UNTI romantic
彼女に浮気された。
結構、本気で好きで大事にしてたつもりだったのに。
あっさり他の歳上の、どっかの社長みたいな男に鞍替えされた。
そんで、あっさり捨てられた。
情けねーけど、ヤケ酒。ついでに咲人も付き合わせた。
個室居酒屋の中、いい感じに出来上がりの俺ら2人。
「あーー…俺、もうしばらく女はいいわー…」
「そう言って途切れた事無いじゃん。新弥」
「今度はマジだって…今回のは、マジで懲りたし…いっそ男に走ろうかなぁ…」
「何、変なこと言ってんの…新弥みたいな女好きは無理だよ…」
酒が入ってるくせにやけに冷静にそう言う咲人は、哀れむような目で俺を見つめる。
そう言った咲人の姿をマジマジと酔っ払いの頭で眺めてみた。
白い肌に、火照った頬。ノーメイクな垂れ目、カラーリング繰り返してもさほど傷んで無い綺麗な髪。薄い唇。呼吸する度にたわむ喉仏。
ーーアレ?俺、もしかして…
咲人なら、イケんじゃね?
ぼんやりとした頭でも、そんな答えを叩き出した俺は気づけばこう口走っていた。
「なぁー…俺さ、咲人なら抱けるかも」
信じられないモノを見るように俺に視線を向ける咲人。
「…新弥、ノンケなのに何言ってんの…」
そう。こんな言い方をしたのは、咲人が俺を好きな事を俺は知ってるから。
そして、咲人は男もイケる性的嗜好なことも知っている。
必死に隠していたであろうことも。
その上で敢えて、俺は卑怯な男になろうと思った。
「なぁ…一回さ、ヤらしてくんね?」
時間がフリーズするのがわかった。
酔った勢いで言う戯言。咲人なら、きっとそう言ってスルーするか笑い飛ばす。
好きな俺がこんなカスヤローだってそう思ってくれれば、咲人はきっと他に目を向けて幸せを手に入れるはずだ。
そう、咲人なら…
「…本気で、それ言ってる?…」
僅かに視線を背けながら、でも頬をさっきよりも更に赤くして。
信じられないような、でも嬉しくて戸惑ってるようなそんな声で咲人は呟く。
ーーあ。そんな表情するくらい
咲人、俺のこと本気で好きなんだ。
でも、後には引けなくて。
結局、その夜俺は咲人を抱いた。
酔いなんて、途中からとっくに覚めていた。
細くて華奢な身体。でも作りは確かに男のそれで。
初めて、男に咥えられて。男を咥えて。
でも、不思議と嫌悪感は無くて。
女のものじゃない咲人のナカは、正直元カノよりも全然良かった。
背中に立てられた爪の跡が、ちょっと痛んだけれど。
隣で小さな寝息を立てている咲人の顔を見て、若干罪悪感が芽生えた気もして。
けど、俺はズルくて卑怯な男になろうと思ったから。
寝言で聞こえた「好き…」と言う小さな言葉は、聞こえないフリをした。
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