｢美月、朝だよ。おはよう。


｢ん〜｣
と声を発し、声のする方に両手を伸ばす。

｢はいはい、おはよう、お眠ちゃん。｣
優しくて心地いい温もりが体を包み込む。


｢おはよう…ございます｣

｢よしよし｣
そう言いながら頭を撫でてくれる手はいつも優しい。

｢あ、やばい、焦げちゃう｣
スリッパの音をパタパタさせながらキッチンに向かう後ろ姿は何度見ても愛おしい。



まだ少し痛む腰に昨日の夜を嫌でも思い出す。
重い体を無理やり起こして、愛する人の元へと向かう。


｢今日の朝ごはんなんですか｣
フライパンの前に立つ彼女を後ろからぎゅっと抱きしめる。

｢今日はね、朝から魚焼いたよ。もう少しでできるから顔洗っておいで｣



顔を洗って部屋に戻ると、健康的な理想的な朝ごはんがきちんと並んでいた。

｢ほら、食べよう｣

｢｢いただきまーす｣｣
2人揃って朝ごはんを食べられる日が最近多くなってきた気がする。
食卓を2人で囲める日は幸せを肌で感じることができるから、私にとって大好きな時間のひとつ。




｢一実さんが作ってくれたから、私洗い物しますよ？｣
そう声をかけても、

｢もう着替え終わってるし身支度も済んでるから、私が洗っとくよ。早く準備しておいで。｣
と嫌味ひとつ見せない顔で洗い物をし始める。


｢美月！忘れ物！｣
私が靴を履いていると、電気やガスの最終確認を終えた一実さんが私のレッスン着を持って、玄関まで走ってくる。

｢あ、振り入れあったこと忘れてた…｣
そう呟けば

｢もう、おっちょこちょいだから｣
ってにこにこと笑顔を浮かべてくれる。



この朝のエピソードだけでもわかると思うけど、私の彼女、一実さんは超がつくほどスパダリだ。








ある時は突然、
｢車の免許取った！｣
と言ってきて私を驚かせたり。

話を聞いてみると、仕事が遅くなった私を車で迎えに来れるかららしい。
マネージャーさんが送ってくれるのに…。



またある時は
｢はい、プレゼント！｣
と記念日でもなんでもないのに大量の洋服を買ってきたこともある。

｢なんで？｣と聞くと、｢頑張ってる美月にご褒美｣だと言われ、｢たまには私にも着せてね｣と。
後々、同じ洋服持ってる？とメンバーに言われ、同棲していることがバレたりもしたけれど。



｢結婚してください｣
なんてとんでもない愛情表現とともに指輪を渡されたこともある。

もちろん受け取ったし、法律さえ改正してくれれば、一刻でも早く籍を入れたいと私も思ってる。



当たり前のように、誰にでも優しいし、気遣いもできるし、みんなから好かれる彼女。





｢もしかして眠い？｣
その言葉にこくっと頷けば、一実さんはソファーに座ってくれて膝枕をしてくれる。

コロナ禍で多くのメンバーと楽屋で過ごすことはすごく減ったけれど、こうやって2人でゆっくり過ごせる楽屋はとても幸せだ。

｢おやすみ｣
彼女の優しい言葉と温もりに瞼が下がってくる。

｢おやすみなさい…｣










｢ちょ、まっちゅん！｣

｢どうしたん？｣

｢見て、見て！可愛くない？｣

｢そりゃ可愛いやろ美月は｣

｢こんな天使っているんだね…｣

｢惚気けんでもらっても…？｣

｢こんな可愛い子を前にして、しかも私の彼女で、惚気けるなって？｣

｢かずみんキャラ変わってるで｣

｢はぁー天使だよ…｣

｢ダメだ聞いてないわ｣




後から松村さんに教えてもらって、プシューって音がしそうなくらいの勢いで顔が真っ赤になった一実さん。

それも含めて、自慢の彼女だなって心の底から思った。

やっぱり私の彼女はスパダリだ…。