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※主ちゃんはnot青道生
※架空の試合です。
※若干中学時代捏造
私の幼なじみはかっこいい。常に周りを見て必要なときにはフォローを入れてくれるし、面倒見が良い。私が重いものを持っていたら、代わりに持ってくれるような紳士的なところもある。言葉遣いは荒いけれど、とても優しい人だ。見た目だって、ちょっと柄は悪いだけで、整っている。運動部だから筋肉だってついてるし、スタイルも良い。
何より野球をしている時の彼はキラキラ輝いている。
だが、今まで女の子にキャーキャー言われていることはなかったし、告白されても断っていた。だから、彼が誰かに奪われることはない。そう勝手に安心していたのだ。
「倉持先輩、めっちゃ格好いいよね!」
「あー、分かる。普段は御幸先輩に目が行きがちだけど、倉持先輩もすごく格好いいよね。」
「私は御幸先輩が1番だと思うけどね!」
「でも、倉持先輩だって負けてないよ!」
幼なじみである倉持洋一の応援に神宮球場へと足を運び、入場列に並ぼうと歩いていた私の耳に聞こえてきたのは可愛らしい女の子達の声だった。青道高校の制服に身を包んだ彼女たちの話題の中心になっているのは、どうやら我が幼なじみのようだ。
「………。」
久々に洋ちゃんに会えるかもしれないと、大分受かれていたらしい。身体の熱が退いていくのが分かった。
「彼女とかいるのかなー?」
「聞いたことないけどねー、内緒にしてるだけかもだけど。」
彼女たちの会話は続く。彼女。今まで何度も頭をよぎっては考えないようにしていたことだった。洋ちゃんに彼女が出来たら…。いや、既にいるのかもしれない。私は嫌なことを振り払うように頭を振った。
昔から私は洋ちゃんのことが好きだった。気がついたのは小学校に上って少したった頃だ。自分でもなかなかに一途だと思う。だが、こんなに長く片想いをしていても、洋ちゃんに想いを告げる気にはなれなかった。
幼なじみというのは心地良いのだ。だからこそ、告白なんかできない。今の関係が壊れるくらいなら、今のままの方がずっといい。こんなだから、友達からはよくチキンだの、ヘタレだの言われてしまうのだが…。
「ただいまより、入場開始になります!」
係員さんの声が響いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試合は常時 青道リードで進んでいた。だが、洋ちゃんはあまり調子が良くないらしく、
フォアボールでの出塁はあったものの、5回までに2打数無安打。空振りの仕方や見逃し方もあまり良いものとは言えなかった。
そんな中迎えた、1アウト1,2塁のチャンス。ネクストバッターサークルで待機する洋ちゃんは真剣そのもの。しかし、どこか気負っているような雰囲気であった。
━━中学の時もこんな場面があった気がする。ふと頭を過ったのは、中学2年生の秋。洋ちゃんたち2年生が主力となり、洋ちゃんの
キャプテンとしては初めての公式戦。洋ちゃんはいつにもなく気負っていた。あの時も、私はグラウンドで彼の背中を見ていた。彼らしくない気負いっぷりに、思わず声を張り上げて名前を呼んだことを覚えている。
そんなことを考えていたからだろうか。私は気がついたら、グラウンドに向かって声をかけていた。
「洋ちゃーん!!打てー!」
私の中では精一杯の叫びも、ブラスバンドや野球部の応援の声に飲まれ、消えていく。
━━洋ちゃんには届いてないだろうな。
少しだけ自分が情けなくなる。
前のバッターが送りバントで繋ぎ、洋ちゃんがバッターボックスへ向かう。
彼はこちらの方を見ていた。まるで誰かを探すように。
目が合った。
彼の目線は私の前で止まると、不意に細められた。それは、昔から知っている大好きな笑顔。すぐにバッターボックスへと視線を戻し、打席へと向かっていく。
━━私の声、届いたんだ…!
久々に向けられた笑顔に顔に熱が集まるのを感じる。嬉しさと恥ずかしさで口許が自然と緩んだ。
その打席で洋ちゃんは二塁打を放ち、2点の追加点をあげた。そして、ベンチへ戻るとき、もう一度私の方を向き、笑顔で拳をあげた。
その姿がとても眩しくて私は目を細めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試合は大差で青道が勝ち、7回コールドとなった。人の波に流されながら、球場の外に出ると、ちょうど青道高校の選手たちが帰るところであった。洋ちゃんいるかな、と人混みを掻き分けると、こちらを見ていた洋ちゃんと目が合う。探しててくれたのかな、などとうぬぼれた感想を抱きながら、私は笑顔を向ける。隣の選手と何か話した後、彼はこちらに走ってきた。
「なまえ!行きなり来んなよ。驚いただろうが。」
久々の会話に思わず頬が緩む。メールはよくしていたが、直接顔を見て、声を聞けるというのはやはり嬉しいものだ。
「ごめん、ごめん!洋ちゃん、最近忙しそうだったからさ。」
「まあ、確かにな…。でも、これからはこっちに来るときは連絡寄越せよ。」
「うん」
そんな話をしていると、バスの方から「倉持ー!」と洋ちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。
洋ちゃんは軽く舌打ちすると、帽子をかぶりバスへと向かう。
「悪い!またメールするわ!」
「…うん!待ってる!」
走り去っていく彼の背中は記憶の中よりずっと大きくて。なんだか少し遠くに感じた。
帰りの電車に乗る頃には辺りはすっかり暗くなり、窓の外には都会のきらびやかなネオンが広がっている。
洋ちゃんからメールが届いたのは、窓の外が都会のネオンから見慣れた夜の闇へと変わった頃だった。
『今日は、久々だったのにあんまり話せなくて悪かった。××日、部活がオフになったんだが、暇だったらどこか行かねぇか?』
予想外の洋ちゃんからの誘いに思わず喜びの声が出そうになった。試合前、洋ちゃんに彼女がいたら、と落ち込んでいたのが嘘みたいに心が軽くなる。
洋ちゃんと出掛けるのなんて随分と久々だ。皆ではよく出掛けたが、二人で出掛けるのは、小学校以来かもしれない。
…これはデートといっても良いのかな。そんなことを考えてしまう。だが、今日の私は何故だか前向きのようだ。デートであってほしいな、そう考えておこう。と気持ちを切り替える。何だか、今なら少しは勇気が出せそう何か気がした。
私は、yesの返事に『会いたい』という4文字を加えると、静かに携帯電話を切った。
※架空の試合です。
※若干中学時代捏造
私の幼なじみはかっこいい。常に周りを見て必要なときにはフォローを入れてくれるし、面倒見が良い。私が重いものを持っていたら、代わりに持ってくれるような紳士的なところもある。言葉遣いは荒いけれど、とても優しい人だ。見た目だって、ちょっと柄は悪いだけで、整っている。運動部だから筋肉だってついてるし、スタイルも良い。
何より野球をしている時の彼はキラキラ輝いている。
だが、今まで女の子にキャーキャー言われていることはなかったし、告白されても断っていた。だから、彼が誰かに奪われることはない。そう勝手に安心していたのだ。
「倉持先輩、めっちゃ格好いいよね!」
「あー、分かる。普段は御幸先輩に目が行きがちだけど、倉持先輩もすごく格好いいよね。」
「私は御幸先輩が1番だと思うけどね!」
「でも、倉持先輩だって負けてないよ!」
幼なじみである倉持洋一の応援に神宮球場へと足を運び、入場列に並ぼうと歩いていた私の耳に聞こえてきたのは可愛らしい女の子達の声だった。青道高校の制服に身を包んだ彼女たちの話題の中心になっているのは、どうやら我が幼なじみのようだ。
「………。」
久々に洋ちゃんに会えるかもしれないと、大分受かれていたらしい。身体の熱が退いていくのが分かった。
「彼女とかいるのかなー?」
「聞いたことないけどねー、内緒にしてるだけかもだけど。」
彼女たちの会話は続く。彼女。今まで何度も頭をよぎっては考えないようにしていたことだった。洋ちゃんに彼女が出来たら…。いや、既にいるのかもしれない。私は嫌なことを振り払うように頭を振った。
昔から私は洋ちゃんのことが好きだった。気がついたのは小学校に上って少したった頃だ。自分でもなかなかに一途だと思う。だが、こんなに長く片想いをしていても、洋ちゃんに想いを告げる気にはなれなかった。
幼なじみというのは心地良いのだ。だからこそ、告白なんかできない。今の関係が壊れるくらいなら、今のままの方がずっといい。こんなだから、友達からはよくチキンだの、ヘタレだの言われてしまうのだが…。
「ただいまより、入場開始になります!」
係員さんの声が響いた。
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試合は常時 青道リードで進んでいた。だが、洋ちゃんはあまり調子が良くないらしく、
フォアボールでの出塁はあったものの、5回までに2打数無安打。空振りの仕方や見逃し方もあまり良いものとは言えなかった。
そんな中迎えた、1アウト1,2塁のチャンス。ネクストバッターサークルで待機する洋ちゃんは真剣そのもの。しかし、どこか気負っているような雰囲気であった。
━━中学の時もこんな場面があった気がする。ふと頭を過ったのは、中学2年生の秋。洋ちゃんたち2年生が主力となり、洋ちゃんの
キャプテンとしては初めての公式戦。洋ちゃんはいつにもなく気負っていた。あの時も、私はグラウンドで彼の背中を見ていた。彼らしくない気負いっぷりに、思わず声を張り上げて名前を呼んだことを覚えている。
そんなことを考えていたからだろうか。私は気がついたら、グラウンドに向かって声をかけていた。
「洋ちゃーん!!打てー!」
私の中では精一杯の叫びも、ブラスバンドや野球部の応援の声に飲まれ、消えていく。
━━洋ちゃんには届いてないだろうな。
少しだけ自分が情けなくなる。
前のバッターが送りバントで繋ぎ、洋ちゃんがバッターボックスへ向かう。
彼はこちらの方を見ていた。まるで誰かを探すように。
目が合った。
彼の目線は私の前で止まると、不意に細められた。それは、昔から知っている大好きな笑顔。すぐにバッターボックスへと視線を戻し、打席へと向かっていく。
━━私の声、届いたんだ…!
久々に向けられた笑顔に顔に熱が集まるのを感じる。嬉しさと恥ずかしさで口許が自然と緩んだ。
その打席で洋ちゃんは二塁打を放ち、2点の追加点をあげた。そして、ベンチへ戻るとき、もう一度私の方を向き、笑顔で拳をあげた。
その姿がとても眩しくて私は目を細めた。
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試合は大差で青道が勝ち、7回コールドとなった。人の波に流されながら、球場の外に出ると、ちょうど青道高校の選手たちが帰るところであった。洋ちゃんいるかな、と人混みを掻き分けると、こちらを見ていた洋ちゃんと目が合う。探しててくれたのかな、などとうぬぼれた感想を抱きながら、私は笑顔を向ける。隣の選手と何か話した後、彼はこちらに走ってきた。
「なまえ!行きなり来んなよ。驚いただろうが。」
久々の会話に思わず頬が緩む。メールはよくしていたが、直接顔を見て、声を聞けるというのはやはり嬉しいものだ。
「ごめん、ごめん!洋ちゃん、最近忙しそうだったからさ。」
「まあ、確かにな…。でも、これからはこっちに来るときは連絡寄越せよ。」
「うん」
そんな話をしていると、バスの方から「倉持ー!」と洋ちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。
洋ちゃんは軽く舌打ちすると、帽子をかぶりバスへと向かう。
「悪い!またメールするわ!」
「…うん!待ってる!」
走り去っていく彼の背中は記憶の中よりずっと大きくて。なんだか少し遠くに感じた。
帰りの電車に乗る頃には辺りはすっかり暗くなり、窓の外には都会のきらびやかなネオンが広がっている。
洋ちゃんからメールが届いたのは、窓の外が都会のネオンから見慣れた夜の闇へと変わった頃だった。
『今日は、久々だったのにあんまり話せなくて悪かった。××日、部活がオフになったんだが、暇だったらどこか行かねぇか?』
予想外の洋ちゃんからの誘いに思わず喜びの声が出そうになった。試合前、洋ちゃんに彼女がいたら、と落ち込んでいたのが嘘みたいに心が軽くなる。
洋ちゃんと出掛けるのなんて随分と久々だ。皆ではよく出掛けたが、二人で出掛けるのは、小学校以来かもしれない。
…これはデートといっても良いのかな。そんなことを考えてしまう。だが、今日の私は何故だか前向きのようだ。デートであってほしいな、そう考えておこう。と気持ちを切り替える。何だか、今なら少しは勇気が出せそう何か気がした。
私は、yesの返事に『会いたい』という4文字を加えると、静かに携帯電話を切った。
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