UNTI romantic
ーー俺のところまで、堕ちてきてよ。新弥ーー
この前、新弥のヤケ酒に付き合って勢いで
関係を持った。
新弥に抱かれる事なんて、絶対に無いって思ってたから…俺に断る理由なんて無い。
俺は、ずっと新弥が好きだったから…
真正のゲイって言う訳では無いんだけど…
俺は、昔からなかなか女に対して淡白で
自分でも不思議に思ってた。
付き合ってきた彼女に対して、どうにもこう情熱的になれなくて…どこかおかしいんじゃないかって思ってた。
でも、新弥だけは違うんだ。初めて会った時から…
ああ、これが恋に〝落ちる“って事なのかって。
新弥だけが、俺のモノクロのような世界で色付いている。
それは、今も変わらない。
俺が、新弥に抱かれてる間ずっと考えてた事。
新弥の想像している〝咲人”を演じて…そして、出来るだけ俺の身体に溺れさせようと思った。
新弥の愛情を与えられないにしても、身体だけでも愛してくれれば…しばらくは他の女に行かないんじゃないかって、バカな考えだけどね。
俺の目論見通りに、新弥は俺とのセックスを気に入ったらしく定期的に俺に声を掛けてくるようになった。
安いホテルで一晩睦み合う事もあれば、ライブ後の楽屋で盛る事もあって。
これは、もう完全なセフレって奴だな…と認識した。
セフレだとしても、今は俺が新弥の側にいられる…それだけでいいんだ。
後で、心が虚しさで満たされたとしても。
そう思ってた、そんな夜ー
俺は、賭けをする事にした。
ライブ終わり。新弥に声をかけられて、部屋に出向く。
一通り、事が済んだ後で…俺は新弥にこう告げたんだ。
「…終わりにしない?…」
「え、…?」
「…俺さ、これだけでも十分だと思ってた。
でもね、やっぱり辛いんだ。そのうち、新弥がまた新しく彼女作って、捨てられるって思ったらさ。…それなら、そうなる前に終わらせるのが、俺の義務かなって…」
「……咲人…」
「だって、俺ね…新弥の事好きだから。…新弥が思ってる以上に好きだから、さ。…だから…」
そこまで続けて言った後に俯いて、涙を溢した。やだな。俺、こんなに女々しかったんだ。勝手に溢れてくるそれは、もう防ぎようが無くて。
「…わかった。終わりにすっか。」
新弥の言葉を聞いて、目の前が一瞬暗くなった気がした。けど、その後に続いた言葉に俺は驚いて…
「…セフって関係を終わりにしてさ。その…何つーか…ちゃんと付き合わねえ?俺ら…」
「俺さ、咲人の気持ち知ってて誘ったんだよ。…それは、悪かったって思ってる。
でもさ、卑怯になんのはやっぱり無理だわ。俺……。気づいたら、俺咲人の事好きんなってた…」
ーー俺のところに堕ちてきて。と願ってた。
悪い男するのには、向いてないよね。お前は。
気づいたら、新弥の腕が俺に回ってて抱きしめられてて。
そして、初めてキスされた…
俺、賭けに勝ったみたい。これから、覚悟してね?新弥。
俺はお前を離さないから。
2/2ページ