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Fleeting lover (×in)

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大好きな香りを纏った主が、俺を横切る。




何か思い出したように、ピタリと止まると振り返る。






鋭い目に見つめられて、不覚にもドキドキする。



「伊野尾、どうする?」





「ふぇ、あぁ…俺もごめん、パス」





「ん、そっか。高木、伊野尾頼む」




「了解~」






「喧嘩すんなよ?」と笑って、俺の頭をクシャッと撫でてから去って行く薮。






ボッと顔が熱くなる感覚がして、高木から顔を逸らす。




「ふふふ」





「……何だよ」




「なんも?…薮くんも馬鹿だね」






俺が薮を好きなこと、こいつが気付いてるのは薄々気づいてた。








「ねえ、アイスでも買ってくる?まだまだ時間かかりそうだし」



「…!うん…!」







「伊野尾くんってば単純~拐われるよ」と俺の手を引いて行く高木。

いっそお前が拐ってくれれば、俺は楽なのかもな。






男二人、手を繋いで広い広い園内を歩く。




普段はグループ内ではあんまり話さない方だから、キョドりながら談笑していると無機質な着信音。





「ごめんね」



高木が電話を手にすると、繋いでいた手も離れてちょっと寂しい。





「もしもし…薮くん?…ああ、分かった…今アイス買いに行くとこ……大丈夫だよ……おっけー」






薮………俺に電話してくれてもいいのに。



「伊野尾くん、薮くんから代わってって」






「よかったね」と言いたげな笑みを横目に、携帯を受け取る。






「もしもし…」




『あ、伊野尾。高木大丈夫?』




「やぶ、高木はそんなに信憑性低くないよ」




「だよな。高木と二人我慢しろよ」と笑いを含めた薮の声。


この時間が永遠に続けばいいのにね、なんて俺にしてはポエミーなことを思った。







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