し退けることが出来なくて……ゆっくりと目を閉じた。
次に目を開けた時には、ソイツはもういなくて…その代わり俺はもう裸で。太腿には、俺が放ったらしい白濁の跡と腰に響く鈍痛が。
あぁ…アレは夢じゃ無かったんだな…
妙に身体が怠くて力が入らないのも、精気を取られたからって訳か。
……ホントの新弥だったら、良かったのにな。
そう思いながらまた、俺は目を閉じて眠りについた。
次の日、仕事で新弥と会った。
何故か彼の顔が赤くなっている。
ん?何かあったっけ?
「咲人……その、程々に…な?」
そう言いながら首周りを指差す新弥。
不思議に思って、俺は鏡で自分の姿を確認してみる…
「ーーー?!」鎖骨や首筋…至る所にキスマークらしい赤い跡が。
あンの淫魔野郎……!新弥に勘違いされたじゃん!
俺は真っ赤な顔をして俯くしか出来なかった……
俺はどうやらアイツに気に入られてしまったみたい。
あの淫魔が俺の前にまた姿を現すのは、また別の話ーー…
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