星が消えないうちに
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9月18日:夜 康side
公演は公演でも、秋葉原の劇場でやる公演と、いつもと違う会場でやる公演は別物だ。
出張公演は会場によってステージの大きさや客席からの見え方が違うから、いつもより入念にリハをする。
本番は1回きりだけど、リハも含めると2回公演をしているようなものなので、それなりに疲労がたまる。
でもそれ以上に、なかなか秋葉原の劇場まで来れないファンの方が公演を見てくれているという新鮮さや、地方ならではの熱気もあって、楽しかった気持ちが強い。
いつもの劇場公演なら、2回公演で疲れ切ってしまうのに、コンサート特有の熱気と高揚感が疲労を忘れさせる。
公演が終わった後にみーおんが「今日も行くよね?!」とジョッキを煽るジェスチャーをしながら聞いてきたから笑ってしまった。
今日も昨日と同じメンバーでご飯に来た。
それなりに疲れているはずなのに、このまま夜が終わるのはもったいなさすぎる、といったテンションで、居酒屋の暖簾をくぐった。
「「お疲れ~!!」」
公演終わりに飲みに行くのも出張公演の醍醐味。
今日の感想とか、反省を話しながら、次の公演の話や今日良かったメンバーの話で盛り上がった。
「そういえば、今日は康がいつにもまして後輩に緊張してた」
「…そうかな?いつも通りだけど」
せいちゃんの突然の指摘にドキリとした。
バレないと思っても、同期にはバレるのか…
「全然わかんなかったわ」
前言撤回。みーおんにはバレてなかった。
「普通、ほぐれるもんじゃない?」
沙穂さんの正論には何も返す言葉がない。
「逆になんでせいちゃんはわかったの?」
「康の人見知りが出張公演で緩和されないかと思って、観察してました」
彩希さんの疑問にせいちゃんがすらすら答える。観察されてたのか…
「後輩と気まずくなるようなことでもあったの?」
「いや、まぁ…ねえ?」
「すごい含みのある言い方」
みーおんが言うほど気まずいわけじゃないけど、後輩と話すたびに、今朝の由奈の顔が脳裏をよぎって、無意識に壁を作っていた。
完全に自業自得だけど、後輩たちには申し訳ないと思う。
私が沈黙する様子を見て、さっきまでの明るい雰囲気が若干陰り始める。
こうなったのも自分のせいなので、昨日の夜の話を白状した。
「…実は、昨日の飲み会の後、私、由奈の部屋に間違えて入って寝ちゃってたんですよ…」
「「えぇ?!」」
「…ていうか、起きたら隣に由奈がいて、そこで気付いたっていうか…正直、飲み会の後、みんなと別れてからの記憶がなくてですね…」
白状しながら、だんだんとバツが悪くなって声が小さくなる。
「あ~やらかしちゃったわけね」
「それも、わからなくてですね…」
バツの悪さにみーおん相手にも敬語になる。ていうかニヤニヤしすぎだ。
「由奈ちゃんってまだ18でしょ?やっちゃったねぇ」
「いや、沙穂さん、まだそうと決まったわけじゃないんで…!」
「あ~由奈が今日聞いてきたのはこのことだったのね」
「え、何聞かれたんですか?!」
彩希さんの発言に心臓が跳ねた。最悪の想定が頭をよぎる。
「いや、ただ「康さんってお酒強いんですか?」って聞かれただけ。強い方だけど、昨日は結構キテたねって言っておいた」
その言葉に安堵したけど、何も解決はしていない。
「なるほどね~だから後輩相手に緊張してたんだ。…慰謝料の準備しといたほうが良いんじゃない?」
「せいちゃん冗談きついっす」
結局みんなにイジるだけイジられて、なんの解決策も見いだせないままお開きになり、自室に戻った。
昨日より思考がクリアな分、頭の中に浮かぶのは、今日の朝のこと。
ぎこちない空気のまま、最後の出張公演を迎えるわけにもいかないし、昨日の夜、何があったかをちゃんと知りたい。
でもやっぱり、直接聞くなんてできないし、どうしたものかと頭を抱えた。