｢おはよう｣

愛しい人の声で目が覚める。







｢まいやん…｣

｢沙友理ちゃん〜｣
彼女は寝ている私の上に重なってくる。
この重みが私は好き。

彼女は私から離れないようにぎゅっと抱きついてくる。


その様子を見ながら昨日の夜のことを思い出す。
沙友理ちゃん…って言いながら、私にしがみついて可愛くなく彼女の姿が好きだ。




なんだか焦げ臭い匂いがする気がする。
｢ねえ、もしかして途中やない？｣

｢あ！やば！｣
彼女は急いでたったったとキッチンの方に駆け出していった。
その後ろ姿を見るのも好きだ。






私もベットを出てキッチンに向かうと、楽しそうな彼女の鼻歌が聴こえてくる。

｢何歌っとるん？｣

｢え、今の私と沙友理ちゃんにピッタリの曲｣

｢なんやろ？｣

｢いつかね、教えてあげるよ｣






彼女と並んで靴を履く。
向かう場所は同じだ。
一緒に住み始めて毎日同じことの繰り返し。
だけどこの変わらない毎日が好きだ。



あと何回彼女とこうやって家を一緒に出ることができるのだろうか。
たくさんあったはずの時間は、気づけば両手で足りるほどになってしまった。







｢沙友理ちゃん…？｣
私の様子に気づいたのか彼女は顔を覗き込むようにしゃがみこむ。



そんなに優しい顔をしないで。
涙が出てきちゃうから。




彼女は私のことをぎゅっと抱きしめる。
｢泣いていいよ｣
その言葉に私は甘えてしまった。
涙が溢れて止まらない。






残されたわずかな時間。
私は彼女のために何ができるだろうか。
何をしてあげられるだろうか。






きっと何もしてあげられない。
私は彼女からもらうことの方が多すぎるから。





私はそんな彼女が大好きだ。


でもそれでいい。
私と彼女が今日もこうやって一緒に居られる。
それだけできっと彼女も喜んでくれるから。
自惚れかもしれない、でも自惚れでいい。








彼女といるとそんな自分すらも大好きだから。