星が消えないうちに
name chenge
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9月19日:移動中 康side
結局あのまましばらく呆然としていたら、ギリギリの時間に部屋を出てしまった。
先輩が遅刻しては面子が立たないので、急いでエレベーターに向かう。
ホールにはすでにみーおんと愛佳がいた。
「あ、康おはよ」
「おはよーございます」
「おはよう」
軽く挨拶してエレベーターを待っていると、愛佳がにやにやしながら近づいてきた。こういうときは碌な事がない。
「珍しいですね、康さんがギリギリなんて」
「うん、たまには、ね」
「昨日の夜はお楽しみでしたか?」
「はぁ?!」
ちょうどいいところにエレベーターが来て、他のお客さんも乗ってたから、その話は一旦終わりになる。
命拾いした…。別に由奈とのことを隠したいわけじゃないけど、知られたくなかったから、愛佳の話にどきりとした。
このままバスに乗ってしまえば有耶無耶になるだろうと思ったのに、エレベーターを降りた途端、2人にしっかり腕を組まれ逃げられなくなる。
「何すんの」
「いやー、バスはどうしても康さんと隣がいいな~と思いまして」
「そうそう。飲み会で話したりなかったこともあるし」
そういう2人はにやにやと目を合わせて笑っている。あぁ胃が痛くなってきた。
バスの中は思いの外ガヤガヤしている。
普段は新幹線で一般のお客さんもいる中での移動だから、静かにしている事が多いけど、バスにはメンバーしかいないから良い意味で気が緩んでるんだろう。
「康さん、今日は何か朝から嬉しそうですけど、良いことありました?」
「…別に普通だけど。昨日よく寝れたからじゃない?」
「その割には2時頃出歩いてたよね?」
「…眠れないから飲み物買いに行ったんだよ」
「へぇ、じゃあやっぱり人肌に触れると眠くなるものですか?」
思わず愛佳を見ると、図星だというように愛佳が目を細めて笑う。
背中にヒヤリとした汗が流れる。
「私、見ちゃったんですよね~朝早くに康さんの部屋から可愛い後輩が出てくるところ」
「私も見ちゃったんだよね~康が夜中に可愛い後輩と2人っきりで話してるところ」
「ほんとに勘弁して…」
昨日の夜、由奈と2人きりで話していたことも、今朝まで自分の部屋に由奈がいたことも2人にバレていて、逃げ場のなさに頭を抱える。
ただ二人とも由奈の名前は出さないあたり、後輩に対する優しさはある。
私に対しての優しさはないみたいだけど。
「後輩ちゃん顔真っ赤だったけど、何したんですか?」
「別に何もしてないよ…」
「でも、夜中に2人で話した後、2人で康の部屋に行ったんでしょ?」
「いや、それは色々あって…」
話が良からぬ方向に進みそうだったので、由奈が寝てしまったから自分の部屋に連れて行ったことを白状する。
「送り狼じゃん」
「だから何もしてないって!」
「ていうか、いつから仲良くなったんですか?」
「いつって…」
「福井の夜でしょ」
「え!朝帰り2回目?!」
「語弊があるでしょ!」
こんな形でバレるなら、長野の夜にみんなに相談しなきゃよかった…。
だいたいあの時、何も解決しなかったんだけど。
「福井の夜に何があったんですか?!」
「あー、いや…」
「酔って可愛い後輩の部屋でやらかしちゃったんだよね」
「えっ!?まじ!?」
「変な言い方しないでよ…酒に酔って部屋を間違った挙げ句、寝ちゃって後輩に迷惑かけたの!そんだけ!」
「えーほんとですか?」
「ほんとだって」
「それにしても2日連続でねぇ…」
「…まあ、どっちも私が迷惑掛けたんだよ。酔って部屋間違えたのも、部屋に連れてっちゃったのも」
これ以上詮索されないように無理やり話を切り上げる。
みーおんはまだ納得してないけど、もう許して欲しい。
すると何かを考えていたらしい愛佳が顔を上げた。
「今日の中盤MC、康さんがやらかした話にしませんか」
「いいじゃんそれ」
「良くないわ」
でも、由奈のことは守れたみたいだから、それはそれで良かったのかもしれない。