左足のリグレット
name chenge
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【君の勝ち】
私は空の沈黙に耐えきれず、一歩踏み出した。
空の左手の薬指の指輪が、誰か優しい人との約束ではなく、私への最後の問いかけのように思えてきたからだ。
「口数が少ないね、空」
私が皮肉めいた笑みを浮かると、空は怪訝そうに眉を寄せた。
「その指輪をみせたくて私を呼んだの?しかもわざわざいつもの場所に」
空は相変わらず沈黙を続けている。なにか言いたげに、でも何も言わないように唇をぎゅっと結びながら。
それでも私は構わず続ける。
「春に別れてから、時間が経てば空がいない日々に慣れると思ってた。でも全然違った。
慣れるどころか後悔ばっかりで、空のこと、ちゃんと見てればよかったって、あの日、喧嘩したあと、意地はってないで早く謝ればよかったって、ずっと思ってた」
空は驚き見開いた目で私を見つめている。
「左足のアンクレット、まだ外してない。だって、私が愛せるのは空だけだから…
新しい人? その指輪が本気なら、なんで私を呼んだの? なんでそんな目をしてるんだよ」
私は空の左手を取った。
ここで振り払われたらやめようと思っていた。でも空は振り払わなかった。
「これは私の身勝手だけど…空を幸せにするのは私がいい。優しい誰かに出会えたなら諦められるって思ってたけど、ただの強がりだった。
…もう一度、私と付き合ってくれませんか」
その言葉を聞いた瞬間、空の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
空は泣きながら、私の手を強く握った。
「私も…同じことを思ってた…ずっと、康のそばにいたい」
空の震える声は、安堵と、かすかな喜びで満ちていた。
嬉しさと安堵と溢れた愛しさで衝動的に空の手を引き抱き寄せた。
私の背中に回された空の腕の強さが、待っていた答えを物語っている。
私は空の細い肩を抱き寄せ、冷たい11月の潮風の中で、ようやくアンクレットの冷たさではなく、空の温もりを感じていた。